S氏コレクション 駒井哲郎PART II展」は本日が最終日です。夜7時まで開廊していますのでお出かけください。Sさんも今日は会社がお休みなので午後は画廊にいらっしゃいますのでぜひはなしかけてください。

さて掲示板に坂本さんから写真のヴィンテージ・プリントについての投稿があり、それに対してときの忘れもののご意見番の原茂さんから早速応答がありましたので、ご紹介します。

◆坂本さんからの投稿「ヴィンテージ・プリントの定義」
写真のいわゆるヴィンテージ・プリントの統一した定義はないのでしょうか。ある作家「すぐに焼いたもので10枚程度か」またある作家「個展、出版に使用したもののみ、あとはモダンプリント」、ある画廊「ほぼ一年以内で本人や焼いたもの」、またある画廊「現存なら本人の証明のあるもののみ」etc.etc。あまりにもまちまち。しっかり統一された定義はないのでしょうか。版画のオリジナルプリントのように。
ただ国際的に定義がさだまりつつあるという画廊もあり「プリントは3種類。1ヴィンテージ・プリント2ヴィンテージ・プリントになりえるプリント3ヴィンテージ・プリントにならないもの。そしてヴィンテージ・プリントは、撮影後5年以内に焼かれた5枚以内かつ30年経過したもの。」と説明していました。この定義も5年、5枚というのもよくわからない。
(ただ最近日本の大物作家が10枚以上のヴィンテージ・プリントが出てきて信用を失墜した事もあったようですが)日本のヴィンテージ・プリント
もどんどん海外へ、浮世絵や版画が流失していったように外国に流れているようです。早いうちにヴィンテージ・プリントの定義や写真収集の啓発をしていかないと日本に市場ができあがるうちに名品は海外にという恩地版画のようになってしまいます。

◆原茂さんからの投稿
 坂本様、ご投稿ありがとうございます。ヴィンテージ・プリントの統一した定義ということですが、これを客観的に数字であらわすのはなかなか難しいかと思います。
 そもそも、「ヴィンテージプリント」が、「モダンプリント」や「エステートプリント」と比べて高く評価されるのは、それが「撮影時の写真家の意図を一番よく表している」と考えられているからで、それは本来、希少性とは異なった範疇の上に乗っているはずです。
 その意味では、「個展、出版に使用したもののみ、あとはモダンプリント」という作家さんのお気持ちはよく分かります。同じく「プリント」とは言っても、そのプロセスが版画とは異なり、プリントの際には一枚一枚を「新しく焼く」ことになる写真では、「撮影時の写真家の意図を一番よく表している」作品が複数あるということは厳密にはありえないからです。ただ、その意味における「ヴィンテージ中のヴィンテージ」の場合には、「展示作品」「印刷原稿」「贈答作品」というような形で、いわゆる「ヴィンテージプリント」とはまた別に扱われる場合が多いかと思います。
 「プリントは3種類。1ヴィンテージ・プリント、2ヴィンテージ・プリントになりえるプリント、3ヴィンテージ・プリントにならないもの」というのはその通りかと思いますが、それが「撮影後5年以内に焼かれた5枚以内かつ30年経過したもの」であるかどうかは意見が分かれるでしょう。おそらく、この定義は、どこかの美術館が写真を購入、収蔵するに当たってのガイドラインではないかと思いますが、それが「国際的に定まりつつあるヴィンテージプリントの定義」であるかどうかはわかりません。
 「撮影後ほぼ一年以内で本人が焼いたもの」というあたりが、これまで受け入れられてきた一般的な定義かと思うのですが、専門家のご意見を伺いたいところです。

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原茂さんの意見が現在のところ穏当なものと思いますが、写真にはとんと詳しくない亭主としては、この議論には参戦できず申し訳ありません。いずれどなたか専門家に論じて欲しいですね。

ちょうどこの8月、「ジョック・スタージス新作写真展」に寄せて、卓抜なエッセイを執筆してくれた写真研究の小林美香さんから、以下の案内をいただきましたので、ご紹介します。

日頃よりお世話になっている皆様にマレビトスクール企画の写真講座のご案内です。「展示」「編集」の方法論や、海外ののケーススタディ、写真販売についてまで、私を含む3人の講師が指南いたします。興味のある方は是非ご参加下さい。

マレビトスクールでは、写真を表現手段として制作活動に取り組み、発表を志す人、また写真に関連したアートマネージメントに関心を持つ人を対象として、全 7回の連続写真講座を開催します。この講座では、撮影や作品制作を指導するのではなく、展示や編集、営業、販売というような、写真を見る人へとつなげてい くための方法論を、受講者の方それぞれの活動に則して、一緒に考えながら習得することを目指します。

ギャラリー運営、研究活動、販売などの分野で独自のスタンスを保ちながら国内外で活動を続けてきた講師陣が講座を担当し、写真作品発表にかかわるプロセス を網羅するコースを提供します。講座以外にも、講師それぞれのノウハウを易化して、受講者の方の活動をサポートするサービスや、相互の交流やネットワーク を築くためのお手伝いもいたします。

【概要・構成】
開催場所 HAKKAビル ワークショップ・スペース 150-0002 東京都渋谷区渋谷3-5-5 HAKKAビル4F
定員 15名 (最小催行人数 5名)
開催日 全7回 (土曜日)

11月13日 オリエンテーション+懇談会パーティ
11月27日 「展示」と「編集」の方法論 担当:小林美香
12月4日 戸外授業「鈴木清写真展 百の階梯、千の来歴」を観る 担当:小林美香
12月11日 「米国の展覧会のケーススタディと英国の写真教育」 担当:小林美香&柿島貴志
12月25日 「写真作品販売の基礎知識」 担当:柿島貴志
1月8日 「写真を社会につなげるための営業術」担当:林和美
1月22日 修了プレゼンテーション+パーティ
開催時間 それぞれ16:00-18:00 (12月4日の戸外授業を除く。)

受講料 35,000円
講座についてのお問い合わせ・申込・連絡先
150-0002 東京都渋谷区渋谷3-5-5 HAKKAビル4F
NADAR/TOKYO tel: 03-5468-3618 10:00-19:00(展示最終日-16:00)/日祝日休廊
メール tokyo@nadar.jp (担当 林和美)
受講料のお支払い方法につきましては、お申込み後にこちらから連絡を差し上げます。

【各回の講座紹介】
11/13:オリエンテーション+懇談会パーティ

初回では、写真講座の概要と目的、講師陣の活動を紹介し、コース全体の流れの説明をいたします。受講者の方にも自己紹介をして頂き、講座に対するご要望、 コースへのご質問なども受付けます。自己紹介に役立ちそうなものがあれば、お持ち下さい。オリエンテーションの後に、ワークショップ・スペース内で、懇談 会パーティを催しますので、相互に交流を深めて頂きます。(poetic platesのケータリングで、軽食とお飲み物をご用意します。)

11/27:「展示」と「編集」の方法論 担当:小林美香

展示は、ものを空間の中に配置することによって見る人に語りかける場を作る、視覚的な編集作業です。したがって、写真を作品として発表する上で、見る人に 何をどのように伝えたいのかということを十分に吟味し、さまざまなものの見方について考えるプロセスが、きわめて重要な意味を持つことになります。日常的 に目にしているウィンドウ・ディスプレイから、美術館やギャラリーでの展示、インスタレーション・アートにいたるまで、展示という多様な営みを、さまざま な展示方法や、写真集やポートフォリオの編集方法の例を参照しながら、その背景にある考え方や歴史についてご紹介します。

12/04:「鈴木清写真展 百の階梯、千の来歴」を観る 担当:小林美香(戸外授業:講座受講者以外の一般参加も可)

鈴木清(1943-2000)は、自費出版で写真集を出版し、ユニークな展示空間を構成して作品を発表し続けた写真家です。海外の美術館で回顧展が開催さ れるなど、その偉業が近年注目を集めています。東京国立近代美術館で開催される「鈴木清写真展 百の階梯、千の来歴」は、その活動の全貌をたどり、作品世 界について紹介する、日本の美術館としては初めての試みです。この戸外授業では、講師の小林が東京国立近代美術館の客員研究員として鈴木清展の準備に携 わった立場から、展覧会をご案内し、見どころをご紹介します。

12/11:「米国の展覧会のケーススタディと英国の写真教育」 担当:小林美香&柿島貴志

関西での大学での教育活動、NPOでの活動、ニューヨークの国際写真センター(ICP)、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)など、さまざまな現場を垣間見てきた立場から、写真の教育や展覧会にかかわる具体的な状況についてお話しします。(小林美香)

「とにかく量を撮れ」これは日本の写真教育の現場で、昔から言われ続けてきた事です。しかし、私が留学したイギリスの美術大学では、それとは正反対の制作 方法、すなわち「とにかく調べて考えろ」を叩き込まれました。リサーチとコンセプトメイキングを重視するイギリス流制作アプローチを紹介する事で、皆さん の作品制作において、より幅と深みが出てくる事を目指します。(柿島貴志)

12/25:「写真作品販売の基礎知識」担当:柿島貴志

綺麗なプリントを作ることができても、それだけでは「販売」にはつながりません。写真作品を販売できる『商品』にするには、それなりの方法論と作法を体得 することが必要なのです。この授業では、エディション管理、サインなど作品販売に必要な基本ルールから、価格設定の考え方、作品販売の実務、そしてステッ プアップエディションに代表される新しい作品販売の仕組まで、今までの作品販売経験を交えてお伝えします。今後自分で作品を販売する、もしくはギャラリー と契約する時にも役立つ、実践的な知識と考え方が身につきます。

01/08:「写真を社会につなげるための営業術」 担当:林和美

漫然と作品を作り続けるだけではなく、社会とつながっていくための、広い意味での営業術を身につけるためには、ギャラリーや出版社の成り立ちや仕組みを理 解し、写真家としてだけでなく写真に携わる仕事を知ることが必要です。大阪と東京の二カ所で写真専門ギャラリーNadarの運営に10年以上たずさわるか たわらで、日本図書設計家協会唯一の写真家会員として「装幀写真家」というジャンルを切り拓いてきた経験をふまえ、ギャラリーでの発表の仕方から、出版社 への売り込みまで、自分作品を売り込む方法をお教えします。受講者の方それぞれの自分の進みたい方向、そして作品についても再確認して頂きながら、自分に 合った方法を見つけるためのアドバイスをします。

01/22:修了プレゼンテーション+パーティ

これまでの講座を踏まえた上で、受講者それぞれの方の活動、作品、抱負のプレゼンテーションをして頂きます。

【受講者特典】

各回の講座で、詳しい資料をご提供します。
要望に応じて、希望する講師による作品のレビュー、アドバイスを受けられます。
NADAR TOKYOにて写真展を開催される方は、展覧会のDM制作に際して発生する費用をサービスさせて頂きます。
photta-lotにて額装、コンサルティングをご依頼される場合、10%offの費用にて承ります。

【講師紹介】
小林美香 (代表) http://www.mikakobayashi.com
写真研究者 国内外の各種学校/機関で写真に関するレクチャー、ワークショップ、展覧会を企画、雑誌に寄稿、写真関係の書籍の翻訳にたずさわる。著作に『写真を「読む」』(青弓社 2005年)がある。2010年4月より東京国立近代美術館客員研究員。

林和美 http://kazumi-h.net/
装幀写真家。広告代理店、フォトエージェンシー勤務を経て、大阪と東京に写真専門ギャラリーNADARを開設。写真集に「ゆびさき」(青幻舎)、「装幀写 真」(ナダール書林)、著書に「写真生活手帖」「写真生活手帖~実践編」(ピエ・ブックス)、「女性のためのカメラレッスン」(大泉書店)がある。

柿島貴志 http://www.photta-lot.com/
イギリスの美術大学で写真を学び、フォトエージェンシー、インテリアアート企業などを経て、 photta-lot を設立。若手写真家の作品販売、写真展プロデュース、講演会やワークショップの企画運営、写真ビジネスコンサルティング、写真の額装など手がけている。

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宮脇愛子の新作エディション『マン・レイへのオマージュ
マン・レイへのオマージュパンフ
マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)をぜひご購入ください。

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