先週末まで開催していた「ルイーズ・ニーヴェルスン展」はサイズが大きいので僅か7点しか展示できませんでした(実際には20数点のコレクションがあります)。
来廊者も少なく、静かな展覧会でしたが、亭主はじめスタッフにとってはニーヴェルスンの彫刻作品とは違った色彩の魅力を発見し、日々感動を新たにした二週間でした。
亭主がそう多くはない来場者に向かって「いいでしょう」を連発するものだから、その勢いに押されて購入者続出、までは行きませんでしたが、決算月で頭を抱える社長の顔にも少し笑顔が。
40年も前の作品を平然と展示し続けるときの忘れものでありますが(威張ってどうする)、次回も1970年代に制作された菅井汲先生の版画作品を展観する予定です。

クーデターの動きで混乱を続けるトルコで開催されていたユネスコ世界遺産委員会で、7カ国の17施設が「ル・コルビュジエの建築作品」として世界文化遺産に登録されることが決定しました。
上野の国立西洋美術館本館も含まれます。
貴重な建築遺産が次々と壊されていくことに懸念を抱く亭主としては、とても嬉しいニュースでした。
関係者の皆さんのご努力に敬意を表します。

昨年11月に開催した「建築家のドローイング展」でも展示したル・コルビュジエは、建築家として20世紀の三大巨匠と称えられるほどの大きな存在でしたが、一方画家としても(最初は画家を目指していた)、美術の前衛運動に参加し、建築家として名をなしてからも絵筆を離さず、数多くの絵画、彫刻、版画作品を制作しています。
今日ご紹介する1938年制作のリトグラフ「二人の女」は、建築の直線的、スマートな印象とは違い、ちょっとどろっとしたところのある作品です。
「ル・コルビュジエ展」で、彼の建築作品(図面や写真、模型)と美術作品(油彩、版画、彫刻)を比べてみると同じ人間が手がけたのかと思うほど、印象が異なるのはなぜでしょうか。
二人の女_2ル・コルビュジエ Le Corbusier
《二人の女》
1938年
リトグラフ
イメージサイズ:17.6×26.7cm
シートサイズ:38.5×50.2cm
Ed.100  Signed

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そして磯崎新のル・コルビュジエへのオマージュ
第2信より挿画5_A磯崎新
〈栖 十二〉第二信より
挿画5
ル・コルビュジエ[母の小さい家] 1923-24 レマン湖畔
1998年
銅版・手彩色・アルシュ紙
イメージサイズ:10.0×15.0cm
シートサイズ:28.5×38.0cm
Ed.8 Signed

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ル・コルビュジエ Le Corbusier (1887-1965)
建築家。スイスのジュラ地方ラ・ショー・ド・ファン生まれ。本名シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ。1906年初めての住宅[ファレ邸]を設計。1917年パリに出るが、翌年左目を失明する。『エスプリ・ヌーボー』の創刊に関わり、美術運動にも参加。1922年建築事務所設立。代表作[サヴォア邸][ロンシャン礼拝堂][ラ・トゥーレット修道院][国立西洋美術館]他。1965年水泳中にカプ・マルタンで死去(78歳)。
ライト、ミースと並ぶ20世紀建築界の巨匠はリトグラフによる詩画集『直角の詩』など多くの版画を残す。[近代建築の五原則]を提唱、近代建築国際会議(CIAM)メンバーとして近代建築理論の最大の指導者であった。油彩、彫刻、版画を多数制作している。

ル・コルビュジエの建築作品
20世紀の三大巨匠のうち、あのフランク・ロイド・ライトがアメリカと日本にしか実際の建築がないのに対し、ル・コルビュジエの建築作品は実に12カ国に存在しています。
ル・コルビュジエ_ロンシャンの礼拝堂[ロンシャンの礼拝堂(ノートルダム・デュ・オー礼拝堂)]
1955年竣工
フランス 
撮影:尾立麗子

フランスのオート=ソーヌ県ロンシャンに建つ後期の代表作。
元々ロンシャンは巡礼の地であり、中世に建てられて礼拝堂があったのですが、第二次世界大戦の際、ナチス・ドイツの空爆により破壊されました。戦後、ロンシャンのの人々は再建を願い、アラン・クチュリエ神父の推薦によりル・コルビュジエに設計が依頼され、1950年に設計が始まり、1955年に竣工しました。

国立西洋美術館3[国立西洋美術館]
1959年竣工
上野(東京都台東区)
撮影:尾立麗子

第二次世界大戦後、東京上野に松方コレクションはじめ西洋美術を収蔵するための美術館が設計されることになり、その設計がル・コルビュジエに依頼されました。日本におけるル・コルビュジエ唯一の実作で、弟子である前川國男、坂倉準三、吉阪隆正が実施設計・監理に協力し完成しました。
1959年竣工で、地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造り。1階正面の壁を取り払って柱のみにした「ピロティ」空間、人体に合わせた「モデュロール」という独特の寸法体系など、ル・コルビュジエの構想を典型的に示した建築と評価されています。本館は、2007年に国の重要文化財に指定されました。
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ちょうど、ル・コルビュジエの展覧会が二箇所で開催されます。
◆「ル・コルビュジエ ロンシャンの丘との対話 展 ル・コルビュジエの現場での息吹・吉阪隆正が学んだもの
会期:2016年6月29日(水)~8月7日(日)
会場:會津八一記念博物館
10:00~17:00(入場は16:30まで)
※金曜のみ10:00~18:00(入場は17:30まで)
閉館日:日曜・祝日
休日開館日:7月18日(月・祝)、8月7日(日)
入館料:無料
共催:早稲田大学理工学術院創造理工学部建築学科、理工学研究所、建築学研究所、會津八一記念博物館
企画:早稲田大学「ル・コルビュジエ ロンシャンの丘との対話」展実行委員会
問い合わせ先:waseda.lecorbusier@gmail.com╢
概要:モダニズムの巨匠、建築家ル・コルビュジエは、晩年に名作〈ロンシャンの礼拝堂とその建築群〉を計画しました。早稲田大学ル・コルビュジエ実測調査研究会は2013年度より〈ロンシャンの礼拝堂とその建築群〉の継続的調査を行なっています。早稲田大学の研究チームは礼拝堂完成後初めて、《巡礼者の家》と《司祭者の家》の実測調査を行い、さらに昨年には研究会を立ち上げ、礼拝堂本体の実測調査に着手しました。本展覧会では調査により制作した実測図を公開すると共に、《ロンシャンの礼拝堂》(ノートルダム・デュ・オー礼拝堂)に残されている、現場でル・コルビュジエが実際に使用した貴重な青写真を展示します。施工当時の建築家の息吹や、ロンシャンの丘全体との対話を感じることができると思います。会期中には現場の様子に詳しいジャン-フランソワ・マテ氏をロンシャンより招いて、シンポジウムも行います。
《ロンシャンの礼拝堂》の計画と同時期に、ル・コルビュジエのアトリエで学んだ吉阪隆正は、帰国後も早稲田大学建築学科で教鞭をとり、多くの建築家を育てました。滞仏中にル・コルビュジエのアトリエで吉阪自身が担当して描いた図面と日記帳を併せて展示し、ロンシャンの計画が始まろうとした当時、吉阪が何を学んだのかを探る手掛かりとしたいと思います。(同館HPより)

◆「ル・コルビュジエ主要建築作品‐2」展
会期: 1916年8月25日~(予定)
開館日時: 木・金・土曜日 10時~17時(日~水曜日)
会場: 大成建設ギャルリー・タイセイ
入場料: 無料
20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエ(1887~1965)が手掛けた建築作品のなかから、「近代建築運動への顕著な貢献」として、ユネスコの「世界文化遺産」への登録候補作品となっている主要な建築作品をご紹介いたします。
 建設されてから数十年の時を経て、技術的な目新しさはすでに無いですが、そこに盛り込まれた建築思想や、斬新なアイデア、総合芸術のために練られた独特な空間構成や造形感覚などは、現在見ても古さは感じられず、むしろ参考とすべき点があると思われます。今一度、ル・コルビュジエの優れた作品を見直し、その建築に込めた彼の情熱に触れる機会としたいと思います。
 現在、「世界文化遺産」の候補となっているのは7か国に所在する17資産。これらを「住宅」と「それ以外の用途の建築」の、2回に分けて展観いたします。
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世界文化遺産に登録されたル・コルビュジエの17の建築作品
―ロンシャン礼拝堂(フランス)
―サヴォワ邸(フランス)
―マルセイユのユニテ・ダビタシオン(フランス)
―フィルミニの文化と青少年の家(フランス)
―ペサックの集合住宅(フランス)
―サン・ディエ工場(フランス)
―ナンジュセール・エ・コリ通りのアパート(フランス)
―ラ・トゥーレットの修道院(フランス)
―ラ・ロッシュ・ジャンヌレ邸(フランス)
―カップ・マルタンの小屋(フランス)
―イムーブル・クラルテ(スイス)
―レマン湖畔の小さな家(スイス)
―クルチェット邸(アルゼンチン)
―ギエット邸(ベルギー)
―ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅(ドイツ)
―チャンディガールのキャンピトル・コンプレックス(インド)
―国立西洋美術館(日本)
合計7か国17施設
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「建築家の版画とドローイング」を看板に掲げているときの忘れものでは、2002年6月に「ル・コルビュジエ展」を開催して以来、コルビュジエの版画やドローイングを数多くご紹介してきました。
来年は、ル・コルビュジエに捧げる展覧会やエディションをぜひ実現したいと考えています。どうぞご期待ください。

●皆様にご協力いただいた「ここから熊本へ~地震被災者支援展」での売上げ総額634,500円は、一番被害の大きかった益城町でお年よりや子供たちのケアに尽力されている木山キリスト教会に400,000円を、熊本市の城下町の風情を残す唐人町で被災した築100年の商家(カフェアンドギャラリーなどが入居、一時は解体も検討された)の西村家の復興資金に234,500円を、それぞれ送金いたしました。
詳しくはコチラをお読みください。