「香港訪問記:アート・バーゼル香港」
東海林 洋(ポーラ美術館 学芸員)
美術館という施設で仕事をしていると、作品が静かな収蔵庫や展示室という場所に落ち着いている姿に慣れきってしまうのだが、本来のアートというものは、作家がアトリエで格闘し、画商やコレクター、同業の作家、批評家たちとの議論の末に、刺激や影響を与え合って生み出され、歴史が編まれていく。残念ながら現地を訪ねることはできなかったが、ときの忘れものの皆様より、昨年の「アートバーゼル・マイアミビーチ」(2022年12月1日~3日開催)のお話を伺うにつれ、美術館では感じられない生き生きとしたアートの動きを感じたくなってきた。
海外ではキュレーターが情報収集のためにフェアに足を運び、美術館とは異なる視点からアート業界の動向をチェックしているという。新型コロナの混乱が明け始めた機を見て、私も高まる関心を胸に国際的なアートマーケットの拠点である香港に赴いた。ほぼ3年のコロナ禍のなかですっかり遠のいてしまった海外渡航のリハビリとして、2023年3月の香港とは恰好のタイミングであった。
2023年3月22日、羽田空港から約4時間のフライトで香港国際空港に到着。検疫や審査など曖昧な情報が多く、下調べに時間を要したものの、思った以上にすんなりとした入国であった。さすがの国際都市である。 返還後は年々中国化が進んでいるというが、今はまだ香港島は欧米とアジアが半々に混在した街である。
■Art Basel香港
さて、アート・バーゼル香港は臨海エリアに位置する香港会議展覧中心(HKCEC)という東京国際展示場や幕張メッセのような巨大ホールの2フロアを会場に、一般公開3日間と関係者向けの2日間、計5日間にわたって開催された。パンデミックのなかで規模を縮小した前回までと比べ、世界32の国と地域から177のギャラリーが集うフルサイズの開催となった。

私が尋ねた3月22日は、ほぼ招待者のみが入場できるベルニサージュの時間だったので、それほど混雑してはいなかったが、最終日には異様なまでの混雑だったらしい。アート・バーゼル公式SNSアカウントでは広告も利用しながら活用して会場の様子や見どころをアップし、市内各地でも関連展示を行ってフェアの機運を盛り上げている。市街地の主要箇所にアートフェアの広告が掲出される様子は日本では見ないのではないだろうか。

市街地に掲出された広告
記録なども含めて詳細はこちらの公式ウェブサイトを参照されたい。
https://www.artbasel.com/hong-kong
メイン会場となる1Fのエントランス付近には、擬人化した植物をモチーフとした天井から吊られたトレヴァー・イエンの作品が来場者を迎える。

「エンカウンターズ」トレヴァ―・イエン《庇の下のキュドル氏》2021年

「エンカウンターズ」スタニスラヴァ・ピンチャック《ワイン・ダーク・シー》2022-2023年
■出展・企画のカテゴリー
会場内の出展スペースや企画は6つのカテゴリーに分かれている。
・ギャラリーズGalleries
世界を代表する134の近現代美術ギャラリーが出展し、20-21世紀の展示を行うアート・バーゼルの中核。
・インサイトinsights
19のギャラリーによる、アジア太平洋地域のアーティストの個展、あるいはキュラトリアル・プロジェクト。
・ディスカバリーDiscoveries
24のギャラリーによる世界中の傑出した作品に光をあてるソロ・プロジェクト。
・エンカウンターズEncounters
世界のアートシーンを牽引するアーティストによる大規模な彫刻やインスタレーション、パフォーマンス。「This present, moment」というテーマのもと、キュレーターであるアレクシィー・グラス・カントワーが選出した作品である。
・カビネットKabinett
ギャラリーのセクションの一部を使ってテーマにもとづいたグループ展を行い、美術史的な展示や個展を行う15の企画。
・フィルム Film
香港アートセンターで行われる映像プログラム。8つのスクリーンで29のフィルムを無料上映する。
このほか、会場の外に雑誌メディアや提携する媒体などのコーナーMagazineや関連企画も用意され、Conversationなどのプログラムも開催されている。
■LEVEL 1
ギャラリーズの代表であるGagosianやDavid Zwirner、Pace、Hauser & Wirthなど、いわゆる世界のメガギャラリーが会場の中心を占めているが、20以上のスペースを出展する日本の存在も目立つ。

メガギャラリーの代表Pace

Hauser & Wirthでは2023年に中国の和美術館で個展を開催するロニ・ホーンの作品を展示

インドのギャラリーVedehra
■LEVEL 3
モダンアートやオーセンティックな作品を扱うLEVEL 3の会場は、日本から思文閣や東京画廊らが参加している。香港やアジア圏の新興ギャラリーが多く参加する「ディスカバリーズ」もこのフロアに集い、アジアの活気ある雰囲気を感じられるエリアでもある。アレキサンダー・コールダーを中心に、色彩が響き合うようにフォンタナ、ミロを配するHelly Nahmad Londonの展示、ブランクーシとマティスのポートレイトを組み合わせるKasminなど、私のような近代美術の学芸員ならば憧れるような展示は非常に見応えがある。

Helly Nahmad London

Kasmin
ギャラリースペース内での個展カビネットのなかでは、Zeno Xによる伝説的なファッション・デザイナーであったマルタン・マルジェラの作品展示が注目を集めていた。

Zeno Xによるカビネット企画「マルタン・マルジェラ」

新興ギャラリーが集う「ディスカバリーズ」
アート・バーゼルに参加を希望するギャラリーは、展示のコンセプトや図面をかなり前に提出して審査を受ける。この審査のハードルが高く、イベントを単に売買会場ではなく、展示の質や意義を重んじた、見応えのあるものにしているようだ。海外の国際的なアートフェアを訪ねたのは初めての経験だったが、美術館とは全く異なる活気に大きな刺激を受け、海外のギャラリーに触れるだけではなく、むしろ日本における美術史の将来について考える機会となった。会期に合わせてピピロッティ・リストがM+の建築壁面に投影する新作映像を発表するなど、アートが持つ大きなエネルギーにたった4時間のフライトで出会うことができる。まだ行かれたことの無い日本の学芸員の方々にもぜひオススメしたい。
■異国で日本の美術を見直すこと

アジア太平洋のアートに焦点を当てた「インサイト」
巨匠の作品を前面に出したメガギャラリーに対して、日本のギャラリーは戦後美術の作家と現代美術とを織り交ぜた展示が目立つ。特に木彫、あるいは木を素材とした作家が多かったことは印象的である。 斎藤義重(Takuro Someya Contemporary Art)、から、その教え子であるもの派の小清水漸(YOD)や菅木志雄(Koyama Tomio、東京画廊など)、平面を彫った李禹煥の作品(SCAI The Bathhouse)、そしてポストもの派の戸谷成雄の木彫をもとにしたブロンズ作品(ShugoArts)などなど、ギャラリーのカテゴリーも別にする複数のギャラリーを横断して、日本の戦後美術における系譜が浮かび上がってくる。

斎藤の再制作作品(オリジナルは消失)を、岡崎乾二郎作品とともに展示したTakuro Someya Contemporary Art

YODで木彫の連作を出展された小清水先生と稿者

実は上記の斎藤作品の再制作は、教え子であった小清水先生たちが手伝ったのだった。再制作についてお話を伺う
もしかすると、もの派以降の作家について大規模な展覧会が準備されている(市場的な)前哨戦なのかも知れないが、日本の戦後美術への注目の高さを感じる。よく知られた欧米の作家に比べて、まだ国際化していない日本のアートを、歴史的な文脈とともにコンテンポラリー作品と提示することで世界の中に位置づける場所となっている。

アート・バーゼルの各会場の現在時刻を示す時計
日本の近現代美術史は、他のアジア圏に比べて早い時期から美術館や画廊関係者、研究者らよって、精緻で思慮深い視点から歴史を形成してきた。しかし、それはどこか「世界史」から切り離された島国的で内向的なものではなかっただろうか。国際的な動向と接続した具体/GUITAIを裂け目にして、海外から日本の近現代美術に注目が集まりはじめて10年あまり。日本の美術を世界やアジアの事象と比較する機会が生まれてきているように感じた。
しかし、日本の近現代美術をアジアや世界の文脈のなかで相対化する必要性というものに本当の意味で気付かされたのは、アート・バーゼル香港を訪れた翌日、2021年に開館した巨大な美術館M+を訪ねてからであった。それはまた別の記事にまとめたい。

会場より香港市内を望む
■東海林 洋(しょうじ よう)
ポーラ美術館学芸員。1983年生まれ。2011年よりポーラ美術館に勤務。主な担当展覧会に「ルドン ひらかれた夢―幻想の世紀末から現代へ」、「シュルレアリスムと絵画:ダリ、エルンストと日本の『シュール』」など。ひろしま美術館と共同で企画した「ピカソ:青の時代を超えて」展が2023年5月28日(日)まで、ひろしま美術館(広島)で開催中。
「ピカソ 青の時代を超えて」
会期:2023年2月4日(土)~5月28日(日)
会場:ひろしま美術館
https://www.hiroshima-museum.jp/special/detail/202302_Picasso.html
勤務するポーラ美術館では
「部屋のみる夢:ボナールからティルマンス、現代の作家まで」展が開催中です。
会期:2023年1月28日(土)~7月2日(日)
会場:ポーラ美術館
https://www.polamuseum.or.jp/sp/interiorvisions/
●本日のお勧め作品は李禹煥です。

李禹煥 Lee UFAN 《項 B》
1979年
木版(和紙)
イメージサイズ:59.7×80.5cm
シートサイズ:73.5×106.0cm
Ed.30 サインあり
●倉俣史朗の限定本『倉俣史朗 カイエ Shiro Kuramata Cahier 1-2 』を刊行しました。
限定部数:365部(各冊番号入り)
監修:倉俣美恵子、植田実
執筆:倉俣史朗、植田実、堀江敏幸
アートディレクション&デザイン:岡本一宣デザイン事務所
体裁:25.7×25.7cm、64頁、和英併記、スケッチブック・ノートブックは日本語のみ
価格:7,700円(税込) 送料1,000円
詳細は3月24日ブログをご参照ください。
お申込みはこちらから
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊
東海林 洋(ポーラ美術館 学芸員)
美術館という施設で仕事をしていると、作品が静かな収蔵庫や展示室という場所に落ち着いている姿に慣れきってしまうのだが、本来のアートというものは、作家がアトリエで格闘し、画商やコレクター、同業の作家、批評家たちとの議論の末に、刺激や影響を与え合って生み出され、歴史が編まれていく。残念ながら現地を訪ねることはできなかったが、ときの忘れものの皆様より、昨年の「アートバーゼル・マイアミビーチ」(2022年12月1日~3日開催)のお話を伺うにつれ、美術館では感じられない生き生きとしたアートの動きを感じたくなってきた。
海外ではキュレーターが情報収集のためにフェアに足を運び、美術館とは異なる視点からアート業界の動向をチェックしているという。新型コロナの混乱が明け始めた機を見て、私も高まる関心を胸に国際的なアートマーケットの拠点である香港に赴いた。ほぼ3年のコロナ禍のなかですっかり遠のいてしまった海外渡航のリハビリとして、2023年3月の香港とは恰好のタイミングであった。
2023年3月22日、羽田空港から約4時間のフライトで香港国際空港に到着。検疫や審査など曖昧な情報が多く、下調べに時間を要したものの、思った以上にすんなりとした入国であった。さすがの国際都市である。 返還後は年々中国化が進んでいるというが、今はまだ香港島は欧米とアジアが半々に混在した街である。
■Art Basel香港
さて、アート・バーゼル香港は臨海エリアに位置する香港会議展覧中心(HKCEC)という東京国際展示場や幕張メッセのような巨大ホールの2フロアを会場に、一般公開3日間と関係者向けの2日間、計5日間にわたって開催された。パンデミックのなかで規模を縮小した前回までと比べ、世界32の国と地域から177のギャラリーが集うフルサイズの開催となった。

私が尋ねた3月22日は、ほぼ招待者のみが入場できるベルニサージュの時間だったので、それほど混雑してはいなかったが、最終日には異様なまでの混雑だったらしい。アート・バーゼル公式SNSアカウントでは広告も利用しながら活用して会場の様子や見どころをアップし、市内各地でも関連展示を行ってフェアの機運を盛り上げている。市街地の主要箇所にアートフェアの広告が掲出される様子は日本では見ないのではないだろうか。

市街地に掲出された広告
記録なども含めて詳細はこちらの公式ウェブサイトを参照されたい。
https://www.artbasel.com/hong-kong
メイン会場となる1Fのエントランス付近には、擬人化した植物をモチーフとした天井から吊られたトレヴァー・イエンの作品が来場者を迎える。

「エンカウンターズ」トレヴァ―・イエン《庇の下のキュドル氏》2021年

「エンカウンターズ」スタニスラヴァ・ピンチャック《ワイン・ダーク・シー》2022-2023年
■出展・企画のカテゴリー
会場内の出展スペースや企画は6つのカテゴリーに分かれている。
・ギャラリーズGalleries
世界を代表する134の近現代美術ギャラリーが出展し、20-21世紀の展示を行うアート・バーゼルの中核。
・インサイトinsights
19のギャラリーによる、アジア太平洋地域のアーティストの個展、あるいはキュラトリアル・プロジェクト。
・ディスカバリーDiscoveries
24のギャラリーによる世界中の傑出した作品に光をあてるソロ・プロジェクト。
・エンカウンターズEncounters
世界のアートシーンを牽引するアーティストによる大規模な彫刻やインスタレーション、パフォーマンス。「This present, moment」というテーマのもと、キュレーターであるアレクシィー・グラス・カントワーが選出した作品である。
・カビネットKabinett
ギャラリーのセクションの一部を使ってテーマにもとづいたグループ展を行い、美術史的な展示や個展を行う15の企画。
・フィルム Film
香港アートセンターで行われる映像プログラム。8つのスクリーンで29のフィルムを無料上映する。
このほか、会場の外に雑誌メディアや提携する媒体などのコーナーMagazineや関連企画も用意され、Conversationなどのプログラムも開催されている。
■LEVEL 1
ギャラリーズの代表であるGagosianやDavid Zwirner、Pace、Hauser & Wirthなど、いわゆる世界のメガギャラリーが会場の中心を占めているが、20以上のスペースを出展する日本の存在も目立つ。

メガギャラリーの代表Pace

Hauser & Wirthでは2023年に中国の和美術館で個展を開催するロニ・ホーンの作品を展示

インドのギャラリーVedehra
■LEVEL 3
モダンアートやオーセンティックな作品を扱うLEVEL 3の会場は、日本から思文閣や東京画廊らが参加している。香港やアジア圏の新興ギャラリーが多く参加する「ディスカバリーズ」もこのフロアに集い、アジアの活気ある雰囲気を感じられるエリアでもある。アレキサンダー・コールダーを中心に、色彩が響き合うようにフォンタナ、ミロを配するHelly Nahmad Londonの展示、ブランクーシとマティスのポートレイトを組み合わせるKasminなど、私のような近代美術の学芸員ならば憧れるような展示は非常に見応えがある。

Helly Nahmad London

Kasmin
ギャラリースペース内での個展カビネットのなかでは、Zeno Xによる伝説的なファッション・デザイナーであったマルタン・マルジェラの作品展示が注目を集めていた。

Zeno Xによるカビネット企画「マルタン・マルジェラ」

新興ギャラリーが集う「ディスカバリーズ」
アート・バーゼルに参加を希望するギャラリーは、展示のコンセプトや図面をかなり前に提出して審査を受ける。この審査のハードルが高く、イベントを単に売買会場ではなく、展示の質や意義を重んじた、見応えのあるものにしているようだ。海外の国際的なアートフェアを訪ねたのは初めての経験だったが、美術館とは全く異なる活気に大きな刺激を受け、海外のギャラリーに触れるだけではなく、むしろ日本における美術史の将来について考える機会となった。会期に合わせてピピロッティ・リストがM+の建築壁面に投影する新作映像を発表するなど、アートが持つ大きなエネルギーにたった4時間のフライトで出会うことができる。まだ行かれたことの無い日本の学芸員の方々にもぜひオススメしたい。
■異国で日本の美術を見直すこと

アジア太平洋のアートに焦点を当てた「インサイト」
巨匠の作品を前面に出したメガギャラリーに対して、日本のギャラリーは戦後美術の作家と現代美術とを織り交ぜた展示が目立つ。特に木彫、あるいは木を素材とした作家が多かったことは印象的である。 斎藤義重(Takuro Someya Contemporary Art)、から、その教え子であるもの派の小清水漸(YOD)や菅木志雄(Koyama Tomio、東京画廊など)、平面を彫った李禹煥の作品(SCAI The Bathhouse)、そしてポストもの派の戸谷成雄の木彫をもとにしたブロンズ作品(ShugoArts)などなど、ギャラリーのカテゴリーも別にする複数のギャラリーを横断して、日本の戦後美術における系譜が浮かび上がってくる。

斎藤の再制作作品(オリジナルは消失)を、岡崎乾二郎作品とともに展示したTakuro Someya Contemporary Art

YODで木彫の連作を出展された小清水先生と稿者

実は上記の斎藤作品の再制作は、教え子であった小清水先生たちが手伝ったのだった。再制作についてお話を伺う
もしかすると、もの派以降の作家について大規模な展覧会が準備されている(市場的な)前哨戦なのかも知れないが、日本の戦後美術への注目の高さを感じる。よく知られた欧米の作家に比べて、まだ国際化していない日本のアートを、歴史的な文脈とともにコンテンポラリー作品と提示することで世界の中に位置づける場所となっている。

アート・バーゼルの各会場の現在時刻を示す時計
日本の近現代美術史は、他のアジア圏に比べて早い時期から美術館や画廊関係者、研究者らよって、精緻で思慮深い視点から歴史を形成してきた。しかし、それはどこか「世界史」から切り離された島国的で内向的なものではなかっただろうか。国際的な動向と接続した具体/GUITAIを裂け目にして、海外から日本の近現代美術に注目が集まりはじめて10年あまり。日本の美術を世界やアジアの事象と比較する機会が生まれてきているように感じた。
しかし、日本の近現代美術をアジアや世界の文脈のなかで相対化する必要性というものに本当の意味で気付かされたのは、アート・バーゼル香港を訪れた翌日、2021年に開館した巨大な美術館M+を訪ねてからであった。それはまた別の記事にまとめたい。

会場より香港市内を望む
■東海林 洋(しょうじ よう)
ポーラ美術館学芸員。1983年生まれ。2011年よりポーラ美術館に勤務。主な担当展覧会に「ルドン ひらかれた夢―幻想の世紀末から現代へ」、「シュルレアリスムと絵画:ダリ、エルンストと日本の『シュール』」など。ひろしま美術館と共同で企画した「ピカソ:青の時代を超えて」展が2023年5月28日(日)まで、ひろしま美術館(広島)で開催中。
「ピカソ 青の時代を超えて」
会期:2023年2月4日(土)~5月28日(日)
会場:ひろしま美術館
https://www.hiroshima-museum.jp/special/detail/202302_Picasso.html
勤務するポーラ美術館では
「部屋のみる夢:ボナールからティルマンス、現代の作家まで」展が開催中です。
会期:2023年1月28日(土)~7月2日(日)
会場:ポーラ美術館
https://www.polamuseum.or.jp/sp/interiorvisions/
●本日のお勧め作品は李禹煥です。

李禹煥 Lee UFAN 《項 B》
1979年
木版(和紙)
イメージサイズ:59.7×80.5cm
シートサイズ:73.5×106.0cm
Ed.30 サインあり
●倉俣史朗の限定本『倉俣史朗 カイエ Shiro Kuramata Cahier 1-2 』を刊行しました。
限定部数:365部(各冊番号入り)
監修:倉俣美恵子、植田実
執筆:倉俣史朗、植田実、堀江敏幸
アートディレクション&デザイン:岡本一宣デザイン事務所
体裁:25.7×25.7cm、64頁、和英併記、スケッチブック・ノートブックは日本語のみ
価格:7,700円(税込) 送料1,000円
詳細は3月24日ブログをご参照ください。
お申込みはこちらから
●ときの忘れものは2017年に青山から〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS に移転しました。阿部勤が設計した個人住宅だった空間で企画展の開催、版画のエディション、美術書の編集等を行なっています(WEBマガジン コラージ2017年12月号18~24頁の特集参照)。
JR及び南北線の駒込駅南口から徒歩約8分です。
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531
E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。*日・月・祝日は休廊
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