「ART OSAKA 2012」レポート2~新澤悠

ART OSAKA 2012、現地より第二信をお送りします。
土曜日、一般入場一日目です。
午前中の天気は相も変わらず移り気で、雨が降ったり止んだりしていましたが、午後半ばからは晴れ間が続き、打ち水効果になったのか気温も大分下がり、昨日と一昨日に比べ遥かに過ごしやすい一日でした。…一日中屋内にいたのであまり関係ありませんでしたが。
昨日のプレビューの時点でそれなりに人の入りがあったと感じていたのですが、本日は輪を掛けて大勢のお客様がいらっしゃいました。そんな中、自分は昨日のブログ記事をカタカタとノートPCで打ち込んでいたのですが、「ひょっとして釜山のブログ記事を書かれていた方ですか?」と来場者の方に訊かれる事数回。フェア会場でPC打ち込み作業をしているからそう思われたのか、文章から想定されるイメージが現実の自分に即しているのか…まぁ楽しんでいただけたようで何よりです。
作品の売れ行きは、高額作品はともかくとして、本日は宮脇愛子の"UTSUROHI I"と秋葉シスイの「次の嵐を用意している」、「今日」の計3作品が売約となりました。他にも尾形一郎 尾形優の写真集「HOUSE」や宮脇愛子の『La Rencontre, c´est merveilleuse 宮脇愛子、私が出逢った作家たち』、『生誕100年記念 瑛九展』カタログなどをお買い上げいただき、結構うまく行っているのでは、と思わせる売れ行きです。
本日はナイトビューイングがあるので、一般公開は午後6時まで。7時のナイトビューイング開始までに夕食を済ませます。ちなみに本日の夕飯は、前回ホテルの下見に来た時に寄った、梅田地下商店街のたこ焼き屋。ネギ焼きの味が忘れられず、もう一度行ってしまいました。時間がなかったので、たこ焼きは火傷しないよう水と一緒に飲み下すという勿体ない有様でしたが、美味しゅうございました。来年参加する事があればまた行きたいと思います。
ナイトビューイングですが、一般公開と合わせて注目を集めていたのは尾形一郎 尾形優のパネル作品2点でした。大きさでいえばハ・ミョンウンの"master piece"シリーズの方が大きい(4つで1組と考えて)のですが、やはりイメージの密度が違うせいか、皆様興味深げに見てらっしゃいました。そしてここでサポートに入って下さったのがコレクターのT様。先日の尾形邸でのプライベートビューイングにも参加されており、その所感と合わせて作家の人柄を力説してくださり、私もホームページに掲載されている植田実先生のタイルの家に関するエッセイなどを紹介して、ときの忘れものブログの読者を増やすことに成功しました。Twitterなどで口コミがバカにできない影響力を持つ昨今、こうした小さな所でも営業努力は欠かせませんね。T様、ご協力ありがとうございました。
尾形一郎 尾形優
"Ocotlan 1-C"(左)
"Tepotzotlan 5-C"(右)
明けて翌日、日曜日。
早くも最終日です。昨日から引き続き過ごしやすい天気(あくまで初日と比較して、ですが)で、来場者数にも期待できそうです。
昨日深夜に合流した綿貫さんは、中之島デザインミュージアムで開催中の特別展に出向き、自分は留守を社長にお任せして、ホテル会場内をブラブラとしてきてみました。以下、個人的に気になった展示(敬称略)をご紹介します。ART KYOTO 2012の時と同様に、セレクションは完全に新澤の趣味ですので悪しからず。
ユカリアート(東京)
淀川テクニックさんの作品。
普段は完全に川から拾い上げた材料だけで作品を作るそうですが、流石に実用品は安全面の問題があるので芯を入れて作っているそうです。ただ、色だけは一切塗装せず、材料の色をそのまま活かしています。
お得意の動物作品。
中央のアルマジロは甲殻部分がキーボードになっており、思わず「理論武装?」などと深読みしてしまいました。
ギャラリータントテンポ(神戸)
デジタル技術がもてはやされる昨今、あえてアナログで作成された作品。モデルは全て同一人物。どうやって作ったのか? 詳細は下の写真をご覧ください。
一度撮影した写真を現像し、切り抜いてジオラマを作り、更にそれを撮影して完成。ジオラマの時点で作品として成り立っていますが、それを更に撮影することで独特の雰囲気が形成されています。
展現舎(大阪)
絵本や漫画に似合いそうな可愛らしいタッチの少女と、重苦しく、退廃的な背景と表情が特徴的な作品。
作者の植村珠美さんはまだ二十歳で、今回の出展がデビューとのこと。
YOD Gallery(大阪)
新野洋さんによる立体作品。
5cmほどのサイズですが、標本と勘違いしてしまう精密さで作られています。
自然博物館での展示も計画されているそうですが、言われなければ実在する昆虫と思っても不思議ではありません。

松尾恵+ヴォイスギャラリー psf/w(京都)
カキに対する深い拘りを感じさせる展示の数々。写真はプルバックカーの車体にカキの殻を使用した作品です。
文鎮などは多くの人が思いつくでしょうが、車の車体に見立てるというのは中々ないのではないでしょうか。作家の小川しゅんさんは、いずれラジコンで所狭しと爆走するカキのレースを開催したいと語っておられました。
殻だけではなく、身の方も写真作品に活かされています。
Gallery 工房 親(東京)
韓国人作家のユウ・ソラさんの個展を開催。
キャンバスに絵の具とブラシではなく糸とミシンでイメージを構成しており、縫い込まれた糸によって生じる凹凸により、不思議な作風になっていました。
KimJaeSun GALLERY(韓国・釜山)
個人的に今回の一押し作品である Sehan Kimさんの "Dot-City lights"。
下のアップになっている写真を見れば分かりますが、黒い背景に原色の丸を配置することで遠近感のあるイメージを構築されています。

ギャラリー ジン エスプリ プラス(東京)
昔ながらの富士山画かと思えば、練乳がかかったイチゴかき氷でもあるというユーモア溢れる作品。
シートいっぱいに寿司の詰まった作品。タイトルは見たまんまの「すし詰め」。こういうセンスは大好きです。
Gallery YUKI-SIS(東京)
土ヶ端大介さんの作品2点。やけに細かい線で描かれているいるな、とよく見てみると、材料はなんと伝線したストッキング。

フクダ画廊(大阪)
森香子さんの「移り魂(うつりだま)」
まさに人魂がひょろひょろと移動しているかのような絶妙なフォルムです。
同じく森香子さんの「物欲魂(ぶつよくだま)」
非常に分かりやすいです。この人、生前は絶対女性だったに違いない。
向正一さんの "Baby Bed Guardians" シリーズ
作家さんは元特撮用の着ぐるみ作成を生業になされていたそうで、非常に凝った構造になっていました。なんでも息子さんの成長に合わせて関連するキャラクターを作成されているそうで、今後どのような怪人が誕生するのか今から楽しみです。
Gallery OUT of PLACE
森村誠さんによるインステレーション
暗い話題や悪い話題ばかりがニュースを賑わせる昨今、これではいかんとそれらの中に希望を見つけるべく、英字新聞からHOPEの4字以外を修正液で消してしまったという力作です。
乙画廊(大阪)
ART KYOTO 2012でお隣のブースだった乙画廊さん。完全変形する菩薩様で自分の心をガッチリと掴んでくださいましたが、今回はその新作を展示なされていました。今は変形のみですが、いずれ合体もこなしてみせてくれるに違いないと、無茶で無責任な期待をしていたり。
パズルプロジェクト
片岡健助さんの「だめにんげん」
「人に寄り添う弱さや悲しさを、ゆるい形にて表現。」とのことですが、妙にシンパシーを感じさせる造形です。
ART KYOTO 2012 でパフォーミングアートを行っていた菩須彦さんの "Hades"。
絵が描かれたダンボールがパズルピースになっており、組み上げると写真のような巨大な顔が現れます。
Gallery 新羅(韓国・大邱)
初日のレセプションでお話した釜山の画廊です。
目についたのは写真のオブジェクトインスタレーション。Hong Sun Hoanさんの作品で、壁に立てかけられた透明なボードと、床に置かれた枕、そしてその枕の中央の窪みに注がれた水(!)という、何ともシュールな作品でした。
Gallery IDF(名古屋)
平松絵美さんの絵画作品群
それぞれが個別の作品ですが、どの作品にも赤い糸が描かれており、それによって作品の位置や大きさに関わらず全てが繋がって見える所が面白い作品です。
四季彩舎(東京)
金丸悠児さんの立体作品。
去年までは絵画しか作らなかったそうですが、以降はご本人の絵画をそのまま立体化したかのような存在感のある作品も作られているそうです。様々な動物の背に家や街が乗っている、というのは絵ではそれなりに見かけますが、立体となると中々に珍しいですね。
以上、ざっとですが自分の琴線に触れた作品を紹介させていただきました。
実はこの記事、8日の午後18時に書いており、フェアはまだ終了していないのですが、この後は後片付けやら夕食やらでバタバタするのは目に見えているので、今回はこれにて締めとさせていただきます。
駆け足で申し訳ありませんが、お楽しみいただけたようなら幸いです。
(しんざわ ゆう)

ART OSAKA 2012、現地より第二信をお送りします。
土曜日、一般入場一日目です。
午前中の天気は相も変わらず移り気で、雨が降ったり止んだりしていましたが、午後半ばからは晴れ間が続き、打ち水効果になったのか気温も大分下がり、昨日と一昨日に比べ遥かに過ごしやすい一日でした。…一日中屋内にいたのであまり関係ありませんでしたが。
昨日のプレビューの時点でそれなりに人の入りがあったと感じていたのですが、本日は輪を掛けて大勢のお客様がいらっしゃいました。そんな中、自分は昨日のブログ記事をカタカタとノートPCで打ち込んでいたのですが、「ひょっとして釜山のブログ記事を書かれていた方ですか?」と来場者の方に訊かれる事数回。フェア会場でPC打ち込み作業をしているからそう思われたのか、文章から想定されるイメージが現実の自分に即しているのか…まぁ楽しんでいただけたようで何よりです。
作品の売れ行きは、高額作品はともかくとして、本日は宮脇愛子の"UTSUROHI I"と秋葉シスイの「次の嵐を用意している」、「今日」の計3作品が売約となりました。他にも尾形一郎 尾形優の写真集「HOUSE」や宮脇愛子の『La Rencontre, c´est merveilleuse 宮脇愛子、私が出逢った作家たち』、『生誕100年記念 瑛九展』カタログなどをお買い上げいただき、結構うまく行っているのでは、と思わせる売れ行きです。
本日はナイトビューイングがあるので、一般公開は午後6時まで。7時のナイトビューイング開始までに夕食を済ませます。ちなみに本日の夕飯は、前回ホテルの下見に来た時に寄った、梅田地下商店街のたこ焼き屋。ネギ焼きの味が忘れられず、もう一度行ってしまいました。時間がなかったので、たこ焼きは火傷しないよう水と一緒に飲み下すという勿体ない有様でしたが、美味しゅうございました。来年参加する事があればまた行きたいと思います。
ナイトビューイングですが、一般公開と合わせて注目を集めていたのは尾形一郎 尾形優のパネル作品2点でした。大きさでいえばハ・ミョンウンの"master piece"シリーズの方が大きい(4つで1組と考えて)のですが、やはりイメージの密度が違うせいか、皆様興味深げに見てらっしゃいました。そしてここでサポートに入って下さったのがコレクターのT様。先日の尾形邸でのプライベートビューイングにも参加されており、その所感と合わせて作家の人柄を力説してくださり、私もホームページに掲載されている植田実先生のタイルの家に関するエッセイなどを紹介して、ときの忘れものブログの読者を増やすことに成功しました。Twitterなどで口コミがバカにできない影響力を持つ昨今、こうした小さな所でも営業努力は欠かせませんね。T様、ご協力ありがとうございました。
尾形一郎 尾形優"Ocotlan 1-C"(左)
"Tepotzotlan 5-C"(右)
明けて翌日、日曜日。
早くも最終日です。昨日から引き続き過ごしやすい天気(あくまで初日と比較して、ですが)で、来場者数にも期待できそうです。
昨日深夜に合流した綿貫さんは、中之島デザインミュージアムで開催中の特別展に出向き、自分は留守を社長にお任せして、ホテル会場内をブラブラとしてきてみました。以下、個人的に気になった展示(敬称略)をご紹介します。ART KYOTO 2012の時と同様に、セレクションは完全に新澤の趣味ですので悪しからず。
ユカリアート(東京)淀川テクニックさんの作品。
普段は完全に川から拾い上げた材料だけで作品を作るそうですが、流石に実用品は安全面の問題があるので芯を入れて作っているそうです。ただ、色だけは一切塗装せず、材料の色をそのまま活かしています。
お得意の動物作品。中央のアルマジロは甲殻部分がキーボードになっており、思わず「理論武装?」などと深読みしてしまいました。
ギャラリータントテンポ(神戸)デジタル技術がもてはやされる昨今、あえてアナログで作成された作品。モデルは全て同一人物。どうやって作ったのか? 詳細は下の写真をご覧ください。
一度撮影した写真を現像し、切り抜いてジオラマを作り、更にそれを撮影して完成。ジオラマの時点で作品として成り立っていますが、それを更に撮影することで独特の雰囲気が形成されています。
展現舎(大阪)絵本や漫画に似合いそうな可愛らしいタッチの少女と、重苦しく、退廃的な背景と表情が特徴的な作品。
作者の植村珠美さんはまだ二十歳で、今回の出展がデビューとのこと。
YOD Gallery(大阪)新野洋さんによる立体作品。
5cmほどのサイズですが、標本と勘違いしてしまう精密さで作られています。
自然博物館での展示も計画されているそうですが、言われなければ実在する昆虫と思っても不思議ではありません。

松尾恵+ヴォイスギャラリー psf/w(京都)カキに対する深い拘りを感じさせる展示の数々。写真はプルバックカーの車体にカキの殻を使用した作品です。
文鎮などは多くの人が思いつくでしょうが、車の車体に見立てるというのは中々ないのではないでしょうか。作家の小川しゅんさんは、いずれラジコンで所狭しと爆走するカキのレースを開催したいと語っておられました。
殻だけではなく、身の方も写真作品に活かされています。
Gallery 工房 親(東京)韓国人作家のユウ・ソラさんの個展を開催。
キャンバスに絵の具とブラシではなく糸とミシンでイメージを構成しており、縫い込まれた糸によって生じる凹凸により、不思議な作風になっていました。
KimJaeSun GALLERY(韓国・釜山)個人的に今回の一押し作品である Sehan Kimさんの "Dot-City lights"。
下のアップになっている写真を見れば分かりますが、黒い背景に原色の丸を配置することで遠近感のあるイメージを構築されています。

ギャラリー ジン エスプリ プラス(東京)昔ながらの富士山画かと思えば、練乳がかかったイチゴかき氷でもあるというユーモア溢れる作品。
シートいっぱいに寿司の詰まった作品。タイトルは見たまんまの「すし詰め」。こういうセンスは大好きです。
Gallery YUKI-SIS(東京)土ヶ端大介さんの作品2点。やけに細かい線で描かれているいるな、とよく見てみると、材料はなんと伝線したストッキング。

フクダ画廊(大阪)森香子さんの「移り魂(うつりだま)」
まさに人魂がひょろひょろと移動しているかのような絶妙なフォルムです。
同じく森香子さんの「物欲魂(ぶつよくだま)」非常に分かりやすいです。この人、生前は絶対女性だったに違いない。
向正一さんの "Baby Bed Guardians" シリーズ作家さんは元特撮用の着ぐるみ作成を生業になされていたそうで、非常に凝った構造になっていました。なんでも息子さんの成長に合わせて関連するキャラクターを作成されているそうで、今後どのような怪人が誕生するのか今から楽しみです。
Gallery OUT of PLACE森村誠さんによるインステレーション
暗い話題や悪い話題ばかりがニュースを賑わせる昨今、これではいかんとそれらの中に希望を見つけるべく、英字新聞からHOPEの4字以外を修正液で消してしまったという力作です。
乙画廊(大阪)ART KYOTO 2012でお隣のブースだった乙画廊さん。完全変形する菩薩様で自分の心をガッチリと掴んでくださいましたが、今回はその新作を展示なされていました。今は変形のみですが、いずれ合体もこなしてみせてくれるに違いないと、無茶で無責任な期待をしていたり。
パズルプロジェクト片岡健助さんの「だめにんげん」
「人に寄り添う弱さや悲しさを、ゆるい形にて表現。」とのことですが、妙にシンパシーを感じさせる造形です。
ART KYOTO 2012 でパフォーミングアートを行っていた菩須彦さんの "Hades"。絵が描かれたダンボールがパズルピースになっており、組み上げると写真のような巨大な顔が現れます。
Gallery 新羅(韓国・大邱)初日のレセプションでお話した釜山の画廊です。
目についたのは写真のオブジェクトインスタレーション。Hong Sun Hoanさんの作品で、壁に立てかけられた透明なボードと、床に置かれた枕、そしてその枕の中央の窪みに注がれた水(!)という、何ともシュールな作品でした。
Gallery IDF(名古屋)平松絵美さんの絵画作品群
それぞれが個別の作品ですが、どの作品にも赤い糸が描かれており、それによって作品の位置や大きさに関わらず全てが繋がって見える所が面白い作品です。
四季彩舎(東京)金丸悠児さんの立体作品。
去年までは絵画しか作らなかったそうですが、以降はご本人の絵画をそのまま立体化したかのような存在感のある作品も作られているそうです。様々な動物の背に家や街が乗っている、というのは絵ではそれなりに見かけますが、立体となると中々に珍しいですね。
以上、ざっとですが自分の琴線に触れた作品を紹介させていただきました。
実はこの記事、8日の午後18時に書いており、フェアはまだ終了していないのですが、この後は後片付けやら夕食やらでバタバタするのは目に見えているので、今回はこれにて締めとさせていただきます。
駆け足で申し訳ありませんが、お楽しみいただけたようなら幸いです。
(しんざわ ゆう)
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