「もうひとつの日本美術史——近現代版画の名作2020」展より
植野比佐見(和歌山県立近代美術館)
美術館は、生き物なのではないかと時々思う。展覧会のたびにさまざまな経験をかさね、人と出会い、新しい所蔵品を加える。人が働いており、人がその成果をご覧になるのだからあたりまえなのだが、一つの展覧会を終えて、なにも変わらないことはありえない。加えて、今回は経験したことのない感染症のおさまらないなかでの開催である。
2020年の東京オリンピック開催にあわせ、各地の美術館では海外からの訪問者に日本の歴史と文化を紹介するよい機会として、いくつかの「名作展」が準備された。オリンピックは新型コロナウイルス感染症の拡大のために延期となったが、福島県立美術館と和歌山県立近代美術館では、誰もが知る名高い作品を一堂に集める「名作展」では取り上げられにくい版画に焦点をあて、「もうひとつの日本美術史——近現代版画の名作2020」展を開いている。
版画は、日本の美術の歴史を語る上で欠かせないものであり、海外から見た日本美術を特色づける重要な表現である。江戸時代の浮世絵は西欧の近代美術を多彩にし、また戦後の版画家たちによる国際展での活躍は、海外で日本の現代美術が認められていくきっかけを作った。
しかし、国内においては、版画が美術表現としての立場を獲得するまでには、長い時間がかかった。たとえば、1964年の東京オリンピックに際して、国立近代美術館(現在の東京国立近代美術館)で開催された「芸術展示 近代日本の名作」展に出品された作品は、棟方志功と浜口陽三のみで、自国の美術の歴史を語る文脈において、版画には十分に光が当てられたとはいえないものだった。
その後、1970年代から80年代にかけて、日本各地に公立の美術館が次々に設置され、各館は地域の風土とそこで生み出される表現に向き合いながら、現在まで研究・収集活動を続けてきた。地域に積み重ねられてきた表現の数々を、美術の歴史として捉え直し、提示することが地方美術館の仕事のひとつである。きめ細かに地域から生まれた美術を見直したなかには、版画も含まれた。
福島県立美術館は、1985年の開館時に福島県出身の斎藤清から贈られた主要作品を核に良質なコレクションを形成し、和歌山県立近代美術館は、和歌山市出身の田中恭吉、橋本市出身の父を持つ恩地孝四郎、和歌山県広川町出身の浜口陽三らを核として、創作版画、現代版画を50年にわたって研究している。
田中恭吉とともに自画・自刻の木版画による『月映』を創刊した恩地孝四郎と藤森静雄から彼らの同時代の、そして彼らが刺激を与えた創作版画の作家たちへ、浜口陽三と同時代の版画家から現代版画家たちへと研究・収集の範囲は人と人の繋がりを辿って拡がっていった。作家、グループ、時代などさまざまな角度で版画を見る展覧会を重ね、いまでは8000点を越える作品を収蔵している。
あらためて当館のコレクションを見ると、作家同士の有機的な関係が強く印象づけられる。それだけに版画の近現代美術史を編もうとすると、欠けている部分がある。それが個性でもあるが、今回の展覧会では、福島県立美術館のコレクションとあわせ、各地の美術館と個人コレクションからのご出品によって補うことができた。
それでももちろん「名作」のすべてを網羅できたわけではない。それほどに、この100年あまりの間に、多くの優れた作品が作られてきたのだ。また、そのイメージを多くのひとの記憶に留めるまもなく埋もれていった優れた作品には、名高い作品という意味の「名作」として認められるための時間がなかったものもある。美術にかぎらず、近代では、社会の変化にともなって、それ以前のものが忘れられていくスピードが極端に速い。
とくに産業の分野では、新しい技術が生まれると従来のものは姿を消していく。版画は印刷業から生まれた芸術である。産業ともっとも密接に即物的な意味でつながりを持つ芸術と言ってもいいかもしれない。単純なところでは、新しい技術が普及すると、以前の機材や資材が生産されなくなり、機材を修理する技術さえ失われていく。それを使って作品を制作していた人たちは、それまでのように作品を作れなくなる。新しい作品を作る人が少なくなり、見られる機会も減っていく。
たとえば、謄写版ほど多くの人が親しんだ印刷術はなかったかもしれない。いわゆるガリ版である。学校や仕事場で複写のために用いられる実用的な簡易印刷術であって、美術学校などで教えられる古典的な版画技法ではなかったが、図版の複製を通して作品としての版画制作を始める人は少なくなかった。しかし、コピー機などの普及によって複写技術としての役割を終え、資材の生産が途絶えたときに、作り手たちにもう続けられないと思わせることになった。
実は、生産中止になった資材の多くは手製できるのだが、あたりまえのように出来合いのものが売られていたことが、手製してみようという発想に至るには越えなければならない障害となったのだ。これを越えさせるのが、残された作品だと思う。失われた技術の復元は、美術の世界において度々なされてきた。
銅版による古い印刷技法のひとつ、メゾチントも長谷川潔によって版画の技法として蘇った。実際には、同時代のイギリスで版画技法として生きていたとはいっても、長谷川にとっては一人で立ち向かった課題だった。ベルソーという道具を探し出し、美しい黒の諧調を実現する原動力となったのは、メゾチントで複製された印刷物だった。
しかしながら、版画は、はかない。小さく丸めて捨てれば、それで作品はなくなる。私たちも生活の中でどれほどの手稿を、何号の新聞を、雑誌を、何冊の本を、破り、焼き、捨てただろう。いま、この展覧会に出品されてきた作品は、そうした「日常の危機」をくぐりぬけ、戦災や天災を越えていま存在する。作品の運も強いが、見つけ出し、勇気をもって選び、責任を持ってそれを保存してきた人たちの力が大きいことを実感している。
作品の保存のために美術館ができることは、よい環境で安全に保管することのほかに、こうして展覧会などで作品をより多くの人が知る機会を提供することだろう。作品の価値を認める人が増えれば、新しい「名作」となり、次の時代へ伝えるべきものという心が、その作品の生命をながらえさせることにつながる。
新型コロナウイルス感染症の状況がどのように変化するのか、先が見えないなか、福島県立美術館に続いて当館でも9月19日から11月23日まで開催する予定である。和歌山県立近代美術館にとっては、開館50周年を記念する展覧会である。思うままに外出できない、会いたい人に会えない間に、音楽、文学、そして美術など、あらゆる芸術から力を得なかった人はいないはずだ。できるかぎりの感染予防策をとり、美術作品に向かい合う場を確保したい。
(うえの ひさみ)
■植野比佐見 Ueno Hisami
1967年和歌山県生まれ、1990年金沢市立金沢美術工芸大学美術学部芸術学専攻卒業。
郡山市立美術館建設準備室をへて、和歌山県立近代美術館に勤務。
1995年『村井正誠』展、1996年「紀伊半島を歩いて ロジャー・アックリング&ハミッシュ・フルトン」展ほか、
版画関係の展覧会
2011年3月 『版画の「アナ」―ガリ版がつなぐ孔版画の歴史』展
2013年2月 『謄写版の冒険 卓上印刷器からはじまったアート』展
2014年2月 『版画について考える 101年目の宿題』展
2015年3月 『「版画」の明治-印刷と美術のはざまで』展
2016年3月 『謄写印刷工房から 印刷と美術のはざまで』展
2018年4月 『産業と美術のあいだで 印刷術が拓いた楽園』展
------------------------------------------------------------
「もうひとつの日本美術史 近現代版画の名作2020」展のご案内
1970年に日本で5番目の近代美術館として設置された和歌山県立近代美術館は、日本有数の充実した近現代版画のコレクションで知られている。また福島県立美術館は1984年の開館にあたり、戦後を代表する版画家・斎藤清からその主要作品の寄贈を受け、美術館活動が始まった。
本展はこの2館のコレクションを中心に、これまで日本の美術の歴史を語る上であまり光が当てられることのなかった版画を文脈として、地方から見えるもうひとつの近現代日本美術史を編み直そうとする試みだ。
明治から平成にかけての版画の名作約300点により、日本の近現代を振り返る。
●福島展
会期:2020年7月11日(土)~8月30日(日)
会場:福島県立美術館(福島県福島市森合字西養山1番地)
開催概要


●和歌山展
会期:2020年9月19日(土)~11月23日(月・祝)
会場:和歌山県立近代美術館(和歌山県和歌山市吹上1-4-14)


●『もうひとつの日本美術史ー近現代版画の名作2020』展図録のご案内
2020年
22.2×17.5cm 325頁
編集・発行:福島県立美術館、和歌山県立近代美術館
執筆:酒井哲朗(福島県立美術館 名誉館長)、山野英嗣(和歌山県立近代美術館 館長)、青木加苗、荒木康子、植野比佐見、紺野朋子、坂本篤史、宮本久宣
税込価格: 2,300円、送料520円
*ときの忘れもので扱っています。
*画廊亭主敬白
久しぶりに亭主の血が騒ぐ(まだ行けていないのだけれど)展覧会です。
版画作品によって「日本美術史」を見直すという視点がいいですね。『もうひとつの日本美術史ー近現代版画の名作2020』展図録は、版画ファンならずとも必見、必読のカタログです。ぜひご注文ください。
恩師久保貞次郎先生は別格として、私たちが出会ったコレクターで千点くらいの版画コレクションをもつ人はざらです。8日から新連載「私が出会ったアートな人たち」を開始した荒井由泰さんもあの和歌山でさえ持っていない恩地孝四郎の稀少作をコレクションしています。
先日開催した「生誕100年 駒井哲郎展 Part1 若き日の作家とパトロン」出品作を一括してコレクションしてくださったMさんご夫妻の版画コレクションを見せていただいたのですが、長谷川潔から瑛九、加納光於にいたるそのセレクション、駄作は買わないという断固としたレベルの高さには驚きの言葉しかありませんでした。
今回の福島と和歌山の試みは、個人コレクションの可能性を示唆している点でとても新鮮です。
<わがコレクションでもう一つの日本美術史にチャレンジ>するコレクターの出現を期待したいですね。
ついでにぜひ手にして欲しいカタログをご紹介します。残念ながらコロナウイルス禍のため、開催中止になってしまった展覧会のカタログですが、その執筆陣が凄い!
買っておかないと後で後悔します。
詳しくは、6月24日のブログをご参照ください。
●『無辜の絵画 靉光、竣介と戦時期の画家』図録
『無辜の絵画 靉光、竣介と戦時期の画家』
B5変形・336頁
編集:広島市現代美術館
執筆:寺口淳治(広島市現代美術館)、大谷省吾(東京国立近代美術館)、江川佳秀(徳島県立近代美術館)、出原均(兵庫県立美術館)、藤崎綾(広島県立美術館)、田中淳(大川美術館)、小此木美代子(大川美術館)、長門佐季(神奈川県立近代美術館)、宇多瞳(広島市現代美術館)、橘川英規(東京文化財研究所)
発行:国書刊行会
税込価格:4,180円、送料520円
*ときの忘れもので扱っています。
●本日のお勧め作品は恩地孝四郎です。

恩地孝四郎 Koshiro ONCHI
《Composition No.2 文字》
1949年(1968年後刷り:平井孝一)
木版 34.2×26.7cm
スタンプサインあり
※『恩地孝四郎版画集』掲載No.314(1975年 形象社)
*作品裏に添付された《平井刷り》のシール

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
植野比佐見(和歌山県立近代美術館)
美術館は、生き物なのではないかと時々思う。展覧会のたびにさまざまな経験をかさね、人と出会い、新しい所蔵品を加える。人が働いており、人がその成果をご覧になるのだからあたりまえなのだが、一つの展覧会を終えて、なにも変わらないことはありえない。加えて、今回は経験したことのない感染症のおさまらないなかでの開催である。
2020年の東京オリンピック開催にあわせ、各地の美術館では海外からの訪問者に日本の歴史と文化を紹介するよい機会として、いくつかの「名作展」が準備された。オリンピックは新型コロナウイルス感染症の拡大のために延期となったが、福島県立美術館と和歌山県立近代美術館では、誰もが知る名高い作品を一堂に集める「名作展」では取り上げられにくい版画に焦点をあて、「もうひとつの日本美術史——近現代版画の名作2020」展を開いている。
版画は、日本の美術の歴史を語る上で欠かせないものであり、海外から見た日本美術を特色づける重要な表現である。江戸時代の浮世絵は西欧の近代美術を多彩にし、また戦後の版画家たちによる国際展での活躍は、海外で日本の現代美術が認められていくきっかけを作った。
しかし、国内においては、版画が美術表現としての立場を獲得するまでには、長い時間がかかった。たとえば、1964年の東京オリンピックに際して、国立近代美術館(現在の東京国立近代美術館)で開催された「芸術展示 近代日本の名作」展に出品された作品は、棟方志功と浜口陽三のみで、自国の美術の歴史を語る文脈において、版画には十分に光が当てられたとはいえないものだった。
その後、1970年代から80年代にかけて、日本各地に公立の美術館が次々に設置され、各館は地域の風土とそこで生み出される表現に向き合いながら、現在まで研究・収集活動を続けてきた。地域に積み重ねられてきた表現の数々を、美術の歴史として捉え直し、提示することが地方美術館の仕事のひとつである。きめ細かに地域から生まれた美術を見直したなかには、版画も含まれた。
福島県立美術館は、1985年の開館時に福島県出身の斎藤清から贈られた主要作品を核に良質なコレクションを形成し、和歌山県立近代美術館は、和歌山市出身の田中恭吉、橋本市出身の父を持つ恩地孝四郎、和歌山県広川町出身の浜口陽三らを核として、創作版画、現代版画を50年にわたって研究している。
田中恭吉とともに自画・自刻の木版画による『月映』を創刊した恩地孝四郎と藤森静雄から彼らの同時代の、そして彼らが刺激を与えた創作版画の作家たちへ、浜口陽三と同時代の版画家から現代版画家たちへと研究・収集の範囲は人と人の繋がりを辿って拡がっていった。作家、グループ、時代などさまざまな角度で版画を見る展覧会を重ね、いまでは8000点を越える作品を収蔵している。
あらためて当館のコレクションを見ると、作家同士の有機的な関係が強く印象づけられる。それだけに版画の近現代美術史を編もうとすると、欠けている部分がある。それが個性でもあるが、今回の展覧会では、福島県立美術館のコレクションとあわせ、各地の美術館と個人コレクションからのご出品によって補うことができた。
それでももちろん「名作」のすべてを網羅できたわけではない。それほどに、この100年あまりの間に、多くの優れた作品が作られてきたのだ。また、そのイメージを多くのひとの記憶に留めるまもなく埋もれていった優れた作品には、名高い作品という意味の「名作」として認められるための時間がなかったものもある。美術にかぎらず、近代では、社会の変化にともなって、それ以前のものが忘れられていくスピードが極端に速い。
とくに産業の分野では、新しい技術が生まれると従来のものは姿を消していく。版画は印刷業から生まれた芸術である。産業ともっとも密接に即物的な意味でつながりを持つ芸術と言ってもいいかもしれない。単純なところでは、新しい技術が普及すると、以前の機材や資材が生産されなくなり、機材を修理する技術さえ失われていく。それを使って作品を制作していた人たちは、それまでのように作品を作れなくなる。新しい作品を作る人が少なくなり、見られる機会も減っていく。
たとえば、謄写版ほど多くの人が親しんだ印刷術はなかったかもしれない。いわゆるガリ版である。学校や仕事場で複写のために用いられる実用的な簡易印刷術であって、美術学校などで教えられる古典的な版画技法ではなかったが、図版の複製を通して作品としての版画制作を始める人は少なくなかった。しかし、コピー機などの普及によって複写技術としての役割を終え、資材の生産が途絶えたときに、作り手たちにもう続けられないと思わせることになった。
実は、生産中止になった資材の多くは手製できるのだが、あたりまえのように出来合いのものが売られていたことが、手製してみようという発想に至るには越えなければならない障害となったのだ。これを越えさせるのが、残された作品だと思う。失われた技術の復元は、美術の世界において度々なされてきた。
銅版による古い印刷技法のひとつ、メゾチントも長谷川潔によって版画の技法として蘇った。実際には、同時代のイギリスで版画技法として生きていたとはいっても、長谷川にとっては一人で立ち向かった課題だった。ベルソーという道具を探し出し、美しい黒の諧調を実現する原動力となったのは、メゾチントで複製された印刷物だった。
しかしながら、版画は、はかない。小さく丸めて捨てれば、それで作品はなくなる。私たちも生活の中でどれほどの手稿を、何号の新聞を、雑誌を、何冊の本を、破り、焼き、捨てただろう。いま、この展覧会に出品されてきた作品は、そうした「日常の危機」をくぐりぬけ、戦災や天災を越えていま存在する。作品の運も強いが、見つけ出し、勇気をもって選び、責任を持ってそれを保存してきた人たちの力が大きいことを実感している。
作品の保存のために美術館ができることは、よい環境で安全に保管することのほかに、こうして展覧会などで作品をより多くの人が知る機会を提供することだろう。作品の価値を認める人が増えれば、新しい「名作」となり、次の時代へ伝えるべきものという心が、その作品の生命をながらえさせることにつながる。
新型コロナウイルス感染症の状況がどのように変化するのか、先が見えないなか、福島県立美術館に続いて当館でも9月19日から11月23日まで開催する予定である。和歌山県立近代美術館にとっては、開館50周年を記念する展覧会である。思うままに外出できない、会いたい人に会えない間に、音楽、文学、そして美術など、あらゆる芸術から力を得なかった人はいないはずだ。できるかぎりの感染予防策をとり、美術作品に向かい合う場を確保したい。
(うえの ひさみ)
■植野比佐見 Ueno Hisami
1967年和歌山県生まれ、1990年金沢市立金沢美術工芸大学美術学部芸術学専攻卒業。
郡山市立美術館建設準備室をへて、和歌山県立近代美術館に勤務。
1995年『村井正誠』展、1996年「紀伊半島を歩いて ロジャー・アックリング&ハミッシュ・フルトン」展ほか、
版画関係の展覧会
2011年3月 『版画の「アナ」―ガリ版がつなぐ孔版画の歴史』展
2013年2月 『謄写版の冒険 卓上印刷器からはじまったアート』展
2014年2月 『版画について考える 101年目の宿題』展
2015年3月 『「版画」の明治-印刷と美術のはざまで』展
2016年3月 『謄写印刷工房から 印刷と美術のはざまで』展
2018年4月 『産業と美術のあいだで 印刷術が拓いた楽園』展
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「もうひとつの日本美術史 近現代版画の名作2020」展のご案内
1970年に日本で5番目の近代美術館として設置された和歌山県立近代美術館は、日本有数の充実した近現代版画のコレクションで知られている。また福島県立美術館は1984年の開館にあたり、戦後を代表する版画家・斎藤清からその主要作品の寄贈を受け、美術館活動が始まった。
本展はこの2館のコレクションを中心に、これまで日本の美術の歴史を語る上であまり光が当てられることのなかった版画を文脈として、地方から見えるもうひとつの近現代日本美術史を編み直そうとする試みだ。
明治から平成にかけての版画の名作約300点により、日本の近現代を振り返る。
●福島展
会期:2020年7月11日(土)~8月30日(日)
会場:福島県立美術館(福島県福島市森合字西養山1番地)
開催概要


●和歌山展
会期:2020年9月19日(土)~11月23日(月・祝)
会場:和歌山県立近代美術館(和歌山県和歌山市吹上1-4-14)


●『もうひとつの日本美術史ー近現代版画の名作2020』展図録のご案内
2020年22.2×17.5cm 325頁
編集・発行:福島県立美術館、和歌山県立近代美術館
執筆:酒井哲朗(福島県立美術館 名誉館長)、山野英嗣(和歌山県立近代美術館 館長)、青木加苗、荒木康子、植野比佐見、紺野朋子、坂本篤史、宮本久宣
税込価格: 2,300円、送料520円
*ときの忘れもので扱っています。
*画廊亭主敬白
久しぶりに亭主の血が騒ぐ(まだ行けていないのだけれど)展覧会です。
版画作品によって「日本美術史」を見直すという視点がいいですね。『もうひとつの日本美術史ー近現代版画の名作2020』展図録は、版画ファンならずとも必見、必読のカタログです。ぜひご注文ください。
恩師久保貞次郎先生は別格として、私たちが出会ったコレクターで千点くらいの版画コレクションをもつ人はざらです。8日から新連載「私が出会ったアートな人たち」を開始した荒井由泰さんもあの和歌山でさえ持っていない恩地孝四郎の稀少作をコレクションしています。
先日開催した「生誕100年 駒井哲郎展 Part1 若き日の作家とパトロン」出品作を一括してコレクションしてくださったMさんご夫妻の版画コレクションを見せていただいたのですが、長谷川潔から瑛九、加納光於にいたるそのセレクション、駄作は買わないという断固としたレベルの高さには驚きの言葉しかありませんでした。
今回の福島と和歌山の試みは、個人コレクションの可能性を示唆している点でとても新鮮です。
<わがコレクションでもう一つの日本美術史にチャレンジ>するコレクターの出現を期待したいですね。
ついでにぜひ手にして欲しいカタログをご紹介します。残念ながらコロナウイルス禍のため、開催中止になってしまった展覧会のカタログですが、その執筆陣が凄い!
買っておかないと後で後悔します。
詳しくは、6月24日のブログをご参照ください。
●『無辜の絵画 靉光、竣介と戦時期の画家』図録
『無辜の絵画 靉光、竣介と戦時期の画家』B5変形・336頁
編集:広島市現代美術館
執筆:寺口淳治(広島市現代美術館)、大谷省吾(東京国立近代美術館)、江川佳秀(徳島県立近代美術館)、出原均(兵庫県立美術館)、藤崎綾(広島県立美術館)、田中淳(大川美術館)、小此木美代子(大川美術館)、長門佐季(神奈川県立近代美術館)、宇多瞳(広島市現代美術館)、橘川英規(東京文化財研究所)
発行:国書刊行会
税込価格:4,180円、送料520円
*ときの忘れもので扱っています。
●本日のお勧め作品は恩地孝四郎です。

恩地孝四郎 Koshiro ONCHI
《Composition No.2 文字》
1949年(1968年後刷り:平井孝一)
木版 34.2×26.7cm
スタンプサインあり
※『恩地孝四郎版画集』掲載No.314(1975年 形象社)
*作品裏に添付された《平井刷り》のシール

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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