闘病中だった美術評論家のヨシダ・ヨシエ先生が新年を迎えたばかりの1月4日にお亡くなりになりました。
86歳でした。

亭主がヨシダ先生の名を初めて知ったのは靉光を論じた『異端の画家たち』(共著、造形社 1969年刊)でした。
女性かと思ったその人(本名・吉田早苗)は、快活明朗、いつもちきんと身だしなみを調え帽子の似合うダンディな方でした。
現代版画センター以来、原稿や講演で随分とお世話になりましたが、特に1981年6月13日にギャラリー方寸で開催した第4回シンポジウム瑛九での講演は深く印象に残っています。
瑛九と靉光、瑛九と15年戦争について談論風発、瑛九の生きた時代に蔓延した”シュル・レアリスム風の絵画”を鋭く突いて、日本の前衛美術史を縦横無尽に語った様子(講演録)はいずれこのブログでも再録させていただきたいと思います。

世間的な栄誉にはまったく縁がなく、反骨を貫いたヨシダ先生は1950年代初めに「原爆の図」を携えて手弁当で全国を巡回して回ります。
丸木位里・俊夫妻が原爆投下直後の惨状を描いた連作絵画「原爆の図」によって、米軍占領下で知られることのなかった被爆の実態を多くの人たちが知ったのでした。

脳梗塞で倒れますが、必死にリハビリに励みます。
「ワタヌキさん、リハビリのために近所を歩くのだけれど、辛くて思わず道端の木に抱きついてボクは泣きました」
ようやく歩けるまでに回復された2007年3月、ときの忘れもので開催した「細江英公『春本・浮世絵うつし』オリジナル・プリント展」ではギャラリートークの講師をつとめてくださいました。
200703細江展
中央サングラスに帽子姿がヨシダ・ヨシエ先生、その左が細江英公先生。
2007年3月

200703細江展1
左から、スピーチするヨシダ先生、細江英公先生、社長
2007年3月

200703細江展3
ギャラリートークでのヨシダ先生
2007年3月

200703細江展4賢治撮影
踊る小林嵯峨さんと、ヨシダ先生
2007年3月
(撮影:細江賢治)

2008細江展ヨシダヨシエ四谷シモン
細江英公写真展―ガウディへの讃歌」オープニングにて
左から、岡部百合子、社長、四谷シモンさん、ヨシダ先生
2008年5月

長年のご厚誼に深謝し、謹んでご冥福をお祈りいたします。
ヨシダ先生、ありがとうございました。


『原罪の行方 最後の無頼派ヨシダ・ヨシエ』
細江英公人間写真集 原罪の行方 最後の無頼派ヨシダ・ヨシエ
2008年
窓社 発行
66ページ
30.3x23.4cm
テキスト:山口昌男、池田龍雄、細江英公
デザイン:馬淵晃
※細江英公、ヨシダ・ヨシエのサイン入り

細江英公「春本・浮世絵うつし」シリーズからいくつかご紹介します。
作品はときの忘れもにでいつでもご覧になれます。
2003年、江戸期の浮世絵画家や奇想の画家の絵をモチーフに、江戸の爛熟した文化と現代の舞踏家の肉体との融合をはかった「春本・浮世絵うつし」連作が撮影されました。
舞踏家・大野一雄と江戸の画家・曾我蕭白を静かに格闘させた細江作品です。
出演:元藤燁子、大野慶人、玉野黄市、井関由美子、入月 絢、岩間一美、大塚由香、クリスティーヌ、進野晶子、三上周子、南 由佳、宮下美々、村田麗薫、目黒大路、横田さや香
原案・演出・撮影:細江英公
20160125_008細江英公
「春本・浮世絵うつし #1-20」
2002年
フォトグラフ
Sheet size: 40.6x50.8cm
Ed.30
サインあり


20160125_012細江英公
「春本・浮世絵うつし #2-8」
2003年
フォトグラフ
Sheet size: 40.6x50.8cm
Ed.30
サインあり


20160125_025細江英公
「春本・浮世絵うつし #3-30」
2003年
フォトグラフ
Sheet size: 40.6x50.8cm
Ed.30
サインあり


20160125_031細江英公
「春本・浮世絵うつし #4-11」
2003年
フォトグラフ
Sheet size: 40.6x50.8cm
Ed.30
サインあり


20160125_036細江英公
「春本・浮世絵うつし #5-16」
2003年
フォトグラフ
Sheet size: 40.6x50.8cm
Ed.30
サインあり


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