こんにちわ、スタッフMです。
寒い日が続いておりますが皆様お元気でお過ごしでしょうか。
さて、1月29日はナム・ジュン・パイクさんの命日でした。
(Nam June Paik、漢字表記:白南準、1932年7月20日 - 2006年1月29日)
今年2022年は生誕90年でもあります。
そこで今回はパイクさんの夫人である久保田成子展の観覧レポートです。
●Viva Video! 久保田成子展
会 期:2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝)
休 館 日:月曜日(2022年1月10日、2月21日は開館)
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会 場:東京都現代美術館 企画展示室 3F
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/shigeko_kubota/
展覧会広報用動画(東京都現代美術館HPより引用)
上掲の動画内、1:17にはジョナス・メカスさんが「久保田成子は、とても重要なアーティストだ! 世界が評価すべきタイミングが来ている。久保田成子のためならば、なんでもしますよ! 久保田成子は最高だ!」と仰っています。
本展は、展覧会の企画およびカタログ中の論文が評価され、濱田真由美先生(新潟県立近代美術館 主任学芸員)、橋本梓先生(国立国際美術館 主任研究員)、西川美穂子先生(東京都現代美術館 学芸員)、由本みどり先生(ニュージャージー・シティ大学ギャラリー・ディレクター/准教授)の4氏が第32回倫雅美術奨励賞 美術評論部門を受賞されています。
会場の東京都現代美術館入り口(2022年1月10日撮影 )
企画展示室 3F 会場の入り口の看板
会場内は前半は撮影禁止。後半は撮影可能でした。(部分的に撮影禁止作品もあり)
私が伺った日は学芸員の西川美穂子先生によるギャラリートーク開催日で、私も参加させていただきました。西川先生ありがとうございました。
展示の前半では、久保田がヴィデオ彫刻を作り出すまでの経過が資料中心に展示されています。久保田は1937年新潟県にて高校教師の父と音楽教師の母のもとに生まれます。祖父も画家だったことで幼少期から絵が好きだったそう。高校卒業後には東京教育大学(現・筑波大学)の彫塑専攻に入学します。久保田成子といえばヴィデオ・アートの作家と思っていた私は、久保田が学生のころから彫刻を学んでいたと知り驚きました。
1963年に内科画廊で開催した初個展では、瀧口修造氏らに案内状を送付したり積極的にアピールをしたようですが期待した反応はなく失望してしまいます。そこで1964年に久保田は渡米を決意しました。ここで面白いのが、アメリカへ向かう飛行機には塩見允枝子さんが久保田と一緒に乗ったというのです。図録の中に塩見さんの文章が掲載されていたので引用します。冒頭の「翌年6月」とは1964年6月のことです。
「翌年6月の初めごろ、ニューヨークにいる秋山邦晴さんとジョージ・マチューナスから寄せ書きが届いて、渡米の決心をしました。その直後に同じようにニューヨークへ行こうかどうしようかと迷っていた久保田さんに会ったので、二人のほうが心丈夫だから一緒に行こう、ということになったんです。6月27日に開催されるフルクサスのコンサートに間に合うように行きたかったのですが、手続きに時間がかかって、結局到着は7月4日。マチューナスと秋山さんが空港へ迎えに来てくださり、キャナル・ストリートのロフトへ連れていってくれました。その後、隣のロフトに住んでいた靉嘔さん夫妻と斉藤陽子さんが歓迎パーティをしてくださったのです。」
塩見允枝子インタビュー 『Viva Video! 久保田成子展』図録(2021年、株式会社河出書房新社)41頁より引用
1968年3月5日にカナダのトロントでマルセル・デュシャンとジョン・ケージが行なったチェス対戦のイヴェントの模様を久保田成子が撮影した写真。
渡米後の久保田はフルクサスのイベントでパフォーマンスを行ったり、パイクと合流してヴィデオ・アートの制作を始めるようになります。
《ヴィデオ・ポエム》1970-1975年制作(2018年に主要部分を修復)。
《デュシャンピアナ:マルセル・デュシャンの墓》1972-1975年制作(2019年に主要部分を修復)。
《デュシャンピアナ:階段を下りる裸体》1976年制作。
本作は、ヴィデオ・アートとして初めてニューヨーク近代美術館(MoMA)が収蔵した作品となりました。西川先生によりますと、本当かどうかわからないが、久保田曰くパイクはそれを知って悔しがっていたそうです。
MoMAの公式サイトにも本作が掲載されており、久保田の肉声(英語)が聞くことができます。
https://www.moma.org/collection/works/81792?classifications=any&date_begin=Pre-1850&date_end=2022&q=kubota&utf8=%E2%9C%93&with_images=1

《デュシャンピアナ:ヴィデオ・チェス》1968-1975年制作。

《三つの山》1976~1979年制作。(2020年に主要部分の修復が行われた)
左は《三つの山》のドローイング。
1979年制作のセルフポートレートが印刷された便箋に水彩・ペンの作品。
《デュシャンピアナ:自転車の車輪》1983-1990年制作。車輪がモーターで動きます!
《韓国の墓》1993年制作。1980年代にプロジェクターが出てきてから久保田も作品に使用するようになりました。
《スケート選手》1991-1992年制作。フィギュアスケート選手の伊藤みどりさんをモチーフにしているそうです。このあたり彫刻を学んできた久保田ならではの感性が見えてきますね。
《スケート選手》の部分拡大。
《ナイアガラの滝》1985年制作。(2021年に主要部分の修復が行われた)映像が鏡で反射して壁にも映し出されていて映像が切り替わるたびに色々な表情が見れる作品。きれいです。
作品解説をする西川美穂子先生。
『Viva Video! 久保田成子展』図録(2021年、株式会社河出書房新社)
「Viva Video! 久保田成子展」チラシ表
「Viva Video! 久保田成子展」チラシ裏
駆け足で写真中心にご紹介しましたがいかがでしたか。
この展覧会は、久保田成子=ナム・ジュン・パイクの夫人と思っている人にとっては驚きと発見の展覧会になると思います。私がそうでした。
今回の出品作品のいくつかは、久保田成子ヴィデオ・アート財団が修復作業を行い、コロナ禍で作業が難しい中、1年以上をかけてようやく日本に運び込まれたそうです。その背景も知りながらヴィデオ・アートを見ると絵画を見るのとは違う視点の面白さもありますね。
最後に、久保田は1974~1982年までジョナス・メカスさんが主催するアンソロジー・フィルム・アーカイブでビデオ・キュレーターも務めていたとのことで、幅広い活動に驚きが尽きません。
展覧会は2月23日までです。
(スタッフM)
●本日のお勧めはナム・ジュン・パイクです。
ナム・ジュン・パイク Nam June Paik
《アレン・ギンズバーグの肖像》
スクリーンプリント
73.8×62.0cm
Ed.75
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
寒い日が続いておりますが皆様お元気でお過ごしでしょうか。
さて、1月29日はナム・ジュン・パイクさんの命日でした。
(Nam June Paik、漢字表記:白南準、1932年7月20日 - 2006年1月29日)
今年2022年は生誕90年でもあります。
そこで今回はパイクさんの夫人である久保田成子展の観覧レポートです。
●Viva Video! 久保田成子展
会 期:2021年11月13日(土)- 2022年2月23日(水・祝)
休 館 日:月曜日(2022年1月10日、2月21日は開館)
開館時間:10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会 場:東京都現代美術館 企画展示室 3F
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/shigeko_kubota/
展覧会広報用動画(東京都現代美術館HPより引用)
上掲の動画内、1:17にはジョナス・メカスさんが「久保田成子は、とても重要なアーティストだ! 世界が評価すべきタイミングが来ている。久保田成子のためならば、なんでもしますよ! 久保田成子は最高だ!」と仰っています。
本展は、展覧会の企画およびカタログ中の論文が評価され、濱田真由美先生(新潟県立近代美術館 主任学芸員)、橋本梓先生(国立国際美術館 主任研究員)、西川美穂子先生(東京都現代美術館 学芸員)、由本みどり先生(ニュージャージー・シティ大学ギャラリー・ディレクター/准教授)の4氏が第32回倫雅美術奨励賞 美術評論部門を受賞されています。
会場の東京都現代美術館入り口(2022年1月10日撮影 )
企画展示室 3F 会場の入り口の看板会場内は前半は撮影禁止。後半は撮影可能でした。(部分的に撮影禁止作品もあり)
私が伺った日は学芸員の西川美穂子先生によるギャラリートーク開催日で、私も参加させていただきました。西川先生ありがとうございました。展示の前半では、久保田がヴィデオ彫刻を作り出すまでの経過が資料中心に展示されています。久保田は1937年新潟県にて高校教師の父と音楽教師の母のもとに生まれます。祖父も画家だったことで幼少期から絵が好きだったそう。高校卒業後には東京教育大学(現・筑波大学)の彫塑専攻に入学します。久保田成子といえばヴィデオ・アートの作家と思っていた私は、久保田が学生のころから彫刻を学んでいたと知り驚きました。
1963年に内科画廊で開催した初個展では、瀧口修造氏らに案内状を送付したり積極的にアピールをしたようですが期待した反応はなく失望してしまいます。そこで1964年に久保田は渡米を決意しました。ここで面白いのが、アメリカへ向かう飛行機には塩見允枝子さんが久保田と一緒に乗ったというのです。図録の中に塩見さんの文章が掲載されていたので引用します。冒頭の「翌年6月」とは1964年6月のことです。
「翌年6月の初めごろ、ニューヨークにいる秋山邦晴さんとジョージ・マチューナスから寄せ書きが届いて、渡米の決心をしました。その直後に同じようにニューヨークへ行こうかどうしようかと迷っていた久保田さんに会ったので、二人のほうが心丈夫だから一緒に行こう、ということになったんです。6月27日に開催されるフルクサスのコンサートに間に合うように行きたかったのですが、手続きに時間がかかって、結局到着は7月4日。マチューナスと秋山さんが空港へ迎えに来てくださり、キャナル・ストリートのロフトへ連れていってくれました。その後、隣のロフトに住んでいた靉嘔さん夫妻と斉藤陽子さんが歓迎パーティをしてくださったのです。」
塩見允枝子インタビュー 『Viva Video! 久保田成子展』図録(2021年、株式会社河出書房新社)41頁より引用
1968年3月5日にカナダのトロントでマルセル・デュシャンとジョン・ケージが行なったチェス対戦のイヴェントの模様を久保田成子が撮影した写真。渡米後の久保田はフルクサスのイベントでパフォーマンスを行ったり、パイクと合流してヴィデオ・アートの制作を始めるようになります。
《ヴィデオ・ポエム》1970-1975年制作(2018年に主要部分を修復)。
《デュシャンピアナ:マルセル・デュシャンの墓》1972-1975年制作(2019年に主要部分を修復)。
《デュシャンピアナ:階段を下りる裸体》1976年制作。本作は、ヴィデオ・アートとして初めてニューヨーク近代美術館(MoMA)が収蔵した作品となりました。西川先生によりますと、本当かどうかわからないが、久保田曰くパイクはそれを知って悔しがっていたそうです。
MoMAの公式サイトにも本作が掲載されており、久保田の肉声(英語)が聞くことができます。
https://www.moma.org/collection/works/81792?classifications=any&date_begin=Pre-1850&date_end=2022&q=kubota&utf8=%E2%9C%93&with_images=1

《デュシャンピアナ:ヴィデオ・チェス》1968-1975年制作。
《三つの山》1976~1979年制作。(2020年に主要部分の修復が行われた)
左は《三つの山》のドローイング。
1979年制作のセルフポートレートが印刷された便箋に水彩・ペンの作品。
《デュシャンピアナ:自転車の車輪》1983-1990年制作。車輪がモーターで動きます!
《韓国の墓》1993年制作。1980年代にプロジェクターが出てきてから久保田も作品に使用するようになりました。
《スケート選手》1991-1992年制作。フィギュアスケート選手の伊藤みどりさんをモチーフにしているそうです。このあたり彫刻を学んできた久保田ならではの感性が見えてきますね。
《スケート選手》の部分拡大。
《ナイアガラの滝》1985年制作。(2021年に主要部分の修復が行われた)映像が鏡で反射して壁にも映し出されていて映像が切り替わるたびに色々な表情が見れる作品。きれいです。
作品解説をする西川美穂子先生。
『Viva Video! 久保田成子展』図録(2021年、株式会社河出書房新社)
「Viva Video! 久保田成子展」チラシ表
「Viva Video! 久保田成子展」チラシ裏駆け足で写真中心にご紹介しましたがいかがでしたか。
この展覧会は、久保田成子=ナム・ジュン・パイクの夫人と思っている人にとっては驚きと発見の展覧会になると思います。私がそうでした。
今回の出品作品のいくつかは、久保田成子ヴィデオ・アート財団が修復作業を行い、コロナ禍で作業が難しい中、1年以上をかけてようやく日本に運び込まれたそうです。その背景も知りながらヴィデオ・アートを見ると絵画を見るのとは違う視点の面白さもありますね。
最後に、久保田は1974~1982年までジョナス・メカスさんが主催するアンソロジー・フィルム・アーカイブでビデオ・キュレーターも務めていたとのことで、幅広い活動に驚きが尽きません。
展覧会は2月23日までです。
(スタッフM)
●本日のお勧めはナム・ジュン・パイクです。
ナム・ジュン・パイク Nam June Paik《アレン・ギンズバーグの肖像》
スクリーンプリント
73.8×62.0cm
Ed.75
サインあり
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