亭主の私事で恐縮ですが、先日母校高崎高校のマンドリン・オーケストラ(TMO)の定期演奏会に行ってきました。
ずいぶん前から難聴で指揮者の声すら聞こえなくなり、舞台からは引退しましたが、毎年夏の定演には裏方として受付でお客さんを迎えています。

TMO第52回定期演奏会プログラム
2019年7月15日
会場:群馬音楽センター
群馬音楽センターはアントニン・レーモンドの設計により1961年に竣工しました。亭主が高校一年のときでした。以来私たちの演奏会の多くはここで開催されてきました。
日本に於けるモダニズム建築の代表作の一つであり、構造形式は最大スパン60mの鉄筋コンクリート折板構造で、内部は地下1階・地上2階で構成されています。竣工の前年1960年創立のTMOにとってはホームグラウンドともいうべき場所であり、多くの思い出がつまっています。

磯崎新先生をして「日本におけるモダニズムのもっとも良質な部分をこの建物でみることができる。」と言わしめた名作です。
施工したのは井上工業、今はない群馬の名門企業でした。
本日7月27日は文化のパトロンと謳われた井上房一郎さんの命日です(1898年5月13日生まれ - 1993年7月27日没)。
井上さんは群馬を代表する実業人でしたが、音楽、美術、哲学、工芸に高い識見をもち、多くの優れた作家や建築家を支援しました。歌舞伎の玉三郎の才能を見出し初代後援会長を務めたのも井上さんでした。
その業績の一端をしめす展覧会「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」が高崎市美術館から巡回スタートし、現在宮城県の東北歴史博物館で開催されています。来年はパナソニック 汐留ミュージアム(東京)で開催されます。
特別展「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」
会期:2019年7月13日(土)~9月1日(日)
会場:東北歴史博物館
〒985-0862 宮城県多賀城市高崎1-22-1
TEL:022-368-0106

ブルーノ・タウト,井上房一郎,アントニン・レーモンド,剣持勇,ジョージ・ナカシマ,イサム・ノグチなど,1930年代から1950年代にかけて日本のモダンデザインに影響を与えた人々が取り上げられています。
~~~~~~
井上さんについては亡くなるまで助手を務めた熊倉浩靖さんのエッセイ「井上房一郎先生 生誕120年にあたって」をお読みいただきたいのですが、井上さんが親交し、協働した建築家にはブルーノ・タウト、アントニン・レーモンド、そして磯崎新先生らがいます。
1929年(昭和4)フランスから帰国し、家業を継ぐ身となった井上さんの歩みを年譜から拾うと、
1933(昭和8)群馬県輸出工芸協会を設立し理事長となる。夏、軽井沢でミラテスの名で井上工芸研究所の製品を外国人相手に売り始める。ミラテスとはラテン語で<布地を鑑賞>する意で、硲伊之助夫人の命名。レーモンド夫妻と出会う。
1934(昭和9)ナチスを逃れてブルーノ・タウトが来日。支援者たちの依頼で井上工芸研究所顧問として高崎にタウトを迎える。タウトはトルコに去るまでを井上さんが用意した少林山達磨寺境内洗心亭で過ごす。
同年、高崎音楽協会を結成、副会長となる。
1935(昭和10)銀座西六丁目の滝山町ビル一階にミラテスを開店。
銀座・ミラテス外観、店内設計はブルーノ・タウト
1936(昭和11)タウトは日本を去りトルコへ向かう(1938年イスタンブールで死去、58歳)。
1937(昭和12)レーモンドが日本を去りアメリカに滞在。
1938(昭和13)父保三郎が死去。井上工業㈱代表取締役社長に就任。
1945(昭和20)敗戦。11月高崎市民オーケストラ設立。井上さんの仲人だった有島生馬の甥・山本直忠が指揮者に就任。翌年 群馬フィルハーモニーオーケストラ(現・群馬交響楽団)に改称し、会長に就任。
1948(昭和23)レーモンドが再来日 。
1952(昭和27) 麻布笄町にあったレーモンド自邸を模して高崎に井上邸を竣工。
旧・井上房一郎邸(2018年撮影:塩野哲也)
1961(昭和36)レーモンド設計による群馬音楽センター竣工。
群馬音楽センター(2018年撮影:新澤悠)
1965(昭和40)高崎の井上工業内にファンデーションギャラリー設立。
1970(昭和45)レーモンド離日(1975年死去)。
1974(昭和49)磯崎新設計による群馬県立近代美術館竣工。
群馬県立近代美術館(2018年撮影:塩野哲也)
1983(昭和58)群馬県六合村に「くれさか芸術区」を開き、 高崎の井上邸と同じ建物を竣工。
1993(平成5)7月27日 死去、95歳。9月群馬音楽センターで群馬交響楽団の追悼演奏で送られる。
1998(平成10)群馬県立近代美術館と高崎市美術館で「パトロンと芸術家ー井上房一郎の世界ー」が開催される。

~~~~~~
昨年は、井上さんの生誕120年だったこともあり、6月にときの忘れもの主催で「高崎市のレーモンド建築ツアー」を開催しました。ツアーに参加した<月刊WEBマガジン Colla:J(コラージ)>(塩野哲也さん)が当日のツアーの様子や井上房一郎さんが関与した高崎の文化的資産について、綿密な調査取材をもとに、コラージ愛逢月「Session in TAKASAKI 井上房一郎の描いた絵」を発行されましたので、ぜひお読みください。
<桂離宮の美を再発見したといわれるブルーノ・タウト。
ナチスから逃れ日本に滞在した3年半のうち、
実に2年以上を群馬県・高崎の禅寺で過ごした事をご存知でしょうか。
その滞在をサポートした人物が井上房一郎です。
高崎の工芸運動を指導し、レーモンド設計の群馬音楽センターや
磯崎 新の群馬県立近代美術館を立案した先鋭的な文化の推進者でした。
希代のパトロンの生涯を通して、都市文化醸成の過程をたどります。
編集思考室シオング「Colla:J」編集局
編集兼発行人 塩野哲也>
画面をクリックしてください。

<特集 :Session in TAKASAKI 井上房一郎の描いた絵
群馬県立近代美術館 磯崎新
タウトの暮らした禅寺 少林山達磨寺
高崎文化の発信源 旧井上房一郎邸
群馬音楽センター アントニン・レーモンド>
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
●本日のお勧め作品は磯崎新です。
磯崎新 "MUSEUM-I"(群馬県立近代美術館)
1983年 シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:55.0x55.0cm
シートサイズ:90.0x63.0cm
Ed.75 サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆ときの忘れものは8月11日(日)~8月19日(月)まで夏季休廊いたします。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
ずいぶん前から難聴で指揮者の声すら聞こえなくなり、舞台からは引退しましたが、毎年夏の定演には裏方として受付でお客さんを迎えています。

TMO第52回定期演奏会プログラム
2019年7月15日
会場:群馬音楽センター
群馬音楽センターはアントニン・レーモンドの設計により1961年に竣工しました。亭主が高校一年のときでした。以来私たちの演奏会の多くはここで開催されてきました。
日本に於けるモダニズム建築の代表作の一つであり、構造形式は最大スパン60mの鉄筋コンクリート折板構造で、内部は地下1階・地上2階で構成されています。竣工の前年1960年創立のTMOにとってはホームグラウンドともいうべき場所であり、多くの思い出がつまっています。
磯崎新先生をして「日本におけるモダニズムのもっとも良質な部分をこの建物でみることができる。」と言わしめた名作です。
施工したのは井上工業、今はない群馬の名門企業でした。
本日7月27日は文化のパトロンと謳われた井上房一郎さんの命日です(1898年5月13日生まれ - 1993年7月27日没)。
井上さんは群馬を代表する実業人でしたが、音楽、美術、哲学、工芸に高い識見をもち、多くの優れた作家や建築家を支援しました。歌舞伎の玉三郎の才能を見出し初代後援会長を務めたのも井上さんでした。
その業績の一端をしめす展覧会「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」が高崎市美術館から巡回スタートし、現在宮城県の東北歴史博物館で開催されています。来年はパナソニック 汐留ミュージアム(東京)で開催されます。
特別展「モダンデザインが結ぶ暮らしの夢」
会期:2019年7月13日(土)~9月1日(日)
会場:東北歴史博物館
〒985-0862 宮城県多賀城市高崎1-22-1
TEL:022-368-0106

ブルーノ・タウト,井上房一郎,アントニン・レーモンド,剣持勇,ジョージ・ナカシマ,イサム・ノグチなど,1930年代から1950年代にかけて日本のモダンデザインに影響を与えた人々が取り上げられています。
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井上さんについては亡くなるまで助手を務めた熊倉浩靖さんのエッセイ「井上房一郎先生 生誕120年にあたって」をお読みいただきたいのですが、井上さんが親交し、協働した建築家にはブルーノ・タウト、アントニン・レーモンド、そして磯崎新先生らがいます。
1929年(昭和4)フランスから帰国し、家業を継ぐ身となった井上さんの歩みを年譜から拾うと、
1933(昭和8)群馬県輸出工芸協会を設立し理事長となる。夏、軽井沢でミラテスの名で井上工芸研究所の製品を外国人相手に売り始める。ミラテスとはラテン語で<布地を鑑賞>する意で、硲伊之助夫人の命名。レーモンド夫妻と出会う。
1934(昭和9)ナチスを逃れてブルーノ・タウトが来日。支援者たちの依頼で井上工芸研究所顧問として高崎にタウトを迎える。タウトはトルコに去るまでを井上さんが用意した少林山達磨寺境内洗心亭で過ごす。
同年、高崎音楽協会を結成、副会長となる。
1935(昭和10)銀座西六丁目の滝山町ビル一階にミラテスを開店。
銀座・ミラテス外観、店内設計はブルーノ・タウト1936(昭和11)タウトは日本を去りトルコへ向かう(1938年イスタンブールで死去、58歳)。
1937(昭和12)レーモンドが日本を去りアメリカに滞在。
1938(昭和13)父保三郎が死去。井上工業㈱代表取締役社長に就任。
1945(昭和20)敗戦。11月高崎市民オーケストラ設立。井上さんの仲人だった有島生馬の甥・山本直忠が指揮者に就任。翌年 群馬フィルハーモニーオーケストラ(現・群馬交響楽団)に改称し、会長に就任。
1948(昭和23)レーモンドが再来日 。
1952(昭和27) 麻布笄町にあったレーモンド自邸を模して高崎に井上邸を竣工。
旧・井上房一郎邸(2018年撮影:塩野哲也)1961(昭和36)レーモンド設計による群馬音楽センター竣工。
群馬音楽センター(2018年撮影:新澤悠)1965(昭和40)高崎の井上工業内にファンデーションギャラリー設立。
1970(昭和45)レーモンド離日(1975年死去)。
1974(昭和49)磯崎新設計による群馬県立近代美術館竣工。
群馬県立近代美術館(2018年撮影:塩野哲也)1983(昭和58)群馬県六合村に「くれさか芸術区」を開き、 高崎の井上邸と同じ建物を竣工。
1993(平成5)7月27日 死去、95歳。9月群馬音楽センターで群馬交響楽団の追悼演奏で送られる。
1998(平成10)群馬県立近代美術館と高崎市美術館で「パトロンと芸術家ー井上房一郎の世界ー」が開催される。

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昨年は、井上さんの生誕120年だったこともあり、6月にときの忘れもの主催で「高崎市のレーモンド建築ツアー」を開催しました。ツアーに参加した<月刊WEBマガジン Colla:J(コラージ)>(塩野哲也さん)が当日のツアーの様子や井上房一郎さんが関与した高崎の文化的資産について、綿密な調査取材をもとに、コラージ愛逢月「Session in TAKASAKI 井上房一郎の描いた絵」を発行されましたので、ぜひお読みください。
<桂離宮の美を再発見したといわれるブルーノ・タウト。
ナチスから逃れ日本に滞在した3年半のうち、
実に2年以上を群馬県・高崎の禅寺で過ごした事をご存知でしょうか。
その滞在をサポートした人物が井上房一郎です。
高崎の工芸運動を指導し、レーモンド設計の群馬音楽センターや
磯崎 新の群馬県立近代美術館を立案した先鋭的な文化の推進者でした。
希代のパトロンの生涯を通して、都市文化醸成の過程をたどります。
編集思考室シオング「Colla:J」編集局
編集兼発行人 塩野哲也>
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<特集 :Session in TAKASAKI 井上房一郎の描いた絵
群馬県立近代美術館 磯崎新
タウトの暮らした禅寺 少林山達磨寺
高崎文化の発信源 旧井上房一郎邸
群馬音楽センター アントニン・レーモンド>
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)
群馬県立近代美術館(撮影:塩野哲也)●本日のお勧め作品は磯崎新です。
磯崎新 "MUSEUM-I"(群馬県立近代美術館)1983年 シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:55.0x55.0cm
シートサイズ:90.0x63.0cm
Ed.75 サインあり
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◆ときの忘れものは8月11日(日)~8月19日(月)まで夏季休廊いたします。
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TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
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