「生誕110年記念 瑛九展-Q Ei 表現のつばさ-」
会期:2021年10月23日(土)~12月5日(日)
会場:宮崎県立美術館
32bcab83-sd83af3ac

宮崎県立美術館で生誕110年記念の瑛九展が開催されるということで、内覧会に出席するため宮崎出張に行ってきました。久しぶりの九州。鹿児島出身の私にとっては宮崎は馴染み深い土地です(約20年振りですが)。
東京は12月上旬並みの寒さという日に、まだ夏の名残がある宮崎入り。快晴で、日射しが強く、ハイビスカスも咲いておりました。
IMG_8151
「生誕110年記念 瑛九展-Q Ei 表現のつばさ-」内覧会には、コロナ禍でもあり招待客は50名ほどが出席し、開会式が催されました。学芸員の小林美紀先生による解説とともに作品を堪能してきました。
IMG_8157
宮崎県立美術館は、1996年の開館記念の「魂の叙情詩 瑛九展」、10年前に開催された「生誕100年記念瑛九展」に続き、3回目となる大規模な瑛九展です。約1,000点の瑛九コレクションをお持ちだそうで、その中から選りすぐった約200点の作品と、個人所蔵の作品、書簡や銅版画の原版、プレス機、フォト・デッサン制作に使用する道具や小型の暗室などの資料類も多数展示されています。
IMG_8158
油彩、フォト・デッサン、コラージュ、ドローイング、版画と、技法は多岐にわたり、瑛九の挑戦を一望することができます。特にフォト・デッサンは自由に楽しんで制作しているのが伝わるチャーミングな作品ばかりでした。弊社にあるフォト・デッサン型紙(セロファン)で制作されたフォト・デッサンが2種類もあり、試行錯誤も垣間見られます。
IMG_8168
IMG_8165
最後は光り輝く点描画が展示された一室。個人的に好きな小石のような斑点から、アメーバーのような斑点、画面から飛び出そうとしている斑点や、小宇宙に浮遊している斑点など、さまざまな斑点が描かれた点描画が掛けてあり、どれも心に響く美しい作品群でした。
IMG_8201
IMG_8198
IMG_8199
最後に描かれたとされる大作の点描画《つばさ》は、自作したはしごに登って描いた全身全霊を捧げた一枚。
IMG_8200
そして、最後の最後に、病床の中、小さなスケッチブックに書いたモノクロの絵がひっそりと展示してありました。
IMG_8204
「(略)一日中、絵が描きたい、絵が描きたいと訴えつづけ、時々涙を流しているので、それを見た都は街に買いものに出た時、小さなスケッチブックと一箱の色鉛筆とを手にして来て彼に渡した。それを受けとった瑛九は大へん喜び、早速黒い鉛筆をとって、小さな円形の連鎖で画面をうずめた一枚のデッサンを描きあげ、その夜は静かに眠った」(山田光春/著 「瑛九 評伝と作品」p.457より抜粋)

隣接する宮崎県立芸術劇場・メディキット県民文化センターの緞帳は、瑛九《田園B》の一部が再現されているそうです。
鹿児島と宮崎でバレエをしていた姉の発表会で、ここに何度か来たことがあるのを薄っすら思い出しましたが、緞帳が下りていたような、下りていなかったような・・・。
緞帳を見られるのか文化センターに問い合わせてみたところ、丁寧にご説明いただきました。緞帳の利用は主催者の判断によるらしく、行けば見られるものでないそうです。どうしても緞帳を見たい場合は、見学者が5名以上集まれば施設見学で緞帳を見ることができるそう。次回訪ねる際は5名以上集めて、緞帳を見に行きたい!

翌日は瑛九のゆかりの地、杉田家のお墓と生家跡地を巡ってきました。
以前、瑛九の聖地巡礼で宮崎を訪ねた中村茉貴さんのエッセイ(中村茉貴 美術館に瑛九を観に行く 第18回「宮崎・瑛九ゆかりの地を訪ねて」特別編12が参考になるので、行かれる方はご参照ください。

まずは、杉田家のお墓参り。果たして見つけられるのか不安でしたが、中村さんに目印を教えていただいていたので、すぐに見つけられました。
IMG_8230
そして、中心街のすぐそばにある生家跡地の杉田眼科。現在駐車場になっているところに立派な生家があったそうです。
IMG_8239
そろそろ帰ろうと駅に向かって商店街を歩いていたところ、「蜂楽饅頭」の行列が目に入り(九州人はご存知の方も多いでしょう、関東でいう今川焼きのお店です)、懐かしくて自分用に購入。ふと隣を見たら、中村さんのエッセイに載っていた「ひまわり画廊を発見! 焼きたての蜂楽饅頭をバッグに押し込み、お店の方にご挨拶。少しお話を伺い、帰路につきました。
IMG_8244
「瑛九は学芸員に愛される作家」と綿貫はよく言っていますが、瑛九は知れば知るほど奥が深く、色んな作品があるので好奇心がそそられる作家で、研究し甲斐もあり、なんだか私もすっかり瑛九の虜です。
コロナも少し落ち着いてきたこの時期に、是非宮崎を訪ねて、展覧会をご覧いただければ幸いです。
おだち れいこ

●本日のお勧めは瑛九です。
qei-202瑛九《題不詳》
制作年不詳
フォト・デッサン
54.8×44.4cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください


●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com 
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。