野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」 第15回

KIAFを終えて

4年連続4回目の出展をさせて頂いたソウルでのアートフェアKIAFが終わりました。

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今回も展示作業から滞在し、会期最終日まで毎日、会場のときの忘れものさんのブースに張り付いていました。
なので結局観光は何処へも行きませんでしたが、フェアを通じて色々な経験ができた濃い一週間でした。

この間のサンタフェでのアートフェア会場がこじんまりとしていたので、一年ぶりのKIAFの会場は凄く広く感じました。
今回ときの忘れものさんのブースは会場の一番奥地で、ここまでお客様が来てくださるのか…と心配にはなりましたが、週末は特にたくさんの来場者の方で混雑していました。

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会期中ときの忘れものさんのブースでは、著名な作家の作品の、お客様の作品の購入予約後のキャンセルという事もあったり、その他、海外でものを売るというのは難しいものだと感じる事が多々ありましたが、学ぶ事も多くありました。
私は片言のわずかな英語しかできないので、お客様との会話はほとんど通訳の方に頼りきりでしたが、作品のコンセプトや、そこに込めた思いなどを質問されるお客様が日本よりも多いように感じました。

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KIAF全体の展示作品を観て、今回は特に、ミニマルアートや抽象画が多い印象がありました。
あと、こんな素材で…というような変わった作品や、だまし絵のようなもの、KIAFに来るといつも思う事ですが、作家をしていても何がアートで何がアートで無いのかもよく解らなくなる程で、アートは何でもありなんだなと、、
だからこそ、細かい事は気にせずに、自分は自分の作りたいものを追求し、好きなように作ればよいのだと改めて思いました。

また、特定の作家の作品を観る為にギャラリーを目指して来て頂く個展などとは違い、アートフェアの180ものブースのある広い会場では、作品に力が無ければ立ち止まってさえ頂けない事も多いです。
世界的に著名な作家であれば、その作品の質以前に名前で立ち止まって観て頂く事ができますが、無名の作家は作品だけの力だけ、お客様のリアクションというのはとてもシビアです。
その分、作り手としては鍛えられる事や学ぶ事は多いので、やはり現場にいて肌で感じるという事は大事だと思います。

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今回の私の展示作品4点を空や海を描いた風景のものばかりで揃えた事は、統一感のあるインパクトを与える事ができたと思うので良かったと思います。
また色合いも違うものを揃えたので、全体的に美しくカラフルに構成でき、過去3回の出展させて頂いた時よりも最も良い展示になったと思っています。

ただ、今回の作品にもそれぞれにコンセプトや込めた思いがありましたが、その思いを反芻し作品で表現する段階で少し詰めの甘かった作品は、作品としての完成度も甘くなると改めて感じたので、今後そこをもっとしっかり詰めていこうと思います。

また来年、どこのアートフェアに出展させて頂けるかはまだわかりませんが、チャンスを頂いた時には、この経験を生かして臨みたいと思います。

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のぐち たくろう

野口琢郎 Takuro NOGUCHI(1975-)
1975年京都府生まれ。1997年京都造形芸術大学洋画科卒業。2000年長崎市にて写真家・東松照明の助手に就く。2001年京都西陣の生家に戻り、家業である箔屋野口の五代目を継ぐため修行に入る。その後も精力的に創作活動を続け、2004年の初個展以来毎年個展を開催している。

●今日のお勧め作品は、野口琢郎です。
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野口琢郎
「Landscape#30」
2013年
箔画(木パネル、漆、金・銀・プラチナ箔、石炭、樹脂、アクリル絵具)
91.0x182.0cm
サインあり

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*画廊亭主敬白
野口さん、長丁場のフェアに参加していただきご苦労さまでした。世界の巨匠たちに伍してそのオリジナリティを十二分に発揮し、来場者に強い印象を与えたとスタッフたちの報告です。
ご本人は今までにない大作を引っさげての挑戦、その大作が商談成立寸前までいったのが結局うまく行かず気落ちしているようですが、それでも他の作品が売れて韓国の人のコレクションに納まったのですから、たいしたものです。日本のアートフェアで見知らぬ海外の若い作家のん十万円の作品が直ぐに売れるかと考えれば、野口さんにせよ、秋葉さんにせよあちらの人が即金で作品を買ってくださったことは実に嬉しいできごとでした。今後も世界を相手に頑張りましょう!

先日ご案内した豊島区千早の教会での上映会『100,000年後の安全』に行ってきました。
今年見た映画の中でベスト1!
マイケル・マドセン監督の映像の圧倒的な美しさ、静かに語りかけるドキュメンタリーの手法に新鮮な驚きを感じました。こういう映像作家が出てくるとは、アートの世界でも映像が席捲するのは案外近いかもしれない。
高レベル放射性廃棄物をいったい人類はどうしようとしているのか(日本を含め全世界が思考停止している)、この映画には政治的メッセージはまったくない(ないということがまた深い政治的メッセージになっている)、そのことによって原発に賛成の人も反対の人にも「考えなければならないこと」を気付かせてくれます。バックに流れるのは亭主の愛するシベリウス「悲しきワルツ」。不謹慎ですがしびれました。
10月17日(土) 16時00分からも上映されます。ぜひご覧になってください。

◆ときの忘れもののブログは下記の皆さんのエッセイを連載しています。
 ・大竹昭子のエッセイ「迷走写真館 一枚の写真に目を凝らす」は毎月1日の更新です。
 ・frgmの皆さんによるエッセイ「ルリユール 書物への偏愛」は毎月3日の更新です。
 ・石原輝雄のエッセイ「マン・レイへの写真日記」は毎月5日の更新です。
 ・笹沼俊樹のエッセイ「現代美術コレクターの独り言」は毎月8日の更新です。
 ・芳賀言太郎のエッセイ「El Camino(エル・カミーノ) 僕が歩いた1600km」は毎月11日の更新です。
 ・土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」は毎月13日の更新です。
 ・野口琢郎のエッセイ「京都西陣から」は毎月15日の更新です。
 ・新連載・森下泰輔のエッセイ「 戦後・現代美術事件簿」は毎月18日の更新です。
 ・井桁裕子のエッセイ「私の人形制作」は毎月20日の更新です。
 ・新連載・藤本貴子のエッセイ「建築圏外通信」は毎月22日の更新です。
 ・小林美香のエッセイ「母さん目線の写真史」はしばらく休載します。
 ・「スタッフSの海外ネットサーフィン」は毎月26日の更新です。
 ・森本悟郎のエッセイ「その後」は毎月28日の更新です。
 ・植田実のエッセイ「美術展のおこぼれ」は、更新は随時行います。
  同じく植田実のエッセイ「生きているTATEMONO 松本竣介を読む」は終了しました。
  「本との関係」などのエッセイのバックナンバーはコチラです。
 ・「美術館に瑛九を観に行く」は随時更新します。
 ・飯沢耕太郎のエッセイ「日本の写真家たち」英文版とともに随時更新します。
 ・浜田宏司のエッセイ「展覧会ナナメ読み」は随時更新します。
 ・深野一朗のエッセイは随時更新します。
 ・「久保エディション」(現代版画のパトロン久保貞次郎)は随時更新します。
 ・「殿敷侃の遺したもの」はゆかりの方々のエッセイ他を随時更新します。
 ・故・木村利三郎のエッセイ、70年代NYのアートシーンを活写した「ニューヨーク便り」の再録掲載は終了しました。
 ・故・針生一郎の「現代日本版画家群像」の再録掲載は終了しました。
 ・故・難波田龍起のエッセイ「絵画への道」の再録掲載は終了しました。
 ・森下泰輔のエッセイ「私のAndy Warhol体験」は終了しました。
 ・ときの忘れものでは2014年からシリーズ企画「瀧口修造展」を開催し、関係する記事やテキストを「瀧口修造の世界」として紹介します。土渕信彦のエッセイ「瀧口修造とマルセル・デュシャン」、「瀧口修造の箱舟」と合わせてお読みください。
 ・「現代版画センターの記録」は随時更新します。新たに1974年10月7日の「現代版画センターのエディション発表記念展」オープニングの様子を掲載しました。
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