たいへんお待たせいたしました。
この度、クラウドファンディング「日本を代表する現代アーティスト、伊藤公象集大成となる作品集制作へ」で多くの方にご支援をいただいた、半世紀に及ぶ活動の軌跡をまとめた『ITO KOSHO 伊藤公象作品集』がようやく完成しました。
予定より大幅におくれましたことを深くお詫びいたします。
ご予約いただいた方には順次発送いたします。
伊藤公象の作品はインスタレーションがゆえに、展覧会が終わると同時に分解され、現存しない作品がほとんどです。それらは、次の展示の機会を待ち、別の場所で微妙にヴァリエーションを変えて展示されます。本書はその特性を画集として再現することを目指し、1972年以降のインスタレーションを分類、且つ逆時系列順に並べた構成としました。また、展示写真はその当時撮影した媒体をそのまま載せています。
伊藤公象が長年創造してきた作品を網羅した『ITO KOSHO 伊藤公象作品集』を是非お手に取ってご覧ください。

伊藤公象作品集_表紙
伊藤公象作品集_中の表紙
伊藤公象作品集_中のページ2
伊藤公象作品集_中のページ

ITO KOSHO 伊藤公象作品集
刊行:2022年
著者:伊藤公象
監修:小泉晋弥
監修助手:田中美菜希(ARTS ISOZAKI)
企画:ARTS ISOZAKI(代表・磯崎寛也)
執筆:小泉晋弥、伊藤公象、磯崎寛也
デザイン:林 頌介
写真:内田芳孝、堀江ゆうこ、他
体裁:サイズ30.6×24.6×1.6cm、164頁
日本語・英語併記
発行・編集:ときの忘れもの
価格: 3,300円(税込)

陶オブジェ付の特別頒布(限定50個): 25,300円(税込)+桐箱代3,000円+梱包送料1,600円

*桐箱不要の方はダンボールの箱にお入れします(無料)。
特別版2

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作品集刊行記念展と詩集挿画に思う事

伊藤公象


2022年6月3日、ときの忘れもの(東京)で「伊藤公象作品集刊行記念展―ソラリスの襞」の初日を迎えることができた。次いで6月10日から、銀座蔦屋で開催される磯崎寛也氏の初詩集「ソラリスの襞」の刊行記念発表会が開かれる。その記念すべき詩集の挿画(新たな作法によるドローイング)に拙作が用いられた。

思えば2019年秋、ARTS ISOZAKI (水戸)での個展、そして作品集の巻頭になる二度目の個展「ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」を契機に磯崎寛也氏の企画発案、小泉晋弥氏監修のもとに卒寿の記念にもなる作品集が「ときの忘れもの」から刊行される。その作品集の製作費はクラウドファンディングによるもので、磯崎氏を代表に多くの有志が働きかけ、多額の資金を得て実行された。
約半世紀になる土を主な素材にした国内外の美術館や画廊などでの制作発表活動を俯瞰され、一冊の本を創られた各位にただただ感謝したい。加えて、「ときの忘れもの」での作品集刊行記念個展の開催、磯崎寛也詩集の挿画委嘱と、かつて無いご厚情をいただいた。あらためて心からの謝辞を申しのべる。

実は、作品集や詩集の挿画は終活、即ち九十歳を超えた身の最後の仕事だと言う思いがあった。磯崎氏は死の淵から生を得たと詩集に綴られている。僕にも2度そのようなことがある。子供のころ赤痢に罹り、救急車で専門病院へ。医師からもう好きなものを与えて下さいと母に告げられ、それでも母は三日三晩寝ずに祈り、奇跡的に蘇生した。今も脳裏にしるされているが、救急車に乗せられた僕を、白衣と手に鈴のようなものを持った天使が暗闇の中を両側に並んでいた。が、救急車が動き出すと同時にふっと消えた。また、1990年の正月早々、胸部の膿疱摘出で背中から斜に50センチの手術を受けた。こぶし大の膿疱が肥大してパンクのように肺に穴をあけたのだ。治療初めに膿疱を萎縮させる薬方を試みたのだが、その激痛に耐え難く手術を選んだ。手術室に入るとき、妻にもしものときは太平洋と故郷金沢の日本海に散骨をと頼んだ。

後期高齢になると、難聴や言語の衰え、膝、腰が弱り、歩行もおぼつかない。幸い名医に恵まれ、胆石や胆嚢摘出は術後も良好だ。ただ妻や息子夫婦には世話を掛け、今回の個展の展示や、初日には車に乗せて貰いなんとか出席できた。それに、パソコンでの操作やメール、チャットなど頭の回転はともかく、片指でのキー打ちは疲れる。誤変換や確認の詰めが甘い。FBでメールやチャットのメッセージや返信を控えさせて頂くお願いをしたが、思い出のシェア、身近な光景や新作の投稿などについ手を出してしまう。唯一制作の他にFBでの会話が楽しく、孤独を紛らしているのかも知れない。

さて、作品集刊行記念展と詩画についてこの機会に述べさせて頂く。
先に終活についての生死を述べたが、一作家としては終活と制作は=する。個展の場合は当然ながら作品展示のこと以外は無に等しい。合理的なことには頭が空になる。
作品集刊行記念展はインスタレーションが主体なので、当時の状況が思い浮かぶ。14、5年になる美術大学での勤めから、学生の手を借りた展示作業の数々、そして展示が完成して展覧会がはじまると、すぐに次の作品を考えてしまう。詩でも絵でもそうではないだろうか! 
「ソラリスの襞」のタイトルでまず思い浮かべたのは「惑星ソラリス」だった。「ときの忘れもの」での展示は、一般的に美術館や画廊に無い空間、居住空間を「惑星ソラリス」から降り注ぐ襞をと意図した。庭に、各階や階段に、壁面にと。「惑星ソラリス」の襞に包まれた仮設の新たな空間を演出することだった。

詩画に話を移そう。
詩集にドローイングをと磯崎氏からお話をいただいたとき、何故僕にと思った。氏は絵も描かれるからそれだけで詩画集が出来る。なのに伊藤にと言うのは、ドローイングを描かせて伊藤のドローイングを広めようと言う意味合いを感じた。ドローイングについては詩集にも記したが、線の筆致を重視することは承知していたが、今日のアート表現でドローイングを新たな視点から見ることの意味を探って見たかった。
30数点を一気に作り上げて、20点を挿画用に。残りはお蔵入りである。 

「ときの忘れもの」には新作のドローイングと惑星ソラリスの襞による卵形と球形のコラージュも。また、未発表の陶造形や、お蔵入りから家人が見つけ出した旧作も加えた展示である。

今回、二つの作品発表が、どのような批評を得られるのか、関係各位に深謝するとともに、老化した脳裏にしかと刻みたいと思う。

長文の記述をご容赦願います。

2022年6月吉日


伊藤公象作品集刊行記念展―ソラリスの襞(終了しました)

●栃木県立美術館友の会会報「すずかけの庭」にご紹介いただきました。
栃木県立美術館_会報誌


●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊