奈良の大和文華館の蛙股池をはさんだ向かい側にこじんまりした美術館があるのをご存知でしょうか。
林業家の中野皖司氏(故人)によって1984年(昭和59年)に開館した中野美術館です。

亭主が創設者の中野さんにお会いしたのは1991年6月に銀座・資生堂ギャラリーで開催された「没後15年 銅版画の詩人 駒井哲郎回顧展」の会場ででした。
この展覧会は一時改装のため休館していた資生堂ギャラリーを再開するにあたり、新設されたばかりの企業文化部から何かいい展覧会を企画して欲しいと依頼された亭主が提案したもので、図録の編集も担当させていただきました。
色彩作品(カラー銅版、モノタイプ、水彩)を中心に85点を展示したのですが、準備期間が僅か2ヶ月という制約の中で亭主のネットワークを総動員して作品を集めました。
駒井家や、当時社長だった福原義春さんなどの個人コレクターたちのおかげで小規模ですが印象深い展覧会になったと思います。
上京された中野さんは出品作のひとつ『R夫人の肖像』(1950年)をぜひ中野美術館に収蔵したいとギャラリーの担当者に懇請されたようです。
1919年(大正8)の開設以来、長年にわたりノンプロフィットギャラリーとして運営してきた資生堂は作品の売買には一切タッチしないため、急遽亭主が呼ばれ、中野さんにお会いしました。
1950年の『R夫人の肖像』は『R夫人像』(1970年頃)のもととなった作品で、駒井作品の中でも最も謎に満ちた作品で、幾つものバージョンがあり、いまだその全貌はわかっていません。
この作品のことを論ずると夜が明けてしまいそうなので、別の機会に譲りますが、ともかく中野さんの希望された『R夫人の肖像』はめでたく同美術館に収蔵されました。

先日、中野美術館から現在開催中の展覧会のご案内をいただいたのでご紹介しましょう。

コレクション展Ⅴ
「静物画 ア ラ カルト」
「近代の日本画」

20120927blog[前期] 
平成24年9月7日(金)~10月8日(祝)

[後期] 
平成24年10月12日(金)~11月11日(日)

[休館日]毎週月曜日
【但し、月曜日祝日の場合は開館、翌日休館】

静物画 ア ラ カルト
静物画は、人物や風景と並んで具象絵画のひとつのジャンルであるが、「静物」という一見日常的と思われるモチーフも作家作家の眼を通して表現されると、存在感ある「美的世界」に姿を変えていく。
この展覧会は、近代の洋画家(中村彜、国吉康雄、小出楢重、須田国太郎、鳥海青児など)、版画家(長谷川潔駒井哲郎、浜口陽三)による所蔵作品約30点を通して「静物画の世界」紹介いたします。

「近代の日本画」
富岡鉄斎、竹内栖鳳、土田麦僊、入江波光、村上華岳、冨田溪仙などの近代の日本画約30点を展示いたします。

公益財団法人中野美術館
〒631-0033 奈良市あやめ池南9丁目946-2
TEL・FAX (0742)-48-1167
http://www.nakano-museum.ecweb.jp
近鉄奈良線学園前駅(南出口)下車徒歩8分

お近くの方、奈良を旅行される方、ぜひお立ち寄りください。