佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」第82回
中身を知るためのドローイング、を出展




(「中身を知るためのドローイング」)
11月3日から開催されている「小石川植物祭2023/命名-牧野富太郎へのオマージュ」に向けて、いくつか小さな作品を制作した。「中身を知るためのドローイング」と名づけた小品を4点ほど。
ドローイングと言っても、これはいわゆる立体品である。形はいくらか不定形な格好をしていて、上下左右の決まりもないカタチ。素材は、破った水彩紙に柿渋と鉄媒染液を幾重にも塗り重ねて出来ている。その染色した紙を一枚ずつ糊でくっつけていき、だんだんと立体として立ち上がってくる。そしてそこに内部、空洞が生まれ、内部が在ることを保ち続けながら紙を貼り増していく。少し濁った照りのある表面が、架空の質量を予感させるような気もする。
どことなく、なんだか小さな家のような、海岸沿いの岩間の陰にこっそりと建っていそうな建築(と言うべきか、荒屋と言うべきか)のようにも見えてくる。だがここで、この小品を模型などと言ってしまっては、どうも思考の展開が狭まってしまいそうなので、あくまでも「ドローイング」であるということにしておく。
というのも、真っ白な紙の上に順々に線を刻んでいく謂わゆるドローイングと、この歪な複数の紙を組み立てて立体を繰り出す作業は、一つ一つに順序があるという点でほとんど変わりが無いからだ。そしてどちらも、何らかの図像あるいは立体の姿を模索していく作業である。どちらもなかなか完成形が見えてこない作業であるので、厳しい時もある。けれどもその厳しい時間を過ぎていくらか手数が増えてくると朧げながらその姿、あるいは次にどこに線を刻むか、紙を貼り付けるかの筋道が見えてくることがある。そうしてどこかの所で、その作業をピタリと止めてしまう。これ位にしておいてやるか、と少し遠くに放り投げて俯瞰して眺める。そんな一連の作業である。
何かのための習作にもなればよいとも思ってはいるが、その行き先まではまだ定まっていない。これがいわゆる彫刻としての立体なのか、家具になるのか、あるいは建築になっていくのか、まだ分からない。しかし、おそらく何らかの言葉の付与がその展開を加速させるのだとも思う。

(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2022年3月ときの忘れもので二回目となる個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を開催。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
《空洞のための囲い1》
2022年
ゼラチンシルバープリント
8.3×8.1cm/13.1×12.7cm
Ed. 1
サインあり
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆小石川植物祭2023/命名~牧野富太郎へのオマージュ
会期:2023年11月3日(金)~11月11日(土) ※会期中無休
会場:ときの忘れもの
参加作家:大塚理司、佐藤研吾、杉山幸一郎、戸村茂樹、仁添まりな、藤江民
作家在廊予定日:
11月3日(金、祝日)藤江民
11月5日(日)大塚理司(12:00~17:00ごろ)
11月11日(土)戸村茂樹

文京区の小石川植物園で11月3日~5日に第二回小石川植物祭2023が開催され、ときの忘れものは園外企画の一環として参加しています。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

中身を知るためのドローイング、を出展




(「中身を知るためのドローイング」)
11月3日から開催されている「小石川植物祭2023/命名-牧野富太郎へのオマージュ」に向けて、いくつか小さな作品を制作した。「中身を知るためのドローイング」と名づけた小品を4点ほど。
ドローイングと言っても、これはいわゆる立体品である。形はいくらか不定形な格好をしていて、上下左右の決まりもないカタチ。素材は、破った水彩紙に柿渋と鉄媒染液を幾重にも塗り重ねて出来ている。その染色した紙を一枚ずつ糊でくっつけていき、だんだんと立体として立ち上がってくる。そしてそこに内部、空洞が生まれ、内部が在ることを保ち続けながら紙を貼り増していく。少し濁った照りのある表面が、架空の質量を予感させるような気もする。
どことなく、なんだか小さな家のような、海岸沿いの岩間の陰にこっそりと建っていそうな建築(と言うべきか、荒屋と言うべきか)のようにも見えてくる。だがここで、この小品を模型などと言ってしまっては、どうも思考の展開が狭まってしまいそうなので、あくまでも「ドローイング」であるということにしておく。
というのも、真っ白な紙の上に順々に線を刻んでいく謂わゆるドローイングと、この歪な複数の紙を組み立てて立体を繰り出す作業は、一つ一つに順序があるという点でほとんど変わりが無いからだ。そしてどちらも、何らかの図像あるいは立体の姿を模索していく作業である。どちらもなかなか完成形が見えてこない作業であるので、厳しい時もある。けれどもその厳しい時間を過ぎていくらか手数が増えてくると朧げながらその姿、あるいは次にどこに線を刻むか、紙を貼り付けるかの筋道が見えてくることがある。そうしてどこかの所で、その作業をピタリと止めてしまう。これ位にしておいてやるか、と少し遠くに放り投げて俯瞰して眺める。そんな一連の作業である。
何かのための習作にもなればよいとも思ってはいるが、その行き先まではまだ定まっていない。これがいわゆる彫刻としての立体なのか、家具になるのか、あるいは建築になっていくのか、まだ分からない。しかし、おそらく何らかの言葉の付与がその展開を加速させるのだとも思う。

(さとう けんご)
■佐藤研吾(さとう けんご)
1989年神奈川県横浜生まれ。2011年東京大学工学部建築学科卒業。2013年早稲田大学大学院建築学専攻修士課程(石山修武研究室)修了。同専攻嘱託研究員を経て、2014年よりスタジオGAYA。2015年よりインドのVadodara Design AcademyのAssistant Professor、および東京大学工学系研究科建築学専攻博士課程在籍。福島・大玉村で藍染の活動をする「歓藍社」所属。インドでデザインワークショップ「In-Field Studio」を主宰。「一般社団法人コロガロウ」設立。2022年3月ときの忘れもので二回目となる個展「佐藤研吾展 群空洞と囲い」を開催。
・佐藤研吾のエッセイ「大地について―インドから建築を考える―」は毎月7日の更新です。
●本日のお勧め作品は佐藤研吾です。
《空洞のための囲い1》 2022年
ゼラチンシルバープリント
8.3×8.1cm/13.1×12.7cm
Ed. 1
サインあり
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※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
◆小石川植物祭2023/命名~牧野富太郎へのオマージュ
会期:2023年11月3日(金)~11月11日(土) ※会期中無休
会場:ときの忘れもの
参加作家:大塚理司、佐藤研吾、杉山幸一郎、戸村茂樹、仁添まりな、藤江民
作家在廊予定日:
11月3日(金、祝日)藤江民
11月5日(日)大塚理司(12:00~17:00ごろ)
11月11日(土)戸村茂樹

文京区の小石川植物園で11月3日~5日に第二回小石川植物祭2023が開催され、ときの忘れものは園外企画の一環として参加しています。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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