一昨日「ART NAGOYA 2011」が盛況のうちに終了しました。
初めての名古屋でのアートフェアでしたが、皆さんのおかげで気持ちよく過ごすことができました。
ご来場の皆様、作品をお買い上げいただいた皆様には心より御礼を申し上げます。
ときの忘れものは昨日から一週間、8月15日(月)まで夏休みです。
久しぶりにスタッフともども休養をとって英気を養いたいと思います。
先日、普段はなかなか行けないような美術館をご紹介しますと申し上げましたが、本日はその二回目。
Casa BRUTUS特別編集「日本の美術館ベスト100ガイド」を見ると、最近また美術館ブームのようで、あっちこっちに魅力的な美術館の建設が続いています。
このところ露天風呂愛好会も開店休業状態だし、新しい美術館にはほとんど行っていません。
こういう雑誌には載っていないようなところの美術館をご紹介するしかありませんが、亭主の故郷群馬にある、それも山育ちの亭主が「こりゃ遠いや」と驚くほどの山奥に建つ天一美術館をご紹介しましょう。
また行きたくなるような美術館の条件とは何でしょうか。
先ず第一に、コレクションが充実している、または小さくとも良いから「そこにしかないもの」を持っていること。
第二に、豊かな建築空間をもっていること。どんな名品でも会議室みたいな場所で見せられては興ざめです。
第三に、立地条件。わざわざ入場料を払い、出かけて行くのですから、美術館の建つ環境も大切です。
とまあ、ここまでは常識的ですね。
亭主としては、第四の条件としてぜひ「居心地の良さ」をあげたい。
居心地というのは必ずしも形としてあるものではありません。
亭主と社長が姪の結婚式のためにアメリカ西海岸に行ったのはもう遥か昔ですが、ちょうどマリオ・ボッタ設計によるサンフランシスコ近代美術館
が開館したばかりでした。美術館の前には広い緑の芝生が続き、そこに寝転びながら半日過ごしたことを懐かしく思い出します。
周辺の環境も含めて、実に居心地の良い美術館でした。
今思うと特別凄いコレクションがあったわけでもなく、カジュアルなカフェも(当時日本には皆無だった)今の水準から言えば普通だし、なのに心に残っているのはなぜだろう。
美術館のスタッフたちのフレンドリーな対応を含めた全体が居心地良かったのですね。
日本に例をあげた方がわかりやすい。
東京木場の東京都現代美術館は、上野の東京都美術館から引き継いだコレクションは第一級だし、建物も驚くほど巨大です。
しかし居心地の点でいえば日本で最悪の部類に入ります。
世界有数の長大な入口の通路というか、エントランスというか、あれはいったい何なんでしょう。
あそこで恋人たちが半日過ごせるかしら。
ヒマをもてあます老人があそこに行って日がな一日過ごそうと思うかしら。
レストランも暗い雰囲気でこれは文句無くワースト1。
その点、軽井沢のセゾン現代美術館は、これはもう何べん行ってもいい。上掲の3条件が全てあてはまる素晴らしい美術館です。
デパート経営では失敗されたけれど、堤さんがこの美術館をつくってくれたことには心より感謝したい。
定番のコレクションの品の良さ。
自然の中に埋もれた建物のしっとりとした佇まい。
最も素晴らしいのが若林奮などの彫刻が点在する庭。
というわけで東京都現代美術館には何の恨みもございませんが、居心地の良い美術館と比べるとそのマイナス点がよくわかります。
居心地という点では、磯崎新先生の設計による岡山県の奈義町現代美術館もぜひお薦めです。
あそこはコレクション=美術館となった不思議な建物で、新しくコレクションが増えるわけではない、気張った企画展を開催するわけでもない。町立ですが、おそらくランニングコストとしては驚くほど安上がりな美術館でしょう。
なのに年々来館者が増えていることは先般お伝えしました。
カフェでお茶を飲み、付設の図書館の窓辺でのんびりと本を読む、至福のときですね。
さて、谷川岳を望む山奥に建つ天一美術館です。
亭主たちが露天風呂愛好会の例会で谷川温泉などを巡ったのは今から10年前の雪のまだ深い3月でした。
このときに寄ったのですが、事前には全く期待していませんでした。
銀座の高級天麩羅店「天一」のご主人が集めた岸田劉生の「麗子像」が目玉なのですが、実はそうコレクションが充実しているわけではありません。
展示も亭主たちが行ったときには素人がやったとしか思えないお粗末なものでした(今は違うかも知れませんが)。
しかし、しかし、内部空間の豊かさには心底感動しました。
吉村順三の遺作となった和風の建築ですが、静謐な空気が漲る木の空間には思わず粛然としました。
椅子もいい。皆で旅の途中ののんびりとした時間を過ごすには座り心地のいい椅子があることも大事です。
どたどた歩いてはいけないと感じさせる緊張感のある空間、静かに時が流れるような、話す言葉も自ずとゆっくりしてしまう、あの天一美術館の居心地の良さは10年経ったいまも印象深く記憶に残っています。



初めての名古屋でのアートフェアでしたが、皆さんのおかげで気持ちよく過ごすことができました。
ご来場の皆様、作品をお買い上げいただいた皆様には心より御礼を申し上げます。
ときの忘れものは昨日から一週間、8月15日(月)まで夏休みです。
久しぶりにスタッフともども休養をとって英気を養いたいと思います。
先日、普段はなかなか行けないような美術館をご紹介しますと申し上げましたが、本日はその二回目。
Casa BRUTUS特別編集「日本の美術館ベスト100ガイド」を見ると、最近また美術館ブームのようで、あっちこっちに魅力的な美術館の建設が続いています。このところ露天風呂愛好会も開店休業状態だし、新しい美術館にはほとんど行っていません。
こういう雑誌には載っていないようなところの美術館をご紹介するしかありませんが、亭主の故郷群馬にある、それも山育ちの亭主が「こりゃ遠いや」と驚くほどの山奥に建つ天一美術館をご紹介しましょう。
また行きたくなるような美術館の条件とは何でしょうか。
先ず第一に、コレクションが充実している、または小さくとも良いから「そこにしかないもの」を持っていること。
第二に、豊かな建築空間をもっていること。どんな名品でも会議室みたいな場所で見せられては興ざめです。
第三に、立地条件。わざわざ入場料を払い、出かけて行くのですから、美術館の建つ環境も大切です。
とまあ、ここまでは常識的ですね。
亭主としては、第四の条件としてぜひ「居心地の良さ」をあげたい。
居心地というのは必ずしも形としてあるものではありません。
亭主と社長が姪の結婚式のためにアメリカ西海岸に行ったのはもう遥か昔ですが、ちょうどマリオ・ボッタ設計によるサンフランシスコ近代美術館
が開館したばかりでした。美術館の前には広い緑の芝生が続き、そこに寝転びながら半日過ごしたことを懐かしく思い出します。
周辺の環境も含めて、実に居心地の良い美術館でした。
今思うと特別凄いコレクションがあったわけでもなく、カジュアルなカフェも(当時日本には皆無だった)今の水準から言えば普通だし、なのに心に残っているのはなぜだろう。
美術館のスタッフたちのフレンドリーな対応を含めた全体が居心地良かったのですね。
日本に例をあげた方がわかりやすい。
東京木場の東京都現代美術館は、上野の東京都美術館から引き継いだコレクションは第一級だし、建物も驚くほど巨大です。
しかし居心地の点でいえば日本で最悪の部類に入ります。
世界有数の長大な入口の通路というか、エントランスというか、あれはいったい何なんでしょう。
あそこで恋人たちが半日過ごせるかしら。
ヒマをもてあます老人があそこに行って日がな一日過ごそうと思うかしら。
レストランも暗い雰囲気でこれは文句無くワースト1。
その点、軽井沢のセゾン現代美術館は、これはもう何べん行ってもいい。上掲の3条件が全てあてはまる素晴らしい美術館です。
デパート経営では失敗されたけれど、堤さんがこの美術館をつくってくれたことには心より感謝したい。
定番のコレクションの品の良さ。
自然の中に埋もれた建物のしっとりとした佇まい。
最も素晴らしいのが若林奮などの彫刻が点在する庭。
というわけで東京都現代美術館には何の恨みもございませんが、居心地の良い美術館と比べるとそのマイナス点がよくわかります。
居心地という点では、磯崎新先生の設計による岡山県の奈義町現代美術館もぜひお薦めです。
あそこはコレクション=美術館となった不思議な建物で、新しくコレクションが増えるわけではない、気張った企画展を開催するわけでもない。町立ですが、おそらくランニングコストとしては驚くほど安上がりな美術館でしょう。
なのに年々来館者が増えていることは先般お伝えしました。
カフェでお茶を飲み、付設の図書館の窓辺でのんびりと本を読む、至福のときですね。
さて、谷川岳を望む山奥に建つ天一美術館です。
亭主たちが露天風呂愛好会の例会で谷川温泉などを巡ったのは今から10年前の雪のまだ深い3月でした。
このときに寄ったのですが、事前には全く期待していませんでした。
銀座の高級天麩羅店「天一」のご主人が集めた岸田劉生の「麗子像」が目玉なのですが、実はそうコレクションが充実しているわけではありません。
展示も亭主たちが行ったときには素人がやったとしか思えないお粗末なものでした(今は違うかも知れませんが)。
しかし、しかし、内部空間の豊かさには心底感動しました。
吉村順三の遺作となった和風の建築ですが、静謐な空気が漲る木の空間には思わず粛然としました。
椅子もいい。皆で旅の途中ののんびりとした時間を過ごすには座り心地のいい椅子があることも大事です。
どたどた歩いてはいけないと感じさせる緊張感のある空間、静かに時が流れるような、話す言葉も自ずとゆっくりしてしまう、あの天一美術館の居心地の良さは10年経ったいまも印象深く記憶に残っています。



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