「日本建築」で世界旅行!
髙木愛子
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館第2回企画展
「日本を超えた日本建築 - Beyond Japan - 」
会期:2020年3月20日(金・祝)~11月29日(日)【会期延長】
会場:谷口吉郎・吉生記念金沢建築館
出展者(敬称略):安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、隈研吾、SANAA、谷口吉生、坂茂、槇文彦
和食、ファッション、音楽、アニメーションなど、現代の日本文化は様々な分野で、広く世界から注目を集めています。「クールジャパン」などの言葉ができるほど、私たちもそのことを誇りに思い、活かしていこうとする動きが活発です。一方で日本の建築文化は、どうでしょうか。世界を見渡すと、ビッグプロジェクトの数々を日本の建築家が設計し、高く評価されていますが、そのことについて日本国内ではあまり知られていないように感じます。
そうした動機から、本展の企画はスタートしました。ここで取り上げる「日本建築」は、歴史的な伝統建築ではなく、「日本をベースとする現代建築」のことを指しています。日本国内でも現役で活躍中の建築家の海外作品が、日本を超えて世界の建築文化を刺激し続けていることを感じていただくことが本展の目的です。
誠にありがたいことに、日本を代表する建築家の皆様がご出展くださいました。各事務所からお借りした建築模型と映像、そして本展のためにご制作いただいたプレゼンテーションボートにより、8作品それぞれ個性的な展示となっています。この場をお借りして展示の様子を少しだけご紹介したいと思います。

安藤忠雄:シカゴのギャラリー[ライトウッド659](アメリカ)/2018年
レンガ造のアパートをギャラリーに改造したプロジェクト。歴史を刻んだ赤レンガの外壁と、安藤氏の代名詞ともいえる打ちっ放しコンクリート壁の対比と調和が美しく、空間へ誘われるような感覚を覚えます。

磯崎 新:ウフィッツィ・ロッジア(イタリア)/1998年~
ウフィッツィ美術館の新玄関計画。今回の展示の中では唯一未完成の作品です。会場内でひときわ目を引き付けるプレゼンテーションボードには、この作品について報じた海外メディアの記事がコラージュされています。

伊東豊雄:台中国家歌劇院(台湾)/2016年
大小3つの劇場をはじめ、ショップやレストラン、ギャラリーなどを有する複合施設。針金でつくられたエスキス模型が、洞窟のような内部空間を分かりやすく伝えています。また、手作業で進められた施工映像も見ごたえがあります。

隈 研吾:ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ(イギリス)/2018年
日本国内では「木」の印象の強い隈氏による、崖のような外観のデザイン・ミュージアム。スコットランドの荒々しい地層からヒントを得たとのこと。プレゼンテーションボードには隈氏の他の建築作品も紹介され、様々な素材と構成を比較することができます。

SANAA:ルーブル=ランス(フランス)/2012年
石炭炭坑の跡地に建てられたルーブル美術館の別館。シンプルに平面図のみのプレゼンテーションボードとアクリル模型が、とても目を引くリリカルな展示です。この「主張しない透明感」がまさに作品のコンセプトを表現しているようです。

谷口吉生:ニューヨーク近代美術館[MoMA](アメリカ)/2004年
進化する美術館MoMAの増改築プロジェクト。プレゼンテーションボードに紹介されているMoMAの歩みと、精巧に作り込まれた模型を比較しながら、歴史が保存・継承された部分と新しく生まれ変わった部分を探してみてください。

坂 茂:オメガ・スウォッチ本社(スイス)/2019年
世界的時計ブランドの世界最大級の木造本社。全体模型と精巧な部分模型から、ツチノコのような不思議な造形とその巨大さが分かります。これが木造で建てられたことに驚くとともに、これからの木造の可能性を感じます。

槇 文彦:4ワールド・トレード・センター(アメリカ)/2015年
9.11の悲劇の地に建つ追悼の建築。「鏡」と表現されるこの建築の様子を、ぜひ映像でご覧ください。空と街を写し込んで、巨大な高層建築が姿を消す瞬間に驚くとともに、不思議と厳かな気持ちが湧き上がってきます。
また本展では監修として、ワシントン大学のケン・タダシ・オオシマ教授と、京都工芸繊維大学の松隈洋教授にご協力をいただきました。自然環境も建築をつくりあげる社会環境も異なる海外で、なぜ「日本建築」が選ばれるのか。出展作品を実際に訪れ体感されているオオシマ教授に、それぞれの作品の魅力や評価など、海外からの第三者の視点を加えていただいています。そして松隈教授は、こうした日本の建築家たちの世界での活躍について、歴史的な考察を行ってくださいました。会場の最奥で展示している約一世紀分の動向をまとめた年表からは、前川國男や坂倉準三、丹下健三などの第一世代が、ヨーロッパを中心に巻き起こるモダニズム建築の潮流に敏感に反応して果敢に海外へ挑戦した様子が、そしてまさに第二世代ともいえる今回ご出展いただいている建築家によって花開いていく様子がうかがえます。今後ますますグローバル化する世界の中で、「日本建築」がどのような展開を見せていくのか、引き続きご注目いただければ幸いです。
本展は新型コロナウィルスの足音が聞こえ始めた2020年3月20日にスタートしました。残念ながらその後急速に感染が拡大し、約2か月間の臨時休館を余儀なくされました。そこで本展会期を11月29日まで延期いたします。(旧会期:8月30日まで)詳細は当館ホームページをご確認ください。
コロナ禍で海外旅行はまだまだ難しい日々が続きますが、世界各地の建築作品が集う本展を、ぜひ世界旅行する気分でお楽しみいただければと思います。皆様のご来館をお待ちいたしております。
掲載写真:下家康弘
(たかぎ あいこ)
■髙木 愛子 Aiko Takagi
1983年東京生まれ。日本大学大学院理工学研究科建築学専攻前期課程修了。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期史学専攻博物館学コース単位取得満期退学。
国立科学博物館産業技術史資料情報センター、東京農工大学科学博物館、国立近現代建築資料館を経て、2019年より谷口吉郎・吉生記念金沢建築館に勤務。
●展覧会のご案内


第2回企画展「日本を超えた日本建築― Beyond Japan―」
会期:2020年3月20日(金・祝)~11月29日(日)【会期延長】
会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館(石川県金沢市寺町5-1-18)
作家:安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、隈研吾、SANAA、谷口吉生、坂茂、槇文彦
第2回特別展「日本を超えた日本建築―Beyond Japan―」では、日本を超えて世界の異なる環境や社会の中で、ふさわしい建築として称賛されている、日本を代表する建築家の8作品を模型や映像、写真で紹介します。
昭和初期に初めて日本の建築家によって外国に建てられた日本建築は、今や世界が認めるグローバルな建築となって、世界の建築文化に刺激を与え続けています。本特別展では、これらの「日本を超えた日本建築」ともいえる作品をとおして、現代建築の新しい潮流と建築の未来について考えます。(HPより)
●こちらのブログもご覧ください。
「鈴木大拙館と谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館を訪ねました」
●本日のお勧め作品は安藤忠雄です。
安藤忠雄 Tadao ANDO
「ピノー美術館」
2003年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:36.0x86.0cm
シートサイズ:65.5x90.0cm
Ed.15 サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆「開廊25周年 第1回ときの忘れものエディション展―建築家たち」
会期=2020年7月21日[火]―8月8日[土]

ときの忘れものはこの6月に開廊25周年を迎えることができました。展覧会の企画と版画の版元として今日まで歩んでこれた感謝をこめて、25年間にエディションした建築家5人(安藤忠雄、石山修武、磯崎新、光嶋裕介、六角鬼丈)の版画を展示し、動画を撮影、YouTubeに公開します。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
髙木愛子
谷口吉郎・吉生記念金沢建築館第2回企画展
「日本を超えた日本建築 - Beyond Japan - 」
会期:2020年3月20日(金・祝)~11月29日(日)【会期延長】
会場:谷口吉郎・吉生記念金沢建築館
出展者(敬称略):安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、隈研吾、SANAA、谷口吉生、坂茂、槇文彦
和食、ファッション、音楽、アニメーションなど、現代の日本文化は様々な分野で、広く世界から注目を集めています。「クールジャパン」などの言葉ができるほど、私たちもそのことを誇りに思い、活かしていこうとする動きが活発です。一方で日本の建築文化は、どうでしょうか。世界を見渡すと、ビッグプロジェクトの数々を日本の建築家が設計し、高く評価されていますが、そのことについて日本国内ではあまり知られていないように感じます。
そうした動機から、本展の企画はスタートしました。ここで取り上げる「日本建築」は、歴史的な伝統建築ではなく、「日本をベースとする現代建築」のことを指しています。日本国内でも現役で活躍中の建築家の海外作品が、日本を超えて世界の建築文化を刺激し続けていることを感じていただくことが本展の目的です。
誠にありがたいことに、日本を代表する建築家の皆様がご出展くださいました。各事務所からお借りした建築模型と映像、そして本展のためにご制作いただいたプレゼンテーションボートにより、8作品それぞれ個性的な展示となっています。この場をお借りして展示の様子を少しだけご紹介したいと思います。

安藤忠雄:シカゴのギャラリー[ライトウッド659](アメリカ)/2018年
レンガ造のアパートをギャラリーに改造したプロジェクト。歴史を刻んだ赤レンガの外壁と、安藤氏の代名詞ともいえる打ちっ放しコンクリート壁の対比と調和が美しく、空間へ誘われるような感覚を覚えます。

磯崎 新:ウフィッツィ・ロッジア(イタリア)/1998年~
ウフィッツィ美術館の新玄関計画。今回の展示の中では唯一未完成の作品です。会場内でひときわ目を引き付けるプレゼンテーションボードには、この作品について報じた海外メディアの記事がコラージュされています。

伊東豊雄:台中国家歌劇院(台湾)/2016年
大小3つの劇場をはじめ、ショップやレストラン、ギャラリーなどを有する複合施設。針金でつくられたエスキス模型が、洞窟のような内部空間を分かりやすく伝えています。また、手作業で進められた施工映像も見ごたえがあります。

隈 研吾:ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ(イギリス)/2018年
日本国内では「木」の印象の強い隈氏による、崖のような外観のデザイン・ミュージアム。スコットランドの荒々しい地層からヒントを得たとのこと。プレゼンテーションボードには隈氏の他の建築作品も紹介され、様々な素材と構成を比較することができます。

SANAA:ルーブル=ランス(フランス)/2012年
石炭炭坑の跡地に建てられたルーブル美術館の別館。シンプルに平面図のみのプレゼンテーションボードとアクリル模型が、とても目を引くリリカルな展示です。この「主張しない透明感」がまさに作品のコンセプトを表現しているようです。

谷口吉生:ニューヨーク近代美術館[MoMA](アメリカ)/2004年
進化する美術館MoMAの増改築プロジェクト。プレゼンテーションボードに紹介されているMoMAの歩みと、精巧に作り込まれた模型を比較しながら、歴史が保存・継承された部分と新しく生まれ変わった部分を探してみてください。

坂 茂:オメガ・スウォッチ本社(スイス)/2019年
世界的時計ブランドの世界最大級の木造本社。全体模型と精巧な部分模型から、ツチノコのような不思議な造形とその巨大さが分かります。これが木造で建てられたことに驚くとともに、これからの木造の可能性を感じます。

槇 文彦:4ワールド・トレード・センター(アメリカ)/2015年
9.11の悲劇の地に建つ追悼の建築。「鏡」と表現されるこの建築の様子を、ぜひ映像でご覧ください。空と街を写し込んで、巨大な高層建築が姿を消す瞬間に驚くとともに、不思議と厳かな気持ちが湧き上がってきます。
また本展では監修として、ワシントン大学のケン・タダシ・オオシマ教授と、京都工芸繊維大学の松隈洋教授にご協力をいただきました。自然環境も建築をつくりあげる社会環境も異なる海外で、なぜ「日本建築」が選ばれるのか。出展作品を実際に訪れ体感されているオオシマ教授に、それぞれの作品の魅力や評価など、海外からの第三者の視点を加えていただいています。そして松隈教授は、こうした日本の建築家たちの世界での活躍について、歴史的な考察を行ってくださいました。会場の最奥で展示している約一世紀分の動向をまとめた年表からは、前川國男や坂倉準三、丹下健三などの第一世代が、ヨーロッパを中心に巻き起こるモダニズム建築の潮流に敏感に反応して果敢に海外へ挑戦した様子が、そしてまさに第二世代ともいえる今回ご出展いただいている建築家によって花開いていく様子がうかがえます。今後ますますグローバル化する世界の中で、「日本建築」がどのような展開を見せていくのか、引き続きご注目いただければ幸いです。
本展は新型コロナウィルスの足音が聞こえ始めた2020年3月20日にスタートしました。残念ながらその後急速に感染が拡大し、約2か月間の臨時休館を余儀なくされました。そこで本展会期を11月29日まで延期いたします。(旧会期:8月30日まで)詳細は当館ホームページをご確認ください。
コロナ禍で海外旅行はまだまだ難しい日々が続きますが、世界各地の建築作品が集う本展を、ぜひ世界旅行する気分でお楽しみいただければと思います。皆様のご来館をお待ちいたしております。
掲載写真:下家康弘
(たかぎ あいこ)
■髙木 愛子 Aiko Takagi
1983年東京生まれ。日本大学大学院理工学研究科建築学専攻前期課程修了。國學院大學大学院文学研究科博士課程後期史学専攻博物館学コース単位取得満期退学。
国立科学博物館産業技術史資料情報センター、東京農工大学科学博物館、国立近現代建築資料館を経て、2019年より谷口吉郎・吉生記念金沢建築館に勤務。
●展覧会のご案内


第2回企画展「日本を超えた日本建築― Beyond Japan―」
会期:2020年3月20日(金・祝)~11月29日(日)【会期延長】
会場:谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館(石川県金沢市寺町5-1-18)
作家:安藤忠雄、磯崎新、伊東豊雄、隈研吾、SANAA、谷口吉生、坂茂、槇文彦
第2回特別展「日本を超えた日本建築―Beyond Japan―」では、日本を超えて世界の異なる環境や社会の中で、ふさわしい建築として称賛されている、日本を代表する建築家の8作品を模型や映像、写真で紹介します。
昭和初期に初めて日本の建築家によって外国に建てられた日本建築は、今や世界が認めるグローバルな建築となって、世界の建築文化に刺激を与え続けています。本特別展では、これらの「日本を超えた日本建築」ともいえる作品をとおして、現代建築の新しい潮流と建築の未来について考えます。(HPより)
●こちらのブログもご覧ください。
「鈴木大拙館と谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館を訪ねました」
●本日のお勧め作品は安藤忠雄です。
安藤忠雄 Tadao ANDO「ピノー美術館」
2003年
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
イメージサイズ:36.0x86.0cm
シートサイズ:65.5x90.0cm
Ed.15 サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆「開廊25周年 第1回ときの忘れものエディション展―建築家たち」
会期=2020年7月21日[火]―8月8日[土]

ときの忘れものはこの6月に開廊25周年を迎えることができました。展覧会の企画と版画の版元として今日まで歩んでこれた感謝をこめて、25年間にエディションした建築家5人(安藤忠雄、石山修武、磯崎新、光嶋裕介、六角鬼丈)の版画を展示し、動画を撮影、YouTubeに公開します。
●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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