第24回瑛九展 瑛九と瀧口修造」は昨日終了いたしました。
この夏、思いがけず瑛九の油彩の名品をまとまって入手する機会がありました。
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長年大切にされてきた作品を譲っていただけたことは光栄でもあり、身のひきしまる思いでした。できれば売らずにとっておきたいほどの素晴らしい作品ですが、画商としてはそうもいかない。今回の展覧会で皆様にその一部を見ていただくことができました。

瀧口修造の作品と一緒にというのも新鮮だったようで、おかげさまで新聞を見て初めてきた方も多く、短い会期にもかかわらずたくさんの方にご来場いただきました。
作品をお買い上げいただいたお客様には心より御礼を申し上げます。
瑛九瀧口修造との関係も出品作品や執筆論文のパネルなどを通してご理解いただけたのではと思っています。
来年以降も瑛九の紹介を続けてまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

ところで上野の西洋美術館で8月から開催されていた「コルビュジエと20世紀美術」、会期も今日と明日の残り二日間のみ。こんなに遅くなってしまい心苦しいのですが、今年の大収穫な展覧会だったのでご紹介させていただきます。
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コルビュジエと20世紀美術
2013年8月6日~11月4日
国立西洋美術館

この夏から秋にかけては暑かったし、仕事もいつになく忙しくてなかなか上野まで行けませんでしたが、10月のある日、出勤前に行って参りました。
チケット売り場に並び「コルビュジエ展をください」と言うと、「本日は常設展は無料です」とのお返事。
ン? 「コルビュジエと20世紀美術」展って常設なの?
入って驚きました。
今まで森美術館はじめ、いくつかのル・コルビュジエ展を観てきましたが、今回の展示(出品作品、展示空間)ほど素晴らしいと思ったことはありません。
それが「常設」? そして「本日無料」?
さすが西洋美術館!
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国立西洋美術館の本館を設計したル・コルビュジエ(1887-1965)は、20世紀を代表する建築家であると同時に、絵画、彫刻、版画、タピスリー、映像などの分野にわたって活躍した多才な芸術家でもあります。彼は毎日の朝をアトリエでの絵画制作、午後を設計事務所での仕事にあて、異なる領域のあいだを往復し続けた稀代のクリエイターでした。

今回の展覧会は、パリのル・コルビュジエ財団と、ル・コルビュジエの美術作品に関する世界有数のコレクションをもつ大成建設株式会社の協力のもとで開催されます。本展のもっとも大きな特色は、ル・コルビュジエの絵画や彫刻を、彼自身が設計した美術館の空間の中で鑑賞できるところにあります。彼が後半生に「諸芸術の綜合」を訴えたことは近年あらためて注目されていますが、本展は彼の美術作品と建築空間が実際にどのように響きあうかを確かめることのできる機会となるでしょう。

また、本展には、ル・コルビュジエの美術作品とともに、彼と密接な関わりのあった同時代の芸術家たちの作品も展示されます。彼が「レスプリ・ヌーヴォー(新精神)」を唱えた時代の盟友であったオザンファン、レジェ、リプシッツ、そして彼が強い関心を寄せたキュビスムの芸術家たち(ピカソ、ブラック、グリス、ローランス)、さらに彼がいち早く注目したボーシャン、デュビュッフェ、ルイ・ステールら異色の画家たちの作品を通じて、モダニズムの枠にとらわれず大きな視野のもとで創造の根源を探ろうとしたル・コルビュジエのユニークな芸術観の一端を垣間見ることも、本展のもうひとつの狙いです。(同館HPより引用)
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今回の展覧会の企画・構成に携わった林美佐先生(大成建設ギャルリー・タイセイ学芸員)にうかがったところによれば、今回の展覧会は、大成建設が所蔵しているコル作品の一部を西美に寄託したことがきっかけで、どうせ展示するなら、本館全部を使って、オザンファンやレジェなんかも見せよう、ということになり、あちこちから作品を借りて、かなりな重量級の展覧会になったとのこと。

<日頃、古い時代の作品が並んでいる西美の空間がすっかり変わり、空間と作品が響きあっている感じがして、本館はこのままにしておいてくれたら良いのに、と思ってしまいます。>

かなりどころか、ル・コルビュジエとその周辺の作家の選りすぐった名品をあの空間をたっぷり使って展示した、文字通り充実の展覧会です。

コルビュジエが愛蔵した3人の画家の作品を見られたのも感激でした。
園芸業を営み40歳を過ぎてから独学で絵を描きだしたアンドレ・ボーシャンの最初の買い手がコルビュジエだったなんて知りませんでした。
度を超えた浪費と奇行、禁治産者として晩年の20年を養老院で過ごしたルイ・ステールに援助の手をさしのべたのがコルビュジエでした。コルビュジエの著書『住宅と宮殿』の余白を幻想的なイメージで埋め尽くしたルイ・ステールのドローイングに鬼気迫るものを感じます。
そしてジャン・デュビュッフェ。無名時代の作家のアトリエを訪ね、その才能をいち早く見極めコレクションしたというコルビュジエの「眼」の確かさに驚きました。

カタログも非常によくできています。
建築家の余技ではない、アーティストとしてのル・コルビュジエの世界を堪能してきました。

因みに本日(文化の日)も無料です。明日は有料(それでもたった420円)ですが、間に合ったらぜひ行ってみてください。

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画廊コレクションから2点、ご紹介します。
ル・コル「トーテム」ル・コルビュジエ
トーテム
1963年
リトグラフ
72.0x80.5cm
Ed.75 版上サイン

unite11b
ル・コルビュジエ
ユニテ No.11b
1965年 カラーエッチング
57x45cm
Ed.130 signed

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