皆様こんにちわ、スタッフMです。
あっという間に2020年も残りわずか。
寒さも厳しくなってまいりましたがお変わりございませんか。

さて、本日は12月4日(金)に高崎出張にいってまいりましたのでご報告のレポートです。
ときの忘れものに勤めていながら磯崎新先生設計・群馬県立近代美術館を見ていないのか! という画廊亭主の一言で急遽決まった出張。
たしかに過去のブログ記事や亭主のレクチャーで行った気になっていましたが、、これはまずい! ということで
社長と亭主とともに高崎に行ってまいりました。

JR高崎線「新町」駅からタクシーで10分。(高崎駅からは20分かかります)
戦前には陸軍の火薬の製造所があった所を公園に整備した「群馬の森」に到着。
園内には群馬県立近代美術館や群馬県立歴史博物館があります。
IMG_6920広い駐車場を通って「群馬の森」入り口へ。ゲートのように両脇に建てられた建物も既に立方体の集合体になっています。

IMG_6923今回の目的の一つはこちら。
2020年9月12日[土]-12月13日[日]まで開催の「佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000-現代美術の定点観測-」の立て看板

IMG_6931群馬の森を歩いていくと見えてきました。
群馬県立近代美術館! うつくしい…
手前には宮脇愛子先生による「うつろひ」がしなやかに揺れていました。

IMG_6925群馬県立近代美術館は、画廊亭主の大恩人の井上房一郎氏らが当時まだ新人だった磯崎新先生を設計者に抜擢して1974年に開館しました。当時、井上氏に磯崎先生を推薦したのは斎藤義重先生とのことで、すごい強力タッグですね。
青空のもと磯崎建築の前で社長と亭主の記念写真をパシャリ。

IMG_6940美術館入り口。

IMG_6944美術館内エントランスホール。壁も床も立方体になっています。

”磯崎の群馬県立近代美術館についてのコンセプトでは、1.2mを基準とした立方体フレームの集合体が、美術作品を取り巻く額縁に喩えられた空洞として想定されており、美術作品が通過するこの空洞(空間)は流動的に変化し、増殖可能なものとされている。”
群馬県立近代美術館HPより引用)

IMG_6946「佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000-現代美術の定点観測-」展示会場の入り口。
「佐賀町エキジビット・スペース」とは、「無印良品」の立ち上げにも参画した小池一子さんが主宰した日本初の「オルタナティブ・スペース」でした。1983年~2000年12月まで東京都江東区佐賀にあった食糧ビル(1927年竣工)の3階講堂で数多の作家の展覧会やイベントを開催。「美術館でも商業画廊でもない」スペースとして、つまり「営利目的ではない」芸術発信の場として、作家に寄り添う姿勢で運営されてきたそうです。
17年間で展覧会は106回。関わった国内外のアーティストは400人以上。
今回の展示はその回顧展と聞いて楽しみにしてきました。

IMG_6954会場内。(作品以外の資料の撮影はOKとのことで許可をいただきました)
食糧ビルに掲げていた看板。
小池一子さんは、このスペースのミッションと表現の指針を下記のように記しています。

「ミッションのチェックリスト
1.オルタナティブ:美術館でもなく商業ギャラリーでもない第三の選択肢を選ぶ
2.アーティスト・プライオリティ:創作に寄り添うことが第一義
3.ノン・ジャンル:芸術の領域を広げること
4.エマージング・アーティスト:新しい仕事の発掘から始める
5.ファースト・ショウ:展覧会を初めて作ることに伴走する
6.マルティ・ナショナル:国籍、人種を問わない
7.エキジビション構成:空間全体をどう捉えてインスタレーションを構成するかの提案が必要
8.ラボラトリー:実験することを恐れない」


『佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000-現代美術の定点観測-』図録(2020年 発行者:中村水絵 発行所:HeHe/ヒヒ)P.16より引用

IMG_6962中央には食糧ビルの講堂の模型。壁には林雅之氏や安齊重男氏らによって撮影された当時の展示風景が並んでいます。
作家は、安藤忠雄、三上浩、駒形克哉、ニキ・ド・サンファル、大竹伸朗、杉本博司、森村泰昌、内藤礼、横尾忠則、クロード・ヴィアラ、アンゼルム・キーファー、オノデラユキ、岡部昌生、日高理恵子、吉澤美香など多種多様な作家陣。

IMG_6947講堂の模型。
次の部屋には、当時展示した森村泰昌、岡部昌生、オノデラユキらの作品41点が展示されていました。(作品は撮影禁止)

展示作品について、小池一子さんによると「本展では、17年間のスペースにおける発表作品のうちの一部のみ展示可能となりました。発足当初の作品を掘り起こすことでミッションの初心に帰り、終幕に至る作品展示の系譜から示唆を得たものをここに展示しています。基本的には立体作品のリメイクなどは行わず、できうる限り作品が生まれた時間の姿のままを留めています。」(会場で配布されたチラシ内の文章より引用)


IMG_6966当時制作された展覧会カタログ。

IMG_6976当時会場で配布されたリーフレットなど。
中の文章なども読みたかったですが、ガラス越しに閲覧。

IMG_7115『佐賀町エキジビット・スペース 1983–2000-現代美術の定点観測-』図録(2020年 発行者:中村水絵 発行所:HeHe/ヒヒ)

私は恥ずかしながら「佐賀町エキジビット・スペース」の存在を今回の展覧会で初めて知りましたが(筆者は1991年生まれ)、「美術館でもない商業ギャラリーでもない」というアートスペースを17年間も運営し、しかも豪華な作家陣という事実に驚きました。当時の熱気を感じようと展示風景やパンフレットをじっくり見ましたが、もっと当時の各展示風景やイベント風景などを見たくなりました。

IMG_6983美術館2階と1998年に増築された現代美術棟のコレクション展も見てきました。オノサト・トシノブ草間彌生山口薫オディロン・ルドン福沢一郎などが展示されていました。

IMG_69792階から見たエントランスホール。

IMG_69931階から2階へ続く階段。

IMG_69431階の展示会場出口。ここも立方体。

学芸員の田中先生にご挨拶して、タクシーで「高崎市美術館」へ移動。
高崎駅のすぐちかくの高崎市美術館では、旧井上房一郎邸をみることができます。
井上邸の詳細は、スタッフSが2018年の「高崎市のレーモンド建築ツアー」のレポートを書いていますのでこちらをお読みください。
IMG_7011旧井上房一郎邸(1952年竣工、麻布笄町のレーモンド自邸の写し)。

IMG_7001亭主いわく奥のベッドでよく井上さんは寝そべってくつろいでいたそう。

帰りがけにアントニン・レーモンド設計の群馬音楽センターも見てきました。
IMG_7033外観。


IMG_7037内観。亭主が高校時代に竣工して間もなくマンドリンを弾いた会場

はじめての高崎の地。
画廊亭主の話を聞きながら、やはりいいものは肌で感じなければだめだなと痛感しました。
群馬県立近代美術館も群馬音楽センターも古さをまったく感じさせない名建築。
これからは国内の名建築をどんどん見ていきたいなと思いました。
ですが、仕事もなかなかに詰まっているので次はいつ出張できるやら。
それでは皆様どうぞお元気でお過ごしください。
スタッフM

●本日のお勧めは磯崎新の還元シリーズより群馬県立近代美術館をモチーフにした作品です。
磯崎新還元群馬
磯崎新「MUSEUM -Ⅰ
1983年 
シルクスクリーン(刷り:石田了一)
55.0×55.0cm 
Ed. 75  サインあり
*現代版画センターエディション

11月28日ブログで新連載・塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」が始まりました。合わせて連載記念の特別頒布会を開催しています。
Water Music 青ラベル、白ラベル塩見允枝子先生には11月から2021年4月までの6回にわたりエッセイをご執筆いただきます。塩見允枝子のエッセイ「フルクサスの回想」は毎月28日掲載です。
連載に合わせて作品も特別頒布させていただきます。お気軽にお問い合わせください。

●『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』が刊行されました。
『ジョナス・メカス論集 映像詩人の全貌』小執筆:ジョナス・メカス、井戸沼紀美、吉増剛造、井上春生、飯村隆彦、飯村昭子、正津勉、綿貫不二夫、原將人、木下哲夫、髙嶺剛、金子遊、石原海、村山匡一郎、越後谷卓司、菊井崇史、佐々木友輔、吉田悠樹彦、齊藤路蘭、井上二郎、川野太郎、柴垣萌子、若林良

*ときの忘れもので扱っています。メール・fax等でお申し込みください。

●ときの忘れものは青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。
阿部勤設計の新しい空間はWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。