リレーエッセイ「伊藤公象の世界」
第3回 堀江ゆうこ「BLUE PEARLの襞」との旅
私が初めて伊藤公象先生の作品を観たのは2009年、東京都現代美術館の展覧会「伊藤公象WORKS 1974-2009」でした。
スケールの大きなインスタレーションを観て、まるで身体が感電したような歓びが沸き上がってきました。「やっと本物に逢えた!」
そう思ったのを今でもハッキリと覚えています。こうして思い出している今でも、当時の感覚は蘇ってきます。
それまで延々と美術館、ギャラリー、各地のビエンナーレなどを観て廻る生活をしながらも感じることが無かった感覚でした。
以来、日本各地で開催される先生の展示を探して観に行くようになりました。
そして2013年、毎年開催されていた伊藤アトリエでの個展。会場には「BLUE PEARLの襞」が設置されていましいた。
その美しさと迫力と妖しさに、ただもう「凄い・・」と感じて時間が過ぎ・・ふと気が付くと先生が近くにいらしたので
「先生の作品はスケール大きいですから個人で所有するのは難しいですよね」と言うと、なんと先生から「この作品に関してのみ
個体で購入できるようにしています」とのお返事が!まさか個人で購入できると思っていなかったので、その場で飛び上がりたいのを
グッとこらえて購入の手続きをしたのです。本当は100個にしたいところを収納を考えて50個を購入。
当時、私は地元でライブカフェを始めようと物件を探している最中で、だいたい物件が決まりかけていたところでした。なので購入当初は
お店に「BLUE PEARLの襞」を設置しようと考えていました。それはとても良いアイディアのように思えましたが、どうにもスッキリせず
スタートできずにいました。こんなに素晴らしい作品を購入できたのに何故モヤモヤするのか?と数日間過ごしていたある夜。
いきなり「そうだBLUE PEARLは外に設置したほうが良いんだ!海や山やいろんな処へ運んで自然の中に設置して、それをインスタレーション撮影
すれば良いんだ!」と思いついたのです。その瞬間に店をやるのは止めて撮影する生活にしよう・・と決めていました。
とはいえ作者の伊藤先生の制作意図に反することはしたくなかったので、すぐアトリエに伺いインスタレーション撮影の許可をいただきました。
思い返せば先生の作品を撮影させてください・・とお願いしている時点で伊藤家の皆様は私がある程度カメラの扱いに慣れているのだと
思われたでしょう。だから「インスタレーション撮影は面白そうだからどうぞ、やってください」と快く受け入れてくださったと・・
ところが勢いで許可をもらった私は、それからカメラを買いに行くという、素人以前にカメラを持ってすらいなかったのです。
こうして写真がどれほど難しいかを知らずに撮影を開始。当然ですが思うようには撮影できず、半泣きで千葉県の九十九里浜や山梨県の富士五湖、
埼玉県の河原など・・BLUE PEARLを車に積み移動して設置、撮影を続けました。そして伊藤先生やご家族に見ていただきました。
伊藤家の皆様がいきなり現れた私を温かく受け入れてくださった事には感謝しかありません。
2014年10月石川県内灘海岸
2015年12月横谷渓谷
BLUE PEARLのインスタレーション撮影にのめり込むのと同時に先生の展覧会やイベントが在れば設営のお手伝いもさせて頂き、
合間に作品や設営風景の撮影もできました。
設営の際には、展示は何のためにするのか?作家として作品を表現するということへの責任とは?どこまで自分のイメージを追及するのか?
などの作家としての姿勢を学ばせていただきました。
それだけでも私にとって大変貴重な経験ですが、更にありがたいことに私がアトリエへ伺った際にも先生は新作の構想、展示イメージ、美術への
考え、自然界への想いなど、ありとあらゆるお話しをしてくださいました。私は2013年以降、今に至るまでずっと先生から教わり続けています。
この度、先生の作品集に自分の写真が使用されるということは私にとって想像もしたことのない奇跡のような光栄な出来事です。
今はこのエッセイを自分の個展会場で在廊しながら書いています。自分の作品で個展を開いたり写真集を発刊する際にも先生には何かと
ご協力いただきました。
来春、先生の作品集が出版された後も生み出される作品をまた撮影できるのが楽しみです。
2015年7月伊藤アトリエ前に設置のブルーパールと先生
(ほりえ ゆうこ)
■堀江ゆうこ ほりえゆうこ
2013年 造形作家、伊藤公象の作品を野外に設置しインスタレーション作品としての撮影を開始。
2015年~毎年、各地で個展開催。
2020年 4月初の写真集「Still Life」発売、銀座ギャラリー枝香庵にて発売記念の個展開催。
・伊藤公象、小泉晋弥、堀江ゆうこの三人によるリレーエッセイ「伊藤公象の世界」は、2022年9月までの一年間、毎月8日に掲載します。
●本日のお勧めは関根伸夫です
関根伸夫 Nobuo SEKINE
《絵空事―鳥居》
1975年
シルクスクリーン
45.0×35.0cm
Ed. 75
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
第3回 堀江ゆうこ「BLUE PEARLの襞」との旅
私が初めて伊藤公象先生の作品を観たのは2009年、東京都現代美術館の展覧会「伊藤公象WORKS 1974-2009」でした。
スケールの大きなインスタレーションを観て、まるで身体が感電したような歓びが沸き上がってきました。「やっと本物に逢えた!」
そう思ったのを今でもハッキリと覚えています。こうして思い出している今でも、当時の感覚は蘇ってきます。
それまで延々と美術館、ギャラリー、各地のビエンナーレなどを観て廻る生活をしながらも感じることが無かった感覚でした。
以来、日本各地で開催される先生の展示を探して観に行くようになりました。
そして2013年、毎年開催されていた伊藤アトリエでの個展。会場には「BLUE PEARLの襞」が設置されていましいた。
その美しさと迫力と妖しさに、ただもう「凄い・・」と感じて時間が過ぎ・・ふと気が付くと先生が近くにいらしたので
「先生の作品はスケール大きいですから個人で所有するのは難しいですよね」と言うと、なんと先生から「この作品に関してのみ
個体で購入できるようにしています」とのお返事が!まさか個人で購入できると思っていなかったので、その場で飛び上がりたいのを
グッとこらえて購入の手続きをしたのです。本当は100個にしたいところを収納を考えて50個を購入。
当時、私は地元でライブカフェを始めようと物件を探している最中で、だいたい物件が決まりかけていたところでした。なので購入当初は
お店に「BLUE PEARLの襞」を設置しようと考えていました。それはとても良いアイディアのように思えましたが、どうにもスッキリせず
スタートできずにいました。こんなに素晴らしい作品を購入できたのに何故モヤモヤするのか?と数日間過ごしていたある夜。
いきなり「そうだBLUE PEARLは外に設置したほうが良いんだ!海や山やいろんな処へ運んで自然の中に設置して、それをインスタレーション撮影
すれば良いんだ!」と思いついたのです。その瞬間に店をやるのは止めて撮影する生活にしよう・・と決めていました。
とはいえ作者の伊藤先生の制作意図に反することはしたくなかったので、すぐアトリエに伺いインスタレーション撮影の許可をいただきました。
思い返せば先生の作品を撮影させてください・・とお願いしている時点で伊藤家の皆様は私がある程度カメラの扱いに慣れているのだと
思われたでしょう。だから「インスタレーション撮影は面白そうだからどうぞ、やってください」と快く受け入れてくださったと・・
ところが勢いで許可をもらった私は、それからカメラを買いに行くという、素人以前にカメラを持ってすらいなかったのです。
こうして写真がどれほど難しいかを知らずに撮影を開始。当然ですが思うようには撮影できず、半泣きで千葉県の九十九里浜や山梨県の富士五湖、
埼玉県の河原など・・BLUE PEARLを車に積み移動して設置、撮影を続けました。そして伊藤先生やご家族に見ていただきました。
伊藤家の皆様がいきなり現れた私を温かく受け入れてくださった事には感謝しかありません。
2014年10月石川県内灘海岸
2015年12月横谷渓谷BLUE PEARLのインスタレーション撮影にのめり込むのと同時に先生の展覧会やイベントが在れば設営のお手伝いもさせて頂き、
合間に作品や設営風景の撮影もできました。
設営の際には、展示は何のためにするのか?作家として作品を表現するということへの責任とは?どこまで自分のイメージを追及するのか?
などの作家としての姿勢を学ばせていただきました。
それだけでも私にとって大変貴重な経験ですが、更にありがたいことに私がアトリエへ伺った際にも先生は新作の構想、展示イメージ、美術への
考え、自然界への想いなど、ありとあらゆるお話しをしてくださいました。私は2013年以降、今に至るまでずっと先生から教わり続けています。
この度、先生の作品集に自分の写真が使用されるということは私にとって想像もしたことのない奇跡のような光栄な出来事です。
今はこのエッセイを自分の個展会場で在廊しながら書いています。自分の作品で個展を開いたり写真集を発刊する際にも先生には何かと
ご協力いただきました。
来春、先生の作品集が出版された後も生み出される作品をまた撮影できるのが楽しみです。
2015年7月伊藤アトリエ前に設置のブルーパールと先生(ほりえ ゆうこ)
■堀江ゆうこ ほりえゆうこ
2013年 造形作家、伊藤公象の作品を野外に設置しインスタレーション作品としての撮影を開始。
2015年~毎年、各地で個展開催。
2020年 4月初の写真集「Still Life」発売、銀座ギャラリー枝香庵にて発売記念の個展開催。
・伊藤公象、小泉晋弥、堀江ゆうこの三人によるリレーエッセイ「伊藤公象の世界」は、2022年9月までの一年間、毎月8日に掲載します。
●本日のお勧めは関根伸夫です
関根伸夫 Nobuo SEKINE《絵空事―鳥居》
1975年
シルクスクリーン
45.0×35.0cm
Ed. 75
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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