「ロベール・ドアノーの写真人生」
お正月気分のまだ抜けない1月10日、渋谷のサラヴァ東京で、「ロベール・ドアノーの写真人生」というトークイベントがありました。
これは、大竹昭子さんがご自分のホームページの「書評空間」というコーナーで、ドアノーのエッセイ集『不完全なレンズで』の書評を書いた折に、ドアノーの撮影風景をピエール・バルー氏が撮った映像作品のことに触れたところ、それを見たいという声が上がったため、急遽企画されたものでした。急遽企画された割には、その映像を撮ったピエール・バルー氏や、『不完全なレンズで』の翻訳をした堀江敏幸氏という豪華ゲストをお招きし、かつ、さほど広くない開場に約100名が来場して、盛大に開催されました。
以下、大竹さんのサイトに掲載された案内です。
映像&トークイベント「ロベール・ドアノーの写真人生」
パリの人と街を撮りつづけたロベール・ドアノー。晩年、彼のもっとも近くにいた作詩家で映像作家のピエール・バルー氏、デビュー作『郊外へ』でドアノーについて書き、このたび彼の唯一のエッセイ集『不完全なレンズで』を翻訳した作家の堀江敏幸氏をお招きして、バルーによるドアノーの映像ドキュメントとトークの集いをいたします。映像には、ドアノーの大ファンだった俳優の緒形拳がドアノーに撮影されるシーンが出てきます。人間を見つめつづけた写真家ドアノーの魅力をさまざまな角度から照らし出す、「サラヴァ東京」ならではクロスカルチュラルなイベント!
第1部 ピエール・バルー作「時と時刻」(1993年/30分)上映
ドアノーにポートレイトを撮ってもらいたいという緒形拳の希望を実現させたピエール・バルーが、そのフォトセッションの模様を撮影した映像作品。ドアノーはこの仕事を最後に翌1994年に他界、緒形拳のポートレイトが遺作となった。
第2部 トークショー「ドアノーとパリ郊外」
出演:ピエール・バルー、堀江敏幸、 大竹昭子(司会)、潮田あつこ・バルー(通訳)
ドアノーはジャンティイの生まれ、バルーはルヴァロア・ペレ出身。城壁の外側にできた移住者の町を、パリ在住中に親しみを込めて散策した堀江敏幸。画期的な顔合わせによるパリ郊外についてのトーク。
●ロベール・ドアノー(1912年~1994年)
パリ南郊で生まれ育ち、リトグラフの工房に勤めたのちに写真家に転向。ルノー社の専属として広告・工業写真を担当する。第2次大戦後はラフォ通信社に参加し、1949年、初の写真集『パリ郊外』を作家ブレーズ・サンドラールの文章を添えて刊行。パリの街路とそこに暮らす人々の姿を絶妙なタイミングと距離感でとらえた写真は、絵はがきとなって世界中に広まった。80年代半ばから再評価の動きが高まり、多くの写真集が刊行される。『不完全なレンズで』は質問に答える形で5年間編集者とのあいだでつづけられた対話を元に生まれたものである。
●ピエール・バルー(1934年~)
ユダヤ系トルコ人の家庭に生まれ、パリ西郊で育つ。仲間と作った映画「男と女」が大ヒットし、その収益で「サラヴァ・レコード」を設立。音楽活動と並行して若手アーチストのプロデュース、ドキュメント映像を制作するなど、ジャンルを越境する表現者として先駆的な活動をつづけてきた。現在はパリと東京を往復しながら創作している。ソロ・アルバムに「VIVRE~生きる」「サ・ヴァ、サ・ヴィアン」ほか多数。映像作品の代表作にブラジル音楽の巨匠をドキュメントした「サラヴァ」、著書に『サ・ヴァ、サ・ヴィアン』(求龍堂)がある。
●堀江敏幸(1964年~)
岐阜県多治見生まれ。作家、仏文学者。パリを舞台にした『郊外へ』でデビュー。エッセイ、小説、評論などの境界を越えた独特の文体を創出、そのたしかな描写力と表現力で多くのファンを集めている。ドアノーの『不完全なレンズで』のほかにエルヴェ・ギベール『幻のイマージュ』を訳出するなど、写真への造詣も深い。パリを舞台にしたほかの作品に『おぱらばん』『ゼラニウム』『河岸忘日抄』などがある。
●大竹昭子(1950年~)
東京生まれ。作家。ひとつのジャンルに留まらずに執筆、写真も撮る。写真についての著作に『眼の狩人』『この写真がすごい2008』。ほかに『随時見学可』『ソキョートーキョー』『図鑑少年』など。朗読とトークの会<カタリココ>を主宰。web書評空間に『不完全なレンズで』の書評を書いたのがきっかけで今回の企画が成立した。
●潮田あつこ・バルー(1955年~)
東京生まれ。プロデューサー、仏語翻訳、通訳者。ラ・ミュゼ代表、渋谷クロスロード企画運営。服飾デザイナー、骨董販売などを経て、1980年半ばからサラヴァレーベルの運営にたずさわり、「時と時刻」の撮影にも立ちあった。2010年12月にライブ&イベントスペース「サラヴァ東京」をオープン、文化の橋渡しをする仕事に専心している。webダカーポ連載「サラヴァ東京」こんにちは。
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ピエール・バルー氏の名前はご存知なくても、クロード・ルルーシュの映画「男と女」のテーマ曲でダバダバダと歌っているのを聞いたことがない方はいらっしゃらないでしょう。今回筆者(三浦)はどちらかというと彼を見たくて参加したのでした。しかし、ドアノーと親交があって、その姿を映像で撮っていたということは全く知りませんでした。
まず、ピエール・バルー氏の映像作品「時と時刻」(1993年、30分)の上映がありました。この作品は、バルー氏が俳優緒方拳からの依頼でドアノーに紹介し、ポートレートを撮影してもらうことになった時の撮影風景を記録したものです。その三日の間に緒方拳とドアノーがどんどん信頼しあって親密になっていく様子が良く伺えました。この翌年にドアノーは亡くなりますので、その意味でも貴重な映像と言えます。
トークショーでは、バルー氏とドアノーの出会い(ドアノーファンであったバルー氏が、ドアノーの作品がオークションに出ると知って、友人たちとオークション会場に乗り込んで値段を吊り上げそうで、その時に会場に来ていたドアノーのお嬢さんと知り合ったことがきっかけだそうです)から、ドアノーが撮影したパリ郊外(バンリュー)が、市内とどう違うのか、また『郊外へ』という著作でドアノーについて書いた堀江氏が住んだパリ郊外についての話があり、一見幸福感の漂うドアノーの写真の中にある貧困や差別という相反するものについてなど、写真を投影しながら話が進みました。
『不完全なレンズで』は、ドアノーが自伝的に書いたものではなく、編集者の質問にドアノーが返信するというようなやり取りをしたものをまとめた本で、ゴツゴツした取っ付きづらい文体は翻訳するのに苦労したと言うことを堀江氏がお話しくださいました。また、本の内容についても、バルー氏の「自分の知らないドアノーがいた。」という言葉に、堀江氏が「それを聞いて安心しました。」という場面も。
最後にバルー氏の歌に我々も一緒に参加して約2時間のトークショーは終わりました。
この模様については、大竹さんもホームページに書いていらっしゃいますので、そちらもご覧いください。

大竹昭子さんは今月15日から、ときの忘れもののブログで「レンズ通り午前零時」という連載エッセイを始めました(掲載は毎月15日)。こちらもどうぞご愛読ください。
◆ときの忘れもののコレクションからロベール・ドアノー作品をご紹介いたします。
エスプリの効いた、私たちの思う「ドアノーらしい」作品です。

ロベール・ドアノー Robert DOISNEAU
"L'ENFER" キャバレー地獄
1952年
ゼラチンシルバープリント
35.0×24.5cm
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
お正月気分のまだ抜けない1月10日、渋谷のサラヴァ東京で、「ロベール・ドアノーの写真人生」というトークイベントがありました。
これは、大竹昭子さんがご自分のホームページの「書評空間」というコーナーで、ドアノーのエッセイ集『不完全なレンズで』の書評を書いた折に、ドアノーの撮影風景をピエール・バルー氏が撮った映像作品のことに触れたところ、それを見たいという声が上がったため、急遽企画されたものでした。急遽企画された割には、その映像を撮ったピエール・バルー氏や、『不完全なレンズで』の翻訳をした堀江敏幸氏という豪華ゲストをお招きし、かつ、さほど広くない開場に約100名が来場して、盛大に開催されました。以下、大竹さんのサイトに掲載された案内です。
映像&トークイベント「ロベール・ドアノーの写真人生」
パリの人と街を撮りつづけたロベール・ドアノー。晩年、彼のもっとも近くにいた作詩家で映像作家のピエール・バルー氏、デビュー作『郊外へ』でドアノーについて書き、このたび彼の唯一のエッセイ集『不完全なレンズで』を翻訳した作家の堀江敏幸氏をお招きして、バルーによるドアノーの映像ドキュメントとトークの集いをいたします。映像には、ドアノーの大ファンだった俳優の緒形拳がドアノーに撮影されるシーンが出てきます。人間を見つめつづけた写真家ドアノーの魅力をさまざまな角度から照らし出す、「サラヴァ東京」ならではクロスカルチュラルなイベント!
第1部 ピエール・バルー作「時と時刻」(1993年/30分)上映
ドアノーにポートレイトを撮ってもらいたいという緒形拳の希望を実現させたピエール・バルーが、そのフォトセッションの模様を撮影した映像作品。ドアノーはこの仕事を最後に翌1994年に他界、緒形拳のポートレイトが遺作となった。
第2部 トークショー「ドアノーとパリ郊外」
出演:ピエール・バルー、堀江敏幸、 大竹昭子(司会)、潮田あつこ・バルー(通訳)
ドアノーはジャンティイの生まれ、バルーはルヴァロア・ペレ出身。城壁の外側にできた移住者の町を、パリ在住中に親しみを込めて散策した堀江敏幸。画期的な顔合わせによるパリ郊外についてのトーク。
●ロベール・ドアノー(1912年~1994年)
パリ南郊で生まれ育ち、リトグラフの工房に勤めたのちに写真家に転向。ルノー社の専属として広告・工業写真を担当する。第2次大戦後はラフォ通信社に参加し、1949年、初の写真集『パリ郊外』を作家ブレーズ・サンドラールの文章を添えて刊行。パリの街路とそこに暮らす人々の姿を絶妙なタイミングと距離感でとらえた写真は、絵はがきとなって世界中に広まった。80年代半ばから再評価の動きが高まり、多くの写真集が刊行される。『不完全なレンズで』は質問に答える形で5年間編集者とのあいだでつづけられた対話を元に生まれたものである。
●ピエール・バルー(1934年~)
ユダヤ系トルコ人の家庭に生まれ、パリ西郊で育つ。仲間と作った映画「男と女」が大ヒットし、その収益で「サラヴァ・レコード」を設立。音楽活動と並行して若手アーチストのプロデュース、ドキュメント映像を制作するなど、ジャンルを越境する表現者として先駆的な活動をつづけてきた。現在はパリと東京を往復しながら創作している。ソロ・アルバムに「VIVRE~生きる」「サ・ヴァ、サ・ヴィアン」ほか多数。映像作品の代表作にブラジル音楽の巨匠をドキュメントした「サラヴァ」、著書に『サ・ヴァ、サ・ヴィアン』(求龍堂)がある。
●堀江敏幸(1964年~)
岐阜県多治見生まれ。作家、仏文学者。パリを舞台にした『郊外へ』でデビュー。エッセイ、小説、評論などの境界を越えた独特の文体を創出、そのたしかな描写力と表現力で多くのファンを集めている。ドアノーの『不完全なレンズで』のほかにエルヴェ・ギベール『幻のイマージュ』を訳出するなど、写真への造詣も深い。パリを舞台にしたほかの作品に『おぱらばん』『ゼラニウム』『河岸忘日抄』などがある。
●大竹昭子(1950年~)
東京生まれ。作家。ひとつのジャンルに留まらずに執筆、写真も撮る。写真についての著作に『眼の狩人』『この写真がすごい2008』。ほかに『随時見学可』『ソキョートーキョー』『図鑑少年』など。朗読とトークの会<カタリココ>を主宰。web書評空間に『不完全なレンズで』の書評を書いたのがきっかけで今回の企画が成立した。
●潮田あつこ・バルー(1955年~)
東京生まれ。プロデューサー、仏語翻訳、通訳者。ラ・ミュゼ代表、渋谷クロスロード企画運営。服飾デザイナー、骨董販売などを経て、1980年半ばからサラヴァレーベルの運営にたずさわり、「時と時刻」の撮影にも立ちあった。2010年12月にライブ&イベントスペース「サラヴァ東京」をオープン、文化の橋渡しをする仕事に専心している。webダカーポ連載「サラヴァ東京」こんにちは。
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ピエール・バルー氏の名前はご存知なくても、クロード・ルルーシュの映画「男と女」のテーマ曲でダバダバダと歌っているのを聞いたことがない方はいらっしゃらないでしょう。今回筆者(三浦)はどちらかというと彼を見たくて参加したのでした。しかし、ドアノーと親交があって、その姿を映像で撮っていたということは全く知りませんでした。 まず、ピエール・バルー氏の映像作品「時と時刻」(1993年、30分)の上映がありました。この作品は、バルー氏が俳優緒方拳からの依頼でドアノーに紹介し、ポートレートを撮影してもらうことになった時の撮影風景を記録したものです。その三日の間に緒方拳とドアノーがどんどん信頼しあって親密になっていく様子が良く伺えました。この翌年にドアノーは亡くなりますので、その意味でも貴重な映像と言えます。
トークショーでは、バルー氏とドアノーの出会い(ドアノーファンであったバルー氏が、ドアノーの作品がオークションに出ると知って、友人たちとオークション会場に乗り込んで値段を吊り上げそうで、その時に会場に来ていたドアノーのお嬢さんと知り合ったことがきっかけだそうです)から、ドアノーが撮影したパリ郊外(バンリュー)が、市内とどう違うのか、また『郊外へ』という著作でドアノーについて書いた堀江氏が住んだパリ郊外についての話があり、一見幸福感の漂うドアノーの写真の中にある貧困や差別という相反するものについてなど、写真を投影しながら話が進みました。『不完全なレンズで』は、ドアノーが自伝的に書いたものではなく、編集者の質問にドアノーが返信するというようなやり取りをしたものをまとめた本で、ゴツゴツした取っ付きづらい文体は翻訳するのに苦労したと言うことを堀江氏がお話しくださいました。また、本の内容についても、バルー氏の「自分の知らないドアノーがいた。」という言葉に、堀江氏が「それを聞いて安心しました。」という場面も。
最後にバルー氏の歌に我々も一緒に参加して約2時間のトークショーは終わりました。
この模様については、大竹さんもホームページに書いていらっしゃいますので、そちらもご覧いください。

大竹昭子さんは今月15日から、ときの忘れもののブログで「レンズ通り午前零時」という連載エッセイを始めました(掲載は毎月15日)。こちらもどうぞご愛読ください。
◆ときの忘れもののコレクションからロベール・ドアノー作品をご紹介いたします。
エスプリの効いた、私たちの思う「ドアノーらしい」作品です。

ロベール・ドアノー Robert DOISNEAU
"L'ENFER" キャバレー地獄
1952年
ゼラチンシルバープリント
35.0×24.5cm
サインあり
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