「いとしの国ブータン紀行」第3回

アートフル勝山の会 荒井由泰

いよいよブータンの旅の話にはいるとしよう。ブータンとのお付き合いは長く、知識としてのブータンはあるものの、何せ初めてのブータンであり、それも一週間という短期間の旅で、とてもブータンの現状を語る資格はない。それでもあえて、マイ・ブータンを語ることとする。

ゾンが地域の中心
ブータンを訪れた人は必ず行く観光スポットが各地にあるゾンである。ゾンは寺院と行政府が一体となった複合施設であり、かつては軍事的な要塞としての機能をもっていた。ゾンは曼荼羅に象徴される仏教的世界観にならい造られており、回廊式で石畳の広場を持ち、木造部分にはシックな色合いで独特のデザインがほどこされ、まことに美しい。今回、パロ・ゾン(パロ)、ドゥゲ・ゾン(パロ近郊で現在廃墟になっている)、タシチョ・ゾン(ティンプー)、プナカ・ゾン(プナカ)を訪ねた。タシチョ・ゾンは王宮であり官公庁でもある国内最大規模の歴史的建築物だ。古都プナカにあるプナカ・ゾンはブータンで一番美しいゾンと言われ、二つの川の合流点にりりしく建っている。現在は県庁として使われている。ゾンに入るには厳しいドレスコードがある。ブータンの人達は民族衣装の着用が義務づけされている。我々観光客も帽子、Tシャツ的なものはだめで、えりがある長袖で、パンツ・スカートは足が見えるものはだめと結構厳しい。短パン・Tシャツでは中に入れぬ事件が起こるので要注意だ。建物の内部に入るときはカメラも禁止だ。

ドゥゲ・ゾン1ドゥゲ・ゾン


ドゥゲ・ゾン2


タシチョ・ゾン1タシチョ・ゾン


タシチョ・ゾン2


タシチョ・ゾン3


プナカ・ゾン1プナカ・ゾン


プナカ・ゾン2


プナカ・ゾン3


プナカ・ゾン4


プナカ・ゾン5


人を育てる:ブータンの教育
今回、パロでGaupel(ガウペル)という小中学校を訪れ、朝礼そして授業を見学することができた。この学校には8学年の630人が在籍していた。学校は義務教育化はされていないようだが、授業料は全て無料とのことだ。(学校に行かせるには親にはそれなりの出費はあるようだ。)午前8時すぎに学校に着いたが続々と子供たちが集まってきていた。彼らは制服として民族衣装を着ており(男子はゴ、女子はキラ)、とにかくかわいい。日本人とよく似ており、親しみがある。彼らにとっても日本人は親しみを感じるようで、少しシャイな様子だが、話をしてくれる。授業が英語で行われており、子供たちと英語でコミュニケーションできるのは楽しい。「将来の夢は?」とたずねると「女優」とか「医者」とか、返事が返ってきた。そして60歳をすぎた私に向かって「貴方のアンビションは何か?」と切りかえされたのには面食らったが、いくつになっても夢を持たねばならぬことを教えられた次第だ。

ガウペル小中学校1ガウペル小中学校


ガウペル小中学校2


ガウペル小中学校3


ガウペル小中学校4


ガウペル小中学校5


ガウペル小中学校の校庭には以下の様な言葉(英語で)が掲げられていた。うまく訳せないが、その点はお許しいただくとして・・・・(写真を参照ください)

ビジョン:個々人が教育され、創造的で、やさしく、心豊かな幸せな社会
ミッション:価値感や社会的責任を育てながら知識や技術を磨くことを通じてガウペルの生徒達の可能性を最大にする。その結果、生徒達は変化する世界への挑戦に対し勝利する。
重要な価値:1.自己鍛錬 2.チームワーク 3.尊敬の念
3つの信念:1.優秀な学力 2.生徒の個性(人間性)づくり 3.先生の能力向上

社会の一員として変革する世界に対応できる人づくりに対する強い気持ちがあふれている文言であり、感動した。学校の朝礼では全員が校庭に集まり、国歌斉唱そして祈りの言葉(けっこう長く、書いたものを読んでいた)、その後校長先生からの訓示もあったが、すべて英語で行われていた。また、授業も見せてもらったが、一年生から全て英語で授業が行われており、子供たちが英語を流ちょうに話せる訳が納得できた。ブータンの国語はゾンガであるが、世界の動きや情報を知り、先人達の知恵を学ぶには英語を通して勉強するのが一番の早道であるという理由もあるのだろう。

また、首都のティンプーでは障害児のための職業訓練施設(Drak-Tsho)も訪問した。ブータンにはこのような施設は全国に2カ所のみとのことだ。NGO(非政府組織)で運営されており、日本からの寄付もいただいているとのことであった。
まだまだ、障害のある人には厳しい社会のようだが、「スペシャルオリンピックでメダリストが出たこともあり、偏見が少なくなりつつあります」との校長先生の言葉が印象的であった。校長先生は女性でで、使命感をもって運営されていた。子供たちは年齢層も幅広く、また障害の程度もさまざまだが、自立に向けて、ブータンの伝統工芸品づくりの勉強、さらには販売用の商品作りに熱心に取り組んでいた。同行した我々は彼らが造った工芸品(バック、財布、織物、絵など)を少しでも運営の支えになればと競って買い求めた。パロの空港内にこの学校の生徒が造った工芸品を売る店舗があるのを帰国の際、見つけた。人々の優しい心で学校が支えられていることを実感して、嬉しい気持ちになった。

校長先生と(女性)校長先生と(女性)


障がい者のための学校にて障がい者のための学校にて


朝礼にて朝礼にて


伝統工芸に取り組む子供達1伝統工芸に取り組む子供達


伝統工芸に取り組む子供達2


伝統工芸に取り組む子供達3


(あらいよしやす

勝山左義長まつりプレミアムツアー(2016年2月28日~29日)
荒井さんが会頭をつとめる勝山商工会議所主催のツアーを12月10日のブログでご紹介しています。

●今日のお勧め作品は、駒井哲郎です。
20151219_komai_04_hana駒井哲郎
「花」
1965年
銅版(アクアチント)+手彩色
12.5×9.3cm
Ed.100
サインあり


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◆荒井由泰のエッセイ「いとしの国ブータン紀行」は毎月19日の更新です。

◆冬季休廊のお知らせ
2015年12月27日(日)―2016年1月4日(月)はギャラリーをお休みします。