光嶋裕介「コロナ禍と近況報告」

<綿貫さま、こんにちは、光嶋裕介です。
ご連絡、ありがとうございます。
本当に大変なことになりましたね。
随分前から東京・神戸の2拠点生活をしており、
毎週のように新幹線(年間100回程度)に
乗って行き来している者として
それぞれの都市の空気の違いには、関西弁が聞こえるとか、
エスカレーターのどっち側に立つのかとか、敏感ですが、
このコロナ禍はそんな都市間のことも一切関係なく、
グローバル化した現代においては、
全世界にのしかかる不条理のなか
これからどのように生きていけば良いのか、
じっくり考え直す「時間」をもらったと思っています。
つまり、なにをしたら自分と家族を守り、
多くの人が幸せになれるかという
実に難しい問いを正面から考える日々を過ごしております。
ひとつ言えることは、政府にしろ、何にしろ、
あまり他人を頼っていては「生き延びられない」のではないか。
しっかり情報収集し、自分の身体感覚(心の直感)を頼りに
ちゃんと危機感と覚悟をもって判断すること。
それには、まず当事者意識をもって、
能動的に責任ある行動をすること。
その時に、自分自身の小さな欲望を満たすことよりも、
利他的に振る舞うことができたら、どれだけ良いか…。
「自分さえ良ければいい」ということでは、
資本主義や民主主義といった大きなシステムでさえ危ういことは、
環境汚染、温暖化など悲鳴を上げ続けている地球を見れば一目瞭然だ。
今こそ、世界が連帯しないといけないのではないか。
待っていても勝手に連帯しない。アクションしなければならない。
正確に危機感を共有し、ひとりで何とかするのではなく、
みんなで知恵を出し合って、
集団として生き延びる力を上げる総力戦なんだと感じている。
人間は弱い存在であり、決して一人では生きられない。
理解し得ない他者とも連帯することができれば、
乗り越えられるはずだ。
一人ひとりが今できることをやる。
競争し、排斥し、分断するのではなく、
身近なところから協力し、助け合い、連帯すること。
ほんの少しの「他者への想像力」があれば、できると信じたい。
僕は、建築家として今つくっている建築を完成させること。
3蜜を避けて、安全に現場を監理するし、
多くの人の居場所となるような建築をつくる。
そのほかは、なるべく家で過ごす。ステイ・ホーム。
2月に一軒家に引っ越して、1階が建築事務所兼アトリエとなり、
職住一致したことは、偶然だが、とても運が良かった。
4歳の娘との貴重な時間は、いつも学びに満ちている。
双方の学びである。教えているようで、教えられている。
料理をつくり、一緒に絵を描いて、いっぱい遊ぶ。
一人の時間にたくさん本を読み、作品を制作する。
時々、気分転換に近所を散策する。ソーシャル・ディスタンス。
コロナ禍が教えてくれたのは、
なにも「あたりまえ」ではないということだ。
そして、コロナの前と後とでは、世界は違った風景をしている。
やはり、すべてのことが人とモノとコトの関係性の中で存在し、
人と人の関係だけでなく、人と地球との関係が
今こそ問われているように思えてならない。
建築家として今できることを深く思考し、実践すること。
それは「つくる」ことだ。
いのちの大切さが問われている今、
芸術の本質を発揮し、文化の力によって、
この「つくる喜び」を再発見できないだろうか。
そのためにも、自分の心身を鍛え、
家族を守り、利他的に振る舞うことを目指したい。
そして、いつ終わるか全く見えない難局をしっかりと乗り越えて、
またみんなで笑って過ごせることを切に願っている。
そんな家の中でのモヤモヤを、少しでも前向きな生命力に変えて、
今宵も、和紙の上にペンを走らせています。
またいつの日か、そう遠くないいつの日か、
みなさんに新作を観てもらえることを信じて。>
20200419/光嶋裕介(建築家)

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上記2点は光嶋さんの最新のドローイング

光嶋裕介 Yusuke KOSHIMA(1979-)
建築家。一級建築士。1979年米国ニュージャージー州生。1987年に日本に帰国。以降、カナダ(トロント)、イギリス(マンチェスター)、東京で育ち、最終的に早稲田大学大学院修士課程建築学を2004年に卒業。同年にザウアブルッフ・ハットン・アーキテクツ(ベルリン)に就職。2008年にドイツより帰国し、光嶋裕介建築設計事務所を主宰。
神戸大学で客員准教授。早稲田大学などで非常勤講師。内田樹先生の凱風館を設計し、完成と同時に合気道入門(二段)。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーの舞台デザインを担当。著作に『幻想都市風景』、『みんなの家。』、『建築武者修行』、『これからの建築』など。2020年3月に『増補 みんなの家。』が筑摩書房より、文庫化される。

●本日のお勧め作品は安藤忠雄です。
andou-29_full安藤忠雄 Tadao ANDO
《住吉の長屋》※画像をクリックすると拡大
2017年 ドローイング(紙に鉛筆、墨)
21.0×109.6cm Signed
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◎昨日読まれたブログ(archive)/1982年03月22日|美学校第3回シルクスクリーンプリントシンポジウム
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