映画「ハーメルン」ついに上映 /井桁裕子

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坪川拓史監督の、福島・奥会津の昭和村を舞台にした映画「ハーメルン」の上映が始まろうとしています。
まずは東京・渋谷のユーロスペースで9月7日から、その後全国で順次上映されます。

先日、試写会があり6月20日のときの忘れものブログにその感想を書きましたが、「思い入れをしすぎずに書こう」と考えすぎてうまく書けませんでした。
主演女優の倍賞智恵子さんが言われたという表現は「大人のファンタジー」。
ファンタジーは人間の力の源泉ではないでしょうか。
人はイマジネーションの力で、向き合えば立ちすくみそうな現実をも越えていく。ファンタジーという言葉にはそういう積極的な意味があるように思います。

とくに名前も出ない私が、あまり宣伝をするのは出過ぎたことかも知れません。
これを読んでから映画を観て下さる皆様には、私が劇中の人形を”作った”というのは忘れていただければと思っています。
なぜなら、短時間ながら印象的に登場するフィルムの中の人形遣いは、時を越えて現れる神秘的な存在だからです。
人形については謎のまま観るのが好ましいのだろうと思うのです。

実は、人形劇の内容は原子力と人類の問題がモチーフになっているのです。これは何人が気が付くことか....。
映画全体の中で印象が強すぎるとのことで、色を消し、音楽も消して無音にし、時間も短かくなりました。
人形劇一座の楽隊として旧日本兵の、肩の階級章を外した軍服を着た男たちが出てくるのですが、それも大幅にカットされて一瞬です。
人形劇を考えた2011年初夏の頃は「ファウスト」が元のイメージとしてありました。
ファウストの名残は人形劇とは別の部分で校長先生の言葉に残されています。が、これも何人が気付くことか...。
自分が参加しているから言うわけではなく、そんな秘められた意思表示に気付いて欲しいという気持ちでいます。

私は前作「アリア」の撮影後、次回作にも人形劇が出るということで、まだ福島で撮影が決まる前の2008年から関わって青森のロケハンについて行ったりしました。
人形遣いの黒谷都さんを2年がかりで坪川監督にご紹介した話は以前ブログに書きましたが、その後この映画は名だたる豪華キャストが次々決定したこともあって想像よりずっと大きな話になっていったのでした。
本編の撮影に漕ぎ着けられるのかどうか危機的な状況が続く中、私の長い時間のかかる手作業は、何もかも無駄になるかも...という不安とともに孤独に進めざるを得ず、精神的に苦しいものでした。
いよいよ撮影が始まってからは、参加した時間は少なかったですが、完成まで実に長い道のりだったという実感があります。
何度も書き換えられ増えたり減ったりしていた脚本の裏には一貫して続く資金難、さらに震災・原発事故という大きな危機がありました。
しかし、取り壊されるはずだった今にも倒れそうな校舎はあの激震にも豪雪にも耐え続け、また重要なモチーフとなるイチョウも、その秋の最も美しい輝きを、見事に撮影スケジュールと重ねてくれました。
あたかも、作品の静かなメッセージに共感してくれるかのようでした。

ゆっくりとした時間の流れる、不思議な魅力のある映画だと思います。
この機会にご鑑賞いただければ幸いです。

出演:西島秀俊、倍賞千恵子、坂本長利、水橋研二、守田比呂也、内田春菊、小松政夫、風見章子、黒谷都 ほか

<現在決まっている上映館>
渋谷ユーロスペース 9/7~
梅田ガーデンシネマ 9/21~
シネマート心斎橋 9/21~
福島フォーラム10/12~
ポレポレいわき 10/12~
シネプレックスつくば10/12~

横浜ジャック&ベティ 、
元町映画館、
名古屋シネマテーク、
京都みなみ会館、
上記は日程は未定ですが、この秋に上映とのこと。

「ハーメルン」2013年 / 日本 / 132分
制作・配給(株)トリクスタ

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公式サイト
http://www.hameln-film.jp/

予告編動画

http://www.youtube.com/watch?v=OXlCN7kghQU

情報サイト
http://www.cinemacafe.net/special/5285/recent/ハーメルン
http://cinema.pia.co.jp/title/162676/


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もう一つお知らせです。
9/18(水)~24(火)東京・丸善丸の内オアゾ4階ギャラリーにて第8回「人・形 展」が開催されます。
創作人形、フィギュアなど個性豊かな「ひとがた」の展示です。
私は陶の新作を出品します。東京駅からすぐですので、近くにお越しの際はお立ち寄りください。

いげたひろこ