このブログでは版画、写真などの分野で私どもで高く評価した書籍をときどき紹介してきました。
2009年の最後にご紹介するのは、オリヴァー・スタットラー著『よみがえった芸術ー日本の現代版画』です。
日本の敗戦に伴い、進駐軍として来日した軍人、軍属の中に多くの美術愛好者がいて、日本の創作版画に注目し多くの作品をコレクションしたことは良く知られています。
その中の代表的コレクターがオリヴァー・スタットラーでした。
彼の著した『よみがえった芸術ー日本の現代版画』がようやく翻訳刊行されました。

スタットラー表紙『よみがえった芸術―日本の現代版画』
著者:オリヴァー・スタットラー
監修:猿渡紀代子(横浜市民ギャラリー館長、横浜美術館学芸員)
翻訳:CWAJ(College Women's Association of Japan)
編集協力:桑原規子(聖徳大学准教授)、西山純子(千葉市美術館学芸員)、味岡千晶(美術史家)
体裁:B5変形、296頁、図版102点(カラー48頁)、並製本
発行:玲風書房
定価:2,940円(本体価格2,800円)

オリヴァー・スタットラー表オリヴァー・スタットラー裏
以下、パンフレットから引用しましょう。
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オリヴァー・スタットラー著、『よみがえった芸術―日本の現代版画』を発刊することになりました。
原書の著者、オリヴァー・スタットラーは、戦後米軍の文官(予算管理官)して来日、日本の創作版画に魅了され世界有数の版画コレクターになりました。
また、各地を歴訪、日本文化の研究家にもなりました。そして1956年に版画家の工房を訪ね歩き、その人柄や芸術観、作品と技法を書き綴った『Modern Japanese Prints: An Art Reborn』を著しました。創作版画愛好家のあいだでは長くバイブルとも目されてきた日本の現代版画の解説書です。
本書はこの原書を翻訳し、さらに美術研究家により新たにオリヴァー・スタットラー論、年譜、掲載版画家の略歴などが加筆され、より充実した内容になっております。
山本鼎(かなえ)、恩地孝四郎をはじめ、平塚運一、斎藤清、棟方志功ら29名の版画家を紹介、親しみと息遣いの感じる文章に、新たに豊富なカラー図版を掲載、現代版画史を語るうえできわめて重要な資料とも存じます。
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収録作家:山本鼎、恩地孝四郎、平塚運一、斎藤清、棟方志功、前川千帆、関野準一郎、品川工、川上澄生、武井武雄、初山滋、勝平得之、山口進、川西英、徳力富吉郎、下澤木鉢郎、前田政雄、橋本興家、畦地梅太郎吉田政次、北岡文雄、山口源、稲垣知雄、笹島喜平、吉田ファミリー、馬淵聖

オリヴァー・スタットラー(1915-2002年)
米国シカゴ生まれ。シカゴ大学卒業。1947年に軍属として来日し1958年まで滞在。日本文化の研究家となる。米国各地で展覧会を企画、日本の現代版画の紹介と普及に努めたほか、多くの講演、執筆などを晩年まで続ける。1977年ハワイ大学東洋学客員教授、1980年神戸女学院大学客員教授になる。著書に『Japanese Inn』、『Shimoda Story』、『Japanese Pilgrimage』などがある。

日本の創作版画、現代版画を紹介した本でありながら、長く翻訳されなかったのは、日本の版画史研究の怠慢でしょうが、それがこの出版不況の中にあって翻訳刊行されたことに対し、関係者に心から敬意を表したいと思います。
それにしても著者以外の、関わった研究者、翻訳者全てが女性だということに、深い感慨を覚えずにはおられません。
皆さん、ご苦労さまでした。