杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」第82回

ふたばを訪れて。


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新年明けましておめでとうございます。
昨年はときの忘れものでの初個展、スイスで事務所設立と、少しずつ仕事を前へ進めてきましたが、自分が思い描いていた年始めの計画には程遠い一年でした。
今年は、昨年以上に毎日少しずつ新しいことに取り組んでいきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

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昨年末、日本アルベルゲ協会(詳しくは8日のブログを参照)とともに始まったプロジェクトのために、福島県双葉町へ向かいました。ちょうど日本海側で豪雪が訪れる少し前の12月中旬、東京駅から特急ひたちに乗って3時間半弱、乗り換えなしで着いた双葉駅のホームに降りると、目の前には駅西復興住宅の建設現場(一部は竣工)がありました。

震災から11年。僕は当時、日本にいなかったため被災することはありませんでした。その後もいつか訪れたい、訪れなければと思いながらも実現できず、11年たった今ようやく訪れることができました。駅東側から東日本大震災・原子力災害伝承館へ向かう風景を見ながら、ようやくここへ来れたという感慨深い思いと「さぁ自分に何ができるだろうか。きっと何かはできるだろう」という使命感にも似た思いが混ざり合った気持ちになりました。

双葉町は昨年9月に避難解除がなされたばかりで、街としてはまだ閑散としていました。多くの住宅は除染解体され、駅前なのに多くの更地があるという状況です。。

令和元年に先立って避難解除された隣町の大熊町は大川原復興拠点で復興公営住宅へ入居が始まり、新しい学校も建設中で復興が進んでいます。その様子をみると、もちろん状況は違えども、双葉町も少しずつ、町内に人の営みが戻ってくることが期待できます。

何より、こうして縁あって訪れたからには全力で進みたいと思います。

(すぎやま こういちろう)

杉山幸一郎 Koichiro SUGIYAMA
日本大学高宮研究室、東京藝術大学大学院北川原研究室にて建築を学び、在学中にスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ピーターメルクリ スタジオ)に留学。
2014年文化庁新進芸術家海外研修制度によりアトリエ ピーターズントーにて研修、2021年まで同アトリエ勤務。
2021年秋からスイス連邦工科大学デザインアシスタント。建築設計事務所atelier tsu。
2022年1月ときの忘れものにて初個展「杉山幸一郎展 スイスのかたち、日本のかたち」を開催、カタログを刊行。
世の中に満ち溢れているけれどなかなか気づくことができないものを見落とさないように、感受性の幅を広げようと日々努力しています。

・ 杉山幸一郎のエッセイ「幸せにみちたくうかんを求めて」は毎月10日の更新です。
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関根伸夫展―旅する人
会期:2023年1月20日[金]~2月4日[土] 11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
出品作品の詳細については1月12日ブログをご参照ください。
関根伸夫展案内状_表1280

●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊