H氏による作品紹介1
「ア」は「アカセガワ」の「ア」 ~赤瀬川原平~
*前のブログ(H氏の口上)に引き続き
というわけで赤瀬川原平翁である。赤瀬川原平といえば写真好きにとってはまずは「トマソン」である。伝説の写真雑誌「写真時代」に荒木経惟、森山大道、倉田精二、北島敬三といった錚々たる写真家たちの今や代表作となった作品と共に「超芸術トマソン」として連載され、読者からの「トマソン物件報告」との双方向の遣り取りは、紙媒体時代のSNSとでもいうべき活況を呈し一大ブームを引き起こした。
その経緯は今では『超芸術トマソン』(ちくま文庫)に収められているけれど、美術としての評価はまだまだこれからのように思う。評論家による理論武装と、ギャラリーと美術館と政府とのタッグによる国家戦略としての美術振興がバックにあれば、「梱包」のクリストを超えて、マルセル・デュシャン以後の最大の美術史上の事件となっておかしくない美術運動だと思っている。
すでに、赤瀬川原平の「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」や「ハイレッド・センター」の活動は海外でも評価されつつあり、「芸術とは何か」を巡って争われた日本の裁判史上に残る芸術裁判「千円札裁判」に際して制作された「零円札」がオークションで高額落札されるなど(「ときの忘れもの」2016年12月08日付ブログ参照)、GENPEI AKASEGAWAの評価はいよいよこれからである。とりあえず今手に入る作品は片端から手に入れるのが正しい。
Lot.2 赤瀬川原平
『通り抜けた家(トマソン黙示録より)』
1988年
オフセット印刷・凸版併用
I: 22.3x31.7cm
S: 35.4x51.4cm
Ed.50(46/50)
サイン有り
というわけでLot.2である。自分では、わが「ときの忘れもの」からチャリティーオークションか何かで購入したものとばかり思っていたのだが、調べてみるとこれが東京・八重洲のギャラリー不忍画廊の企画「コレクションへの勧め~7DAYSセール2003 Vol.Ⅰ」(2003/2/22~3/1)にて購入したものであることが判明。自分の「老人力」の力強い前進の勢いに目が眩むばかりである。
「ときの忘れもの」の取り扱い作家のお一人だし、ブログにも度々登場されているための勘違いであった。当時はなかなか市場では作品を手にすることができず、こうした企画の中にたまたまその名前を見つけてこつこつ集めるということしかできなかったのを今になって思い出す。
そもそも、日本の前衛美術家は市場に対して警戒的というかむしろ敵対的なところがあって、コマーシャルギャラリーを通して作品を世の中に送り出すという、世界的には最もスタンダードな方法がなかなか一般化しなかった。そのためその評価に時間がかかるということが多かったように思うが、「GUTAI」の例に漏れず、ネットの発達に伴って日本の前衛美術の評価はこれから加速度的に進むに違いない。
これは2018年02月13日付の「ときの忘れもの」ブログ「トマソン黙示録」にあるように、1988年に佐谷画廊から14点組、限定50部として刊行されたものの一つ(46/50)である。タイトルは「トマソン黙示録 より『通り抜けた家』」、1988年、オフセット印刷、エンボス、イメージサイズ:22.3x31.7cm、シートサイズ:35.4x51.4cm、Ed.46/50 Signed、ということになる。
コレクションの最初の一点として絶対のオススメである。
Lot.3 赤瀬川原平
『伸びる水色』
2001年
タイプCプリント
I: 35.6x43.3cm
S: 35.6x43.3cm
サイン有り
Lot.3は、一見そのようには見えないけれども実際には徹頭徹尾バリバリの前衛芸術家として「市場に流通するような作品は余り制作しなかった」赤瀬川原平翁の極めて貴重な(と言ってしまおう)写真作品。すでにお気づきのように、ライカ同盟写真集『東京涸井戸鏡』(アルファベータ、2002年)の4~5頁、「向島」のセクションに見開きで掲載されている「伸びる水色」(2001年)である。これは、これも今や伝説となってしまった中京大学アートギャラリーC・スクエア(名古屋)で2002年に「ライカ同盟 東京涸井戸鏡展」として展示されたもので、同年、東京の「現代美術製作所」(墨田)に巡回(?)した際に購入したものである。
購入を申し出たところ、「売った事がないので値段がついていない。一人では決められないので少し時間が欲しい」との返答をいただいて、いったいどれだけの値段がつくのだろう、買える値段だろうか、分割払いにしてもらえるだろうか、クレジットだと明細が送られてくるから隠さないとマズイetc、と悶々とする時間が続いた後、外出中に携帯に着信、126,000円との価格を提示されてほっと一息、考え直されたら困るので有り金をかき集めてその足で銀行のATMから代金を振り込んだ思い出の作品である。
他で展示する予定がないからということで、展示されていた現物(つまり1/1)が展覧会後に送られてきてびっくり。C・スクエアで展示する際に作家の指示のもと専門家によってプリントされたものなので、定義からして正真正銘のオリジナルプリントであり、遠からずしてヴィンテージプリントと呼ばれることになるはずである(えっへん!)。技法はタイプCプリント、イメージサイズは35.6x43.3cm、シートサイズは35.6x43.3cm。
ミュージアムピースといって良いはずの赤瀬川原平の写真作品である。この貴重な人類の遺産(!)を次の世代に手渡してくれるリレーのランナーを募る次第である。
(ところで残りの作品はいまどこでどうなっているのだろう。揃っていればそれこそ一財産のはずなのだが)(H)
◆ときの忘れものは「H氏写真コレクション展」を開催します。
会期:2019年7月9日(火)~7月13日(土)

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
「ア」は「アカセガワ」の「ア」 ~赤瀬川原平~
*前のブログ(H氏の口上)に引き続き
というわけで赤瀬川原平翁である。赤瀬川原平といえば写真好きにとってはまずは「トマソン」である。伝説の写真雑誌「写真時代」に荒木経惟、森山大道、倉田精二、北島敬三といった錚々たる写真家たちの今や代表作となった作品と共に「超芸術トマソン」として連載され、読者からの「トマソン物件報告」との双方向の遣り取りは、紙媒体時代のSNSとでもいうべき活況を呈し一大ブームを引き起こした。
その経緯は今では『超芸術トマソン』(ちくま文庫)に収められているけれど、美術としての評価はまだまだこれからのように思う。評論家による理論武装と、ギャラリーと美術館と政府とのタッグによる国家戦略としての美術振興がバックにあれば、「梱包」のクリストを超えて、マルセル・デュシャン以後の最大の美術史上の事件となっておかしくない美術運動だと思っている。
すでに、赤瀬川原平の「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」や「ハイレッド・センター」の活動は海外でも評価されつつあり、「芸術とは何か」を巡って争われた日本の裁判史上に残る芸術裁判「千円札裁判」に際して制作された「零円札」がオークションで高額落札されるなど(「ときの忘れもの」2016年12月08日付ブログ参照)、GENPEI AKASEGAWAの評価はいよいよこれからである。とりあえず今手に入る作品は片端から手に入れるのが正しい。
Lot.2 赤瀬川原平『通り抜けた家(トマソン黙示録より)』
1988年
オフセット印刷・凸版併用
I: 22.3x31.7cm
S: 35.4x51.4cm
Ed.50(46/50)
サイン有り
というわけでLot.2である。自分では、わが「ときの忘れもの」からチャリティーオークションか何かで購入したものとばかり思っていたのだが、調べてみるとこれが東京・八重洲のギャラリー不忍画廊の企画「コレクションへの勧め~7DAYSセール2003 Vol.Ⅰ」(2003/2/22~3/1)にて購入したものであることが判明。自分の「老人力」の力強い前進の勢いに目が眩むばかりである。
「ときの忘れもの」の取り扱い作家のお一人だし、ブログにも度々登場されているための勘違いであった。当時はなかなか市場では作品を手にすることができず、こうした企画の中にたまたまその名前を見つけてこつこつ集めるということしかできなかったのを今になって思い出す。
そもそも、日本の前衛美術家は市場に対して警戒的というかむしろ敵対的なところがあって、コマーシャルギャラリーを通して作品を世の中に送り出すという、世界的には最もスタンダードな方法がなかなか一般化しなかった。そのためその評価に時間がかかるということが多かったように思うが、「GUTAI」の例に漏れず、ネットの発達に伴って日本の前衛美術の評価はこれから加速度的に進むに違いない。
これは2018年02月13日付の「ときの忘れもの」ブログ「トマソン黙示録」にあるように、1988年に佐谷画廊から14点組、限定50部として刊行されたものの一つ(46/50)である。タイトルは「トマソン黙示録 より『通り抜けた家』」、1988年、オフセット印刷、エンボス、イメージサイズ:22.3x31.7cm、シートサイズ:35.4x51.4cm、Ed.46/50 Signed、ということになる。
コレクションの最初の一点として絶対のオススメである。
Lot.3 赤瀬川原平『伸びる水色』
2001年
タイプCプリント
I: 35.6x43.3cm
S: 35.6x43.3cm
サイン有り
Lot.3は、一見そのようには見えないけれども実際には徹頭徹尾バリバリの前衛芸術家として「市場に流通するような作品は余り制作しなかった」赤瀬川原平翁の極めて貴重な(と言ってしまおう)写真作品。すでにお気づきのように、ライカ同盟写真集『東京涸井戸鏡』(アルファベータ、2002年)の4~5頁、「向島」のセクションに見開きで掲載されている「伸びる水色」(2001年)である。これは、これも今や伝説となってしまった中京大学アートギャラリーC・スクエア(名古屋)で2002年に「ライカ同盟 東京涸井戸鏡展」として展示されたもので、同年、東京の「現代美術製作所」(墨田)に巡回(?)した際に購入したものである。
購入を申し出たところ、「売った事がないので値段がついていない。一人では決められないので少し時間が欲しい」との返答をいただいて、いったいどれだけの値段がつくのだろう、買える値段だろうか、分割払いにしてもらえるだろうか、クレジットだと明細が送られてくるから隠さないとマズイetc、と悶々とする時間が続いた後、外出中に携帯に着信、126,000円との価格を提示されてほっと一息、考え直されたら困るので有り金をかき集めてその足で銀行のATMから代金を振り込んだ思い出の作品である。
他で展示する予定がないからということで、展示されていた現物(つまり1/1)が展覧会後に送られてきてびっくり。C・スクエアで展示する際に作家の指示のもと専門家によってプリントされたものなので、定義からして正真正銘のオリジナルプリントであり、遠からずしてヴィンテージプリントと呼ばれることになるはずである(えっへん!)。技法はタイプCプリント、イメージサイズは35.6x43.3cm、シートサイズは35.6x43.3cm。
ミュージアムピースといって良いはずの赤瀬川原平の写真作品である。この貴重な人類の遺産(!)を次の世代に手渡してくれるリレーのランナーを募る次第である。
(ところで残りの作品はいまどこでどうなっているのだろう。揃っていればそれこそ一財産のはずなのだが)(H)
◆ときの忘れものは「H氏写真コレクション展」を開催します。
会期:2019年7月9日(火)~7月13日(土)

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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