宮崎県立美術館「生誕110年記念 瑛九展」レポート4
読者の皆様こんにちは。日々の冷え込みが激しい今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。このブログが公開される頃には冬季休廊1日目を満喫している(予定の)スタッフSこと新澤です。
先週から立て続けに各スタッフによる、宮崎県立美術館で開催されていた「生誕110年記念 瑛九展-Q Ei 表現のつばさ-」の観覧レポートが公開されていますが、私も観に行かせていただいたので、海外イベント紹介に代わってご報告させていただきます。
とはいえ、先週のスタッフMとスタッフIのレポートで展覧会自体は大いに語られていますので、自分は美術館に隣接する宮崎県立図書館が瑛九展に合わせて開催した企画展「瑛九~故郷(ふるさと)みやざきと家族の絆~」をご紹介します。

美術館の瑛九展もそうでしたが、図書館の企画展には作品以外の資料が多数展示してあり、点描の大作や数多くのフォトデッサンを世に生み出した瑛九という作家の、より人間的な面を想像させてくれました。
杉田秀夫少年が13歳の時に「金の船」に投稿した童話「山の中の豪傑」や、宮崎美術協会第1回展に寄せたあけすけな批評から、父・杉田直の日記に記された幼少期に異物を飲み込んでしまった事件や、実母との死別後、瑛九のみが新しい母に馴染めずいたこと等、自分が勝手に抱いていた、「物静かでひたすらに制作に取り組む作家」というイメージとは全然違うことに驚かされました。
特に興味深かったのは、エスペラント語についてです。
国際補助語としてはもっとも世界的に認知され、普及の成果を収めた言語であるエスペラント語は宮崎県に伝来した後は主に医学界を中心に広がり、家業が眼科医であった杉田家にも伝わりました。最初にエスペラント語に興味を持ったのは長男の杉田正臣だったそうですが、歳の離れた兄を慕っていた青年の杉田秀夫(当時はまだ瑛九と名乗っていませんでした)はその影響を受けてエスペラント語を学び始め、長じて兄との手紙のやり取りどころか、会話でさえエスペラント語で話すようになったそうです。そこに来て杉田家で開催された文化講座に参加し、兄弟が話すエスペラント語に興味を持って瑛九から習い始めたのが後の妻、谷口ミヤ子だったというのですから、エスペラント語とはまさしく瑛九にとって希望の言葉(「エスペラント」という単語は同言語の中で「希望する人」という意味)だったのではないでしょうか。
美術館の瑛九展の話になりますが、銅版画制作をしようと思い立ったものの、いざ始めるまで必要な設備などの知識が全くなく、設備も揃えられなかったために一旦諦めたことがあったり、フォトデッサン作成の際に自前の暗室を持っていなかったため、近所の写真館の暗室を私物同然に使い倒したり、ミヤ子夫人が卵のために飼っていた雌鶏を、「カッコいいから」と勝手に雄鶏に交換してしまったり、今わの際にも「絵が描きたい」と泣いていたことなど、通常の美術展では想像できない、一人の人間としての瑛九が見られた展覧会でした。
他のスタッフが快晴で宮崎を満喫した中、一人だけバケツをひっくり返したような豪雨の中の宮崎訪問だった自分ですが、そんな中でも「おぐら」の元祖チキン南蛮は美味しく、突風吹きすさぶホテル最上階の露天風呂もいいものでした。また宮崎に行く機会があれば、次は「おぐら」の牛南蛮に挑戦してみたいものです。
いかにも蛇足な結びで申し訳ございませんが、皆様どうぞ良い年末をお過ごしください。
(しんざわ ゆう)
宮崎県立図書館公式ページ
「瑛九~故郷(ふるさと)みやざきと家族の絆~」ページ
●本日のお勧めは瑛九です。
瑛九 Q Ei
《子供》
フォト・デッサン
25.2×18.9cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●宮崎県立美術館「生誕110年記念 瑛九ーQ Ei 表現のつばさ」
会期=2021年10月23日~12月5日(終了)
瑛九
*11月6日のブログで尾立麗子による内覧会のレポートを掲載しましたが、社長命令でその後もスタッフ3人が宮崎に赴き、小林美紀先生からレクチャーを受けました。そのレポートは順次ブログに掲載します。
スタッフMのレポート/12月19日ブログ
スタッフIのレポート/12月21日ブログ
スタッフSのレポート/12月26日ブログ
●冬季休廊のお知らせ
ときの忘れものは、12月26日(日)~1月3日(月)まで冬季休廊中です。
休廊中にいただいたメールには1月4日(火)以降に順次ご返信いたします。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
読者の皆様こんにちは。日々の冷え込みが激しい今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。このブログが公開される頃には冬季休廊1日目を満喫している(予定の)スタッフSこと新澤です。
先週から立て続けに各スタッフによる、宮崎県立美術館で開催されていた「生誕110年記念 瑛九展-Q Ei 表現のつばさ-」の観覧レポートが公開されていますが、私も観に行かせていただいたので、海外イベント紹介に代わってご報告させていただきます。
とはいえ、先週のスタッフMとスタッフIのレポートで展覧会自体は大いに語られていますので、自分は美術館に隣接する宮崎県立図書館が瑛九展に合わせて開催した企画展「瑛九~故郷(ふるさと)みやざきと家族の絆~」をご紹介します。

美術館の瑛九展もそうでしたが、図書館の企画展には作品以外の資料が多数展示してあり、点描の大作や数多くのフォトデッサンを世に生み出した瑛九という作家の、より人間的な面を想像させてくれました。
杉田秀夫少年が13歳の時に「金の船」に投稿した童話「山の中の豪傑」や、宮崎美術協会第1回展に寄せたあけすけな批評から、父・杉田直の日記に記された幼少期に異物を飲み込んでしまった事件や、実母との死別後、瑛九のみが新しい母に馴染めずいたこと等、自分が勝手に抱いていた、「物静かでひたすらに制作に取り組む作家」というイメージとは全然違うことに驚かされました。
特に興味深かったのは、エスペラント語についてです。
国際補助語としてはもっとも世界的に認知され、普及の成果を収めた言語であるエスペラント語は宮崎県に伝来した後は主に医学界を中心に広がり、家業が眼科医であった杉田家にも伝わりました。最初にエスペラント語に興味を持ったのは長男の杉田正臣だったそうですが、歳の離れた兄を慕っていた青年の杉田秀夫(当時はまだ瑛九と名乗っていませんでした)はその影響を受けてエスペラント語を学び始め、長じて兄との手紙のやり取りどころか、会話でさえエスペラント語で話すようになったそうです。そこに来て杉田家で開催された文化講座に参加し、兄弟が話すエスペラント語に興味を持って瑛九から習い始めたのが後の妻、谷口ミヤ子だったというのですから、エスペラント語とはまさしく瑛九にとって希望の言葉(「エスペラント」という単語は同言語の中で「希望する人」という意味)だったのではないでしょうか。
美術館の瑛九展の話になりますが、銅版画制作をしようと思い立ったものの、いざ始めるまで必要な設備などの知識が全くなく、設備も揃えられなかったために一旦諦めたことがあったり、フォトデッサン作成の際に自前の暗室を持っていなかったため、近所の写真館の暗室を私物同然に使い倒したり、ミヤ子夫人が卵のために飼っていた雌鶏を、「カッコいいから」と勝手に雄鶏に交換してしまったり、今わの際にも「絵が描きたい」と泣いていたことなど、通常の美術展では想像できない、一人の人間としての瑛九が見られた展覧会でした。
他のスタッフが快晴で宮崎を満喫した中、一人だけバケツをひっくり返したような豪雨の中の宮崎訪問だった自分ですが、そんな中でも「おぐら」の元祖チキン南蛮は美味しく、突風吹きすさぶホテル最上階の露天風呂もいいものでした。また宮崎に行く機会があれば、次は「おぐら」の牛南蛮に挑戦してみたいものです。
いかにも蛇足な結びで申し訳ございませんが、皆様どうぞ良い年末をお過ごしください。
(しんざわ ゆう)
宮崎県立図書館公式ページ
「瑛九~故郷(ふるさと)みやざきと家族の絆~」ページ
●本日のお勧めは瑛九です。
瑛九 Q Ei《子供》
フォト・デッサン
25.2×18.9cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●宮崎県立美術館「生誕110年記念 瑛九ーQ Ei 表現のつばさ」
会期=2021年10月23日~12月5日(終了)瑛九
*11月6日のブログで尾立麗子による内覧会のレポートを掲載しましたが、社長命令でその後もスタッフ3人が宮崎に赴き、小林美紀先生からレクチャーを受けました。そのレポートは順次ブログに掲載します。
スタッフMのレポート/12月19日ブログ
スタッフIのレポート/12月21日ブログ
スタッフSのレポート/12月26日ブログ
●冬季休廊のお知らせ
ときの忘れものは、12月26日(日)~1月3日(月)まで冬季休廊中です。
休廊中にいただいたメールには1月4日(火)以降に順次ご返信いたします。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、毎月展覧会(Web展)を開催し、美術書の編集事務所としても活動しています。
WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
ときの忘れものはJR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
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