いつもと異なり、月曜日(30日)から6月11日[土]まで、銀座・ギャラリーせいほうと青山・ときの忘れものの2会場で「ナミビア:室内の砂丘 尾形一郎 尾形優 写真展」を同時開催します。
作家から今回の個展に寄せるステートメントをいただきましたので、ご紹介します。

ナミビア:室内の砂丘 尾形一郎 尾形優

 私たちの目的は、建築という方法で、どこまで人の心の深層や無意識の領域が表現できるかということだ。私たちは建築家なので、建築そのものをつくることもできるが、問題をよりはっきりさせるために、既存建築を撮影することによって、2次元の建築を建てる方法を模索してきた。撮影の対象には、特殊な状況下で生まれた過剰建築が、時代に取り残された姿を選んでいる。過去にも、地球規模での文明の変革によって辺境の地に富がもたらされ、建設ラッシュが起こった。こうした地域での建築は、民衆の熱狂的な欲望からつくられるので作為が無く、人間の心の深層が投影されやすい。アカデミックな建築様式にとらわれない辺境の人々は、自分たちを取り巻く文化をより過剰に表現することに邁進するからだ。私たちはそれらの建築群が時代に取り残された姿を発見し、2次元のシュールな建築に圧縮して、無意識の領域を可視化したいのだ。

 ナミビアで撮影した今回のシリーズ、「室内の砂丘」は、ダイアモンドラッシュに湧いたアフリカの砂漠に、100年前のドイツ人が残した家々の痕跡だ。私たちが被写体に選んだポイントには、この家々がどれも当時最先端だったゼツェッシオン様式の影響を受けているということがある。ゼツェッシオンは19世紀末にウィーンやドイツにおいて、フロイトの影響を受けた先進的な芸術家たちが、人間の心の内面を表現しようと追求して生まれたデザインだ。しかしヨーロッパから遠く離れたこの地において、つかの間の繁栄の後で町が放棄されると、優雅なゼツェッシオン風の室内に砂漠の景色が広がった。毎日吹きつける砂嵐が、室内に堆積した砂山に美しい風紋を描いている。私たちは、こうした箱庭的な構造に日本の禅庭を連想し、心の内面にある宇宙を見つめるように撮影した。
(おがたいちろう おがたゆう)

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NAM-K4-14_60020年に亘って大型カメラを携え、世界の辺境に残された建築物を撮りつづけている尾形一郎と尾形優。 今回は、アフリカ・ナミビアの砂漠に残された100年前の家々の痕跡を撮影したシリーズ〈室内の砂丘〉を、銀座と南青山の二会場でご覧いただきます。
銀座・ギャラリーせいほうでは大作7点、南青山・ときの忘れものでは20点組の初のポートフォリオを出品します。

ナミビア:室内の砂丘 尾形一郎 尾形優写真展
会期=2011年5月30日[月]―6月11日[土]

銀座会場:ギャラリーせいほう  
東京都中央区銀座8-10-7 ℡03-3573-2468
11:00-18:00 日曜・祭日休廊

青山会場:ときの忘れもの  
東京都港区南青山3-3-3青山Cube101 ℡03-3470-2631
12:00-19:00  会期中無休

ときの忘れものは会期中無休ですが、銀座のギャラリーせいほうは日曜・祭日休廊ですのでご注意ください。  

初日5月30日(月)17時~19時まで、銀座のギャラリーせいほうでオープニングを開催しますのでぜひお出かけください。
尾形展ナミビア案内状600
世界の辺境に異文化衝突の痕跡を訪ねて写真を撮り続けている尾形一郎・尾形優さんのエッセイを毎月10日と25日に更新していますが、お二人の活動は写真だけではなく、建築設計、出版など幅広い範囲に及んでいます。

お二人の詳しい略歴をご紹介しましょう。
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尾形一郎 尾形優

個展
2011年 「ナミビア:室内の砂丘」、ときの忘れもの、東京
     「ナミビア:室内の砂丘」、ギャラリーせいほう、東京
2010年 「ウルトラバロック」、ときの忘れもの、東京
2009年 「HOUSE」、FOILギャラリー、東京
2002年 「ウルトラバロック」、伊吹の見える美術館、滋賀
2001年 「ウルトラバロック」、エプサイト、東京
     「ウルトラバロック」、新横浜プリンスホテル、神奈川
     「ウルトラバロック」、アクシスギャラリー、東京
1998年 「メキシコ文化遺産展」、松任市役所、石川
1997年 「ウルトラバロック」、タワーギャラリー、神奈川
     「ウルトラバロック」、A-Fit Park、東京
     「ウルトラバロック」、三菱地所アルティアム、福岡
     「ウルトラバロック」、141、宮城
1995年 「ウルトラバロック」、ガレリアキマイラ、東京
1993年 「ラテンアメリカ」、ギャラリー青山、東京
1992年 「バロックのラテンアメリカ」、ギャラリー青山、東京

グループ展
2006年 「retrospective 1998-2006」、エプサイト、東京
1999年 「メキシコの創造力」、文明博物館、ケベック

アートフェア(いずれも、ときの忘れものから出展)
2011年 「アートフェア京都」、京都
     「TOKYO FRONTLINE」、東京     
2010年 「+PLUS 東京コンテンポラリーアートフェア」、東京
     「テグアートフェア」、大邱、韓国

主な写真集・著書
2009年 「HOUSE」、フォイル
     「ホセ・グァダルーペ・ポサダ」共著、世田谷美術館
2001年 「極彩色メキシコ巡礼」、晶文社
2000年 「MEXICO:BAROQUE」、アスペクト
     「MEXICO:HOTELS」、アスペクト
「MEXICO:ICONS」、共著、アスペクト
     「メキシコの奇っ怪な宗教空間に」ワールドミステリーツアー13、共著、同朋社
2001年 「雅叙園と日の丸軒」日本怪奇幻想紀行6、共著、同朋社
1997年 「ウルトラバロック写真展」、展覧会カタログ、141
     「ゴルキーゴンザレス陶芸展」、展覧会カタログ、A-fit Park
1996年 「DIVINE EXCESS」、Chronicle Books
1995年 「ウルトラバロック」、新潮社

主な写真掲載誌
2007年 「箱根富士屋ホテル物語」山口由美著、千早書房
     「Holgascape」、池田書店
2005年 「眼の冒険」松田行正著、紀伊国屋書店
2004年 「サザンアフリカ」、セブンシーズ、セブンシーズ・アンド・カンパニー
2003年 「沖縄バロック」、インターコミュニケーション、NTT出版
     「パラディオのヴィッラ」、HOME、エクスナレッジ
     「バロック王国ニッポン」、芸術新潮、新潮社
2002年 「About BAROQUE About BEAUTY」、連載、HOME、エクスナレッジ
「南アフリカで」、FRAU、講談社
     「アシエンダで見る夢」、Wins、日本航空
2001年 「Ultra Baroque」、TITLE、文芸春秋
     「メキシコウルトラバロック教会」、家庭画報、世界文化社
     「富士屋ホテルの百年」、FRAU、講談社
2000年 「内なる宇宙を探して」、連載、TOKYO JAMIN、レゾナンス
1999年 「女は存在しない」中沢新一著、せりか書房
1995年 「南イタリアのバロック建築」、SD、鹿島出版会
1993年 「ラテンアメリカのバロック建築」、SD、鹿島出版会
     「悪趣味のパワー」、芸術新潮、新潮社

主な建築作品
2007年 住宅A、東京
2006年 フォトハウス、東京
2005年 住宅K、東京
2003年 住宅N、東京
1998年 タイルの家(自邸)、東京

主な参考文献
「ウルトラバロック 尾形一郎 尾形優 写真展」渋沢和彦、展覧会評、
       産経新聞、2010年6月9日朝刊
「尾形邸『タイルの家』を訪ねて」植田実、建築評、
       ときの忘れものブログ、2010年6月7日〜9日
「メキシコバロック引き戸の家」多田君枝、建築評、
       コンフォルト、2010年2月号
「エキソチシズム溢れる進化し続ける空間」建築評、
       週刊文春、2010年1月14日号
「尾形一郎・尾形優:HOUSE」桝田倫広、展覧会評、
       カロンズネット、2009年12月2日
「特殊な状況下で生まれた過剰さと時代に取り残されたもの哀しさと」湯澤和彦、書評、
       ブルータス、2009年12月1日号
「建築に投影される、過剰な夢、創造の力」多田君枝、書評
       コンフォルト、2009年12月号
「尾形一郎/尾形優『HOUSE』」飯沢耕太郎、展覧会評+書評、
       アートスケープ、2009年11月15日号
「HOUSE」北澤憲昭、書評、
       朝日新聞、2009年11月22日朝刊
「HOUSE」、書評、
       読売新聞、2009年11月1日朝刊
「HOUSE」、書評、
       日本経済新聞、2009年10月25日朝刊
「大判カメラ8X10等で撮影した文化が衝突した辺境の地の建造物」上野修、書評、
       日本カメラ、2009年11月号
「変わり目考」森村泰昌、展覧会評
       晶文社、2003年
「聖から俗まで建造物を探求」加藤薫、書評、
       共同通信、2001年
「幻惑建築を見る建築家の目と写真家の目」篠原里香、書評
       アサヒカメラ、2001年10月号
「さいころみたいな家に四所帯」建築評、
       室内、2001年12月号
「MEXICO:ICONS、MEXICO:HOTELS、MEXICO:BAROQUE」都筑響一、書評、
       朝日新聞、2000年11月19日朝刊
「素材にこだわった家が語る住宅のリベラリティ」、建築評、
       エスクァイア1999年12月号
「宇宙。メキシコ。セルフビルド。」多田君枝、建築評、
       コンフォルト、1999年春号
「隙間恐怖症の過剰空間 ラテンアメリカのウルトラ・バロック建築」展覧会評
       芸術新潮、1993年2月号

主なレクチャー
2010年「ギャラリートーク」金子隆一X尾形一郎X尾形優、ときの忘れもの、東京
2009年「ウルトラバロックからヤンキーバロックまで」五十嵐太郎X尾形一郎X尾形優、
     青山ブックセンター、東京
2007年「ラテンアメリカ地域文化論」尾形一郎、慶応大学、東京
2006年「ラテンアメリカ地域文化論」尾形一郎、慶応大学、東京
2004年「混沌文化を考える」尾形一郎、立教大学、東京
1995年「ウルトラバロック」尾形一郎、立教大学、東京

学歴
尾形一郎
1985年 早稲田大学院理工学研究科建築計画修了
1983年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1960年 京都生まれ
尾形優
1987年 早稲田大学理工学部建築学科卒業
1964年 東京生まれ

下に掲載したのは昨年展示したメキシコ:ウルトラバロックのシリーズです。
ogata_29_tonanzintla_1-d
トナンツィントラ 1 Tonanzintla 1
1994年(2010年プリント) ライトジェットプリント
54.0×43.0cm Ed.10 サインあり

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テポツォトラン 1 Tepotzotlan 1
1994年(2010年プリント) ライトジェットプリント
54.0×43.0cm Ed.10 サインあり

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アカテペック 1 Acatepec 1
1992年(2010年プリント) ライトジェットプリント
54.0×43.0cm Ed.10 サインあり

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