スタッフSの海外ネットサーフィン No.99
「Peter Cook - City Landscape」
Louisiana Museum of Modern Art, Denmark
読者の皆様こんにちは。東京都でも大雪警報が発令されるほど(実際には左程降りませんでいたが)底冷えする日が続く今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。家の型落ちエアコンでは全く部屋が暖まらないため、ファンヒーターが生活必需品と化しております、スタッフSこと新澤です。
今回は久々に、海外の展覧会をご紹介させていただきます。
舞台となるのはデンマーク、コペンハーゲンの北郊外にある邸宅を改装したルイジアナ近代美術館。関係者の多くから「世界一美しい美術館」と賞賛される美術館です。収蔵品はロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、パブロ・ピカソ等があり、美術館の2つの棟の間に設けられた彫刻の庭にはヘンリー・ムーアやアレクサンダー・カルダーの立体作品が展示されています。
一般的に近現代美術館の名前は「地名+現代美術館」というケースが多いので、初めてこの美術館を知った時には「デンマークなのにルイジアナ?」と首を傾げたものですが、調べてみるとこの名前は建物の最初の持ち主であったAlexander Brunにちなんで名付けられているそうです。曰く、同氏は3度結婚したが、どの妻の名前もルイーズであったとか。

ルイジアナ近代美術館を代表する展示室「ジャコメッティ・ルーム」。設立者クヌド・W・イェンセン氏が特に気に入っていたという池の眺めと《歩く男》が融け合い、この空間が一つの作品のようにも見えます。
そんなルイジアナ近代美術館で先月末から5月まで開催されているのがナイトの称号を持つイギリスの建築家ピーター・クックの個展「Peter Cook - City Landscape」です。

今回の展覧会で変わっている部分といえば、ずばり展示内容です。通常建築家の展覧会と言えばブループリントや設計時に作成した模型、建築時や完成後の外観、内観写真等が網羅されるイメージがありますが、今回美術館はそういったものは扱わず、60年代のイエロー・サブマリンを彷彿させるドローイングから、2020年の新作 “Tuscan Hilltop Town”と“Filter City”シリーズまで、クック卿が60年間の間に描き続けてきたドローイングのみを展示しています。

ピーター・クックの建築といえば、上記の「フレンドリーエイリアン」の愛称で知られるクンストハウス・グラーツ(グラーツ、オーストリア)等が有名ですが、今展覧会ではそれらの実存建築についてはほぼ触れておらず、「都市の従来の概念を揺るがし」、「仕様や材質の制約に囚われない」自由な都市が描かれたドローイングを主題としています。展示作品は建築家本人のコレクションから提供されており、幾つかの作品は実際の建築コンペに応募されたこともあるようです(ファンタジー過ぎて当然のように落選したそうですが)。
今回の展覧会にあたり、ルイジアナ近代美術館はクック卿をインタビューした15分超の動画をYouTubeに掲載しています。
インタビューの中でクック卿は、作品を手描きすることの利点や、批評家が彼の建築アイデアを夢想と呼ぶことに同意しない理由を語っています。
“By the critics and the regular people saying it’s utopian, you put it into a pigeonhole that says: ‘Oh, those sorts of architects are utopian, but we are normal architects.’ So, the delight I get out of doing buildings is to say: Screw you, it can be built.”
「私のアイデアに夢想とレッテルを貼ることで、批評家や一般の人間は「ああ、あれらの建築は夢想だね、私達のような普通の建築家には関係ないよ」と棚上げする。私が建築をする上で愉しみしていることは、こいつらに「くそくらえだ、コイツは実現できるんだよ」と突き付けてやることなのさ」
お時間があれば、80歳を超えて尚矍鑠と制作に取り組むクック卿の雄姿をご覧ください。
(しんざわ ゆう)
●今村 創平さんのfacebookより、
Peter Cook
先月末、デンマークのルイジアナ美術館でピーター・クックの展覧会が始まった(Peter Cook – City Landscape、5月下旬まで)。合わせて公開されたこの動画では、なぜドローイングを手で描くのかが語られている。85歳のピーターが、今でもロットリングを使ってドローイングを描いている様子は感動的。学生時代は、自分よりドローイングがうまい奴ばかりだったとか。ピーターの語りも懐かしい。いつまでもドローイングを描き続けて欲しい。
Our dearest Peter Cook! Your drawings are amazing all the time!
●ときの忘れものでは3月25日(金)~4月3日(日)の10日間、会期中無休で建築家・佐藤研吾さんの二度目の個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を開催します。
ちょうど「WHAT MUSEUM」が、本日2月26日(土)と27日(日)の2日間、「建築と言葉」をテーマにしたトークセッションおよびリレー形式での詩の朗読イベントを開催し、YouTubeでライブ配信されます。その第一日目に佐藤さんが登壇し、能作文徳氏と自身が設計した建築と、それを元に文芸家に紡ぎ出された言葉の関係について思考したことや、文芸家との関わりを通して気づいたことなどを中心に話すとのこと、ぜひ皆さん登録してご覧ください。
2月26日16:00-/建築家・能作文徳、佐藤研吾
2月27日15:00-/朗読リレー 谷川俊太郎、小池昌代、四元康祐、覚和歌子、高貝弘也、杉本真維子、カニエ・ナハ、岡本啓、暁方ミセイ
詳しくはコチラから。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています。WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
「Peter Cook - City Landscape」
Louisiana Museum of Modern Art, Denmark
読者の皆様こんにちは。東京都でも大雪警報が発令されるほど(実際には左程降りませんでいたが)底冷えする日が続く今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。家の型落ちエアコンでは全く部屋が暖まらないため、ファンヒーターが生活必需品と化しております、スタッフSこと新澤です。
今回は久々に、海外の展覧会をご紹介させていただきます。
舞台となるのはデンマーク、コペンハーゲンの北郊外にある邸宅を改装したルイジアナ近代美術館。関係者の多くから「世界一美しい美術館」と賞賛される美術館です。収蔵品はロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホル、パブロ・ピカソ等があり、美術館の2つの棟の間に設けられた彫刻の庭にはヘンリー・ムーアやアレクサンダー・カルダーの立体作品が展示されています。
一般的に近現代美術館の名前は「地名+現代美術館」というケースが多いので、初めてこの美術館を知った時には「デンマークなのにルイジアナ?」と首を傾げたものですが、調べてみるとこの名前は建物の最初の持ち主であったAlexander Brunにちなんで名付けられているそうです。曰く、同氏は3度結婚したが、どの妻の名前もルイーズであったとか。
ルイジアナ近代美術館を代表する展示室「ジャコメッティ・ルーム」。設立者クヌド・W・イェンセン氏が特に気に入っていたという池の眺めと《歩く男》が融け合い、この空間が一つの作品のようにも見えます。
そんなルイジアナ近代美術館で先月末から5月まで開催されているのがナイトの称号を持つイギリスの建築家ピーター・クックの個展「Peter Cook - City Landscape」です。

今回の展覧会で変わっている部分といえば、ずばり展示内容です。通常建築家の展覧会と言えばブループリントや設計時に作成した模型、建築時や完成後の外観、内観写真等が網羅されるイメージがありますが、今回美術館はそういったものは扱わず、60年代のイエロー・サブマリンを彷彿させるドローイングから、2020年の新作 “Tuscan Hilltop Town”と“Filter City”シリーズまで、クック卿が60年間の間に描き続けてきたドローイングのみを展示しています。
ピーター・クックの建築といえば、上記の「フレンドリーエイリアン」の愛称で知られるクンストハウス・グラーツ(グラーツ、オーストリア)等が有名ですが、今展覧会ではそれらの実存建築についてはほぼ触れておらず、「都市の従来の概念を揺るがし」、「仕様や材質の制約に囚われない」自由な都市が描かれたドローイングを主題としています。展示作品は建築家本人のコレクションから提供されており、幾つかの作品は実際の建築コンペに応募されたこともあるようです(ファンタジー過ぎて当然のように落選したそうですが)。
今回の展覧会にあたり、ルイジアナ近代美術館はクック卿をインタビューした15分超の動画をYouTubeに掲載しています。
インタビューの中でクック卿は、作品を手描きすることの利点や、批評家が彼の建築アイデアを夢想と呼ぶことに同意しない理由を語っています。
“By the critics and the regular people saying it’s utopian, you put it into a pigeonhole that says: ‘Oh, those sorts of architects are utopian, but we are normal architects.’ So, the delight I get out of doing buildings is to say: Screw you, it can be built.”
「私のアイデアに夢想とレッテルを貼ることで、批評家や一般の人間は「ああ、あれらの建築は夢想だね、私達のような普通の建築家には関係ないよ」と棚上げする。私が建築をする上で愉しみしていることは、こいつらに「くそくらえだ、コイツは実現できるんだよ」と突き付けてやることなのさ」
お時間があれば、80歳を超えて尚矍鑠と制作に取り組むクック卿の雄姿をご覧ください。
(しんざわ ゆう)
●今村 創平さんのfacebookより、
Peter Cook
先月末、デンマークのルイジアナ美術館でピーター・クックの展覧会が始まった(Peter Cook – City Landscape、5月下旬まで)。合わせて公開されたこの動画では、なぜドローイングを手で描くのかが語られている。85歳のピーターが、今でもロットリングを使ってドローイングを描いている様子は感動的。学生時代は、自分よりドローイングがうまい奴ばかりだったとか。ピーターの語りも懐かしい。いつまでもドローイングを描き続けて欲しい。
Our dearest Peter Cook! Your drawings are amazing all the time!
●ときの忘れものでは3月25日(金)~4月3日(日)の10日間、会期中無休で建築家・佐藤研吾さんの二度目の個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を開催します。
ちょうど「WHAT MUSEUM」が、本日2月26日(土)と27日(日)の2日間、「建築と言葉」をテーマにしたトークセッションおよびリレー形式での詩の朗読イベントを開催し、YouTubeでライブ配信されます。その第一日目に佐藤さんが登壇し、能作文徳氏と自身が設計した建築と、それを元に文芸家に紡ぎ出された言葉の関係について思考したことや、文芸家との関わりを通して気づいたことなどを中心に話すとのこと、ぜひ皆さん登録してご覧ください。
2月26日16:00-/建築家・能作文徳、佐藤研吾
2月27日15:00-/朗読リレー 谷川俊太郎、小池昌代、四元康祐、覚和歌子、高貝弘也、杉本真維子、カニエ・ナハ、岡本啓、暁方ミセイ
詳しくはコチラから。
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。もともと住宅だった阿部勤設計の建物LAS CASASを使って、企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています。WEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>の特集も是非ご覧ください。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊。
コメント