スタッフSの海外ネットサーフィン No.23 「Come to the Gallery with Katie」
National Gallery of Scotland
読者の皆様こんにちわ。早いもので一月も終わりが近付き、一日中雨が降ったり、かと思うと木枯らしが吹き続けたりと寒さが身に凍み込む中、いかがお過ごしでしょうか? コンビニのおでんほど偉大な発明品はないんじゃないかと一人飯の時にふと考える、スタッフSこと新澤です。
ここしばらくのスタッフSの海外ネットサーフィンは内容がアートフェアレポートかメジャーな美術館のどちらかだったので、今回は初心に戻り(?)ややマイナーな美術館と企画のご紹介をさせていただきます。
一応この連載で紹介する美術館は以前自分が訪れたことのある場所という縛りがあるのですが、今回のロケーションは連載の第1回でご紹介した自分の母校、Farleigh Schoolを卒業後の進学先を探す際、休みを利用して実際に見に行ってみようと家族で旅行も兼ねてイギリスを南から北へ車で横断した際に立ち寄りました。イギリスの地方にある寮学校というのは基本的にどこも土地が余りまくっており、この時に見て回った学校はいずれも呆れるくらい広々としていました。どれくらい広いかというと、必要に迫られて敷地内を専用のバスが運行されている学校もあるくらいには広いです。
で、そんな突撃隣の寮学校を南から順繰りに北へと行い、最後に辿りついたのが今回取り上げるイギリス北部はスコットランドの中心地エディンバラ。今回ご紹介するNational Gallery of Scotland(スコットランド国立美術館)がある場所です。

"National Gallery of Scotland restitch1 2005-08-07". Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
スコットランド国立美術館は新古典主義様式の建物で、エディンバラ中央部のマウンド と呼ばれる人工的な丘陵地帯に建てられています。建物はスコットランド人建築家ウィリアム・ヘンリー・プレイフェアの設計によるもので、1859年に開館しました。1912年には隣接する王立スコットランド・アカデミーと共にウィリアム・トマス・オルドリーヴによって改築されていますが、それでも150年以上の歴史を誇る美術館です。2004年には巨額の予算を投じた「プレイフェア・プロジェクト」と名づけられた、スコットランド国立美術館と王立スコットランド・アカデミーを地下で繋いだウェストンリンク(The Weston Link)の設置が完成し、講義室、研究施設、ショップ、レストラン、タッチスクリーン仕様の仮想コレクションギャラリーなどが新たに併設されました。この二つの建物の間には近代的な広場が設置されており、エディンバラ城やプリンセス・ストリートを一望することができる観光スポットにもなっています。
このスコットランド国立美術館で昨年11月4日から今年の3月1日まで開催されているのが「Come to the Gallery with Katie」。

英国の絵本作家ジェイムズ・メイヒューのデビュー作である「Katie's Picture Show(ケイティのふしぎ美術館)」の出版から25周年を記念した企画展で、入場料は無料です。1989年に出版されて以来、子供の美術への入門書として親しまれている「Katie's Picture Show」と、それに続くシリーズや、その他の作品のイラストが展示されています。イギリス国内は勿論、パリのルーブルやアメリカの近代美術館で書籍として取り扱われてはいますが、こうしたイラストやマンガがとかく子供向けとして低く見られがち(ピーターラビットのような大御所はともかく)な欧米において、このように個展が開催されるというのは正直意外です。ですが、こうして歴史ある美術館でかつて子供の頃に親しんだ絵本を、作品として振り返るのも中々面白い時間の過ごし方かもしれません。
(しんざわ ゆう)
◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
・frgmの皆さんによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は毎月5日の更新です。
・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」は毎月8日の更新です。
・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
・土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」は毎月13日の更新です。
・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
・井桁裕子のエッセイ「私の人形制作」は毎月20日の更新です。
・小林美香のエッセイ「母さん目線の写真史」は毎月25日の更新です。
・「スタッフSの海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」は終了しました。
「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」は英文版とともに随時更新します。
・浜田宏司のエッセイ「展覧会ナナメ読み」は随時更新します。
・深野一朗のエッセイは随時更新します。
・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイ他を随時更新します。
・故・木村利三郎のエッセイ、70年代NYのアートシーンを活写した「ニューヨーク便り」の再録掲載は終了しました。
・故・針生一郎の「現代日本版画家群像」の再録掲載は終了しました。
・故・難波田龍起のエッセイ「絵画への道」の再録掲載は終了しました。
・森下泰輔のエッセイ「私のAndy Warhol体験」は終了しました。
・ときの忘れものでは2014年からシリーズ企画「瀧口修造展」を開催し、関係する記事やテキストを「瀧口修造の世界」として紹介します。土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
今までのバックナンバーはコチラをクリックしてください。
◆福井県立美術館では2月8日まで『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』が開催されています。ときの忘れものが編集を担当したカタログと、同展記念の特別頒布作品(オノサト・トシノブ、吉原英雄、靉嘔)のご案内はコチラをご覧ください。
National Gallery of Scotland
読者の皆様こんにちわ。早いもので一月も終わりが近付き、一日中雨が降ったり、かと思うと木枯らしが吹き続けたりと寒さが身に凍み込む中、いかがお過ごしでしょうか? コンビニのおでんほど偉大な発明品はないんじゃないかと一人飯の時にふと考える、スタッフSこと新澤です。
ここしばらくのスタッフSの海外ネットサーフィンは内容がアートフェアレポートかメジャーな美術館のどちらかだったので、今回は初心に戻り(?)ややマイナーな美術館と企画のご紹介をさせていただきます。
一応この連載で紹介する美術館は以前自分が訪れたことのある場所という縛りがあるのですが、今回のロケーションは連載の第1回でご紹介した自分の母校、Farleigh Schoolを卒業後の進学先を探す際、休みを利用して実際に見に行ってみようと家族で旅行も兼ねてイギリスを南から北へ車で横断した際に立ち寄りました。イギリスの地方にある寮学校というのは基本的にどこも土地が余りまくっており、この時に見て回った学校はいずれも呆れるくらい広々としていました。どれくらい広いかというと、必要に迫られて敷地内を専用のバスが運行されている学校もあるくらいには広いです。
で、そんな突撃隣の寮学校を南から順繰りに北へと行い、最後に辿りついたのが今回取り上げるイギリス北部はスコットランドの中心地エディンバラ。今回ご紹介するNational Gallery of Scotland(スコットランド国立美術館)がある場所です。

"National Gallery of Scotland restitch1 2005-08-07". Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
スコットランド国立美術館は新古典主義様式の建物で、エディンバラ中央部のマウンド と呼ばれる人工的な丘陵地帯に建てられています。建物はスコットランド人建築家ウィリアム・ヘンリー・プレイフェアの設計によるもので、1859年に開館しました。1912年には隣接する王立スコットランド・アカデミーと共にウィリアム・トマス・オルドリーヴによって改築されていますが、それでも150年以上の歴史を誇る美術館です。2004年には巨額の予算を投じた「プレイフェア・プロジェクト」と名づけられた、スコットランド国立美術館と王立スコットランド・アカデミーを地下で繋いだウェストンリンク(The Weston Link)の設置が完成し、講義室、研究施設、ショップ、レストラン、タッチスクリーン仕様の仮想コレクションギャラリーなどが新たに併設されました。この二つの建物の間には近代的な広場が設置されており、エディンバラ城やプリンセス・ストリートを一望することができる観光スポットにもなっています。
このスコットランド国立美術館で昨年11月4日から今年の3月1日まで開催されているのが「Come to the Gallery with Katie」。

英国の絵本作家ジェイムズ・メイヒューのデビュー作である「Katie's Picture Show(ケイティのふしぎ美術館)」の出版から25周年を記念した企画展で、入場料は無料です。1989年に出版されて以来、子供の美術への入門書として親しまれている「Katie's Picture Show」と、それに続くシリーズや、その他の作品のイラストが展示されています。イギリス国内は勿論、パリのルーブルやアメリカの近代美術館で書籍として取り扱われてはいますが、こうしたイラストやマンガがとかく子供向けとして低く見られがち(ピーターラビットのような大御所はともかく)な欧米において、このように個展が開催されるというのは正直意外です。ですが、こうして歴史ある美術館でかつて子供の頃に親しんだ絵本を、作品として振り返るのも中々面白い時間の過ごし方かもしれません。
(しんざわ ゆう)
◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
・frgmの皆さんによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は毎月5日の更新です。
・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」は毎月8日の更新です。
・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
・土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」は毎月13日の更新です。
・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
・井桁裕子のエッセイ「私の人形制作」は毎月20日の更新です。
・小林美香のエッセイ「母さん目線の写真史」は毎月25日の更新です。
・「スタッフSの海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」は終了しました。
「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」は英文版とともに随時更新します。
・浜田宏司のエッセイ「展覧会ナナメ読み」は随時更新します。
・深野一朗のエッセイは随時更新します。
・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイ他を随時更新します。
・故・木村利三郎のエッセイ、70年代NYのアートシーンを活写した「ニューヨーク便り」の再録掲載は終了しました。
・故・針生一郎の「現代日本版画家群像」の再録掲載は終了しました。
・故・難波田龍起のエッセイ「絵画への道」の再録掲載は終了しました。
・森下泰輔のエッセイ「私のAndy Warhol体験」は終了しました。
・ときの忘れものでは2014年からシリーズ企画「瀧口修造展」を開催し、関係する記事やテキストを「瀧口修造の世界」として紹介します。土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
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◆福井県立美術館では2月8日まで『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』が開催されています。ときの忘れものが編集を担当したカタログと、同展記念の特別頒布作品(オノサト・トシノブ、吉原英雄、靉嘔)のご案内はコチラをご覧ください。
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