ただいま画廊では「2025コレクション展4」を開催中です(本日と明日は休廊です)。
今から95年前に制作された恩地孝四郎の希少なポスターをご紹介します。
創作版画の代表作家というより、いまや日本における抽象絵画のパイオニアとして高い評価を獲得している恩地孝四郎の今年は没後70年にあたります(1891年(明治24年)7月2日 – 1955年(昭和30年)6月3日)。
余計な話ですが、恩地の誕生日は7月2日、先日80歳を迎えた画廊亭主も1945年(昭和20)7月2日生まれであります。敬愛する恩地と同じ日に生まれたことを密かに誇りとしていますが、ご息女の三保子さんにはとうとう言いそびれてしまった。
今思うと若気の至りというか、世間知らずというか、いきなり三保子さんに「尊敬する恩地孝四郎先生の展覧会をしたい」と手紙を書いたのが1975年の春でした。その前年に現代版画センターをつくり東奔西走、全国の街々で「版画への招待展」を開催していました。
事務局は渋谷のマンションの一室でしたので、自分たちの展示場所はない。ないけれど自分たちでも瑛九や恩地の展覧会をしたい。
手紙を読んだ恩地三保子さんから連絡があり、大手町のトランクルームに連れていかれました。どこの馬の骨ともわからぬ若造にトランクルームに保管してある恩地や田中恭吉の作品をすべて見せてくださり、「お好きなものをもってらっしゃい」。今思うとトランクルームの出し入れだって有料だったに違いない、そんなことも気づかず、恩地の代表作を無償でお借りして生涯初の「恩地孝四郎展」を開催したのが1975年5月16日~31日でした。
会場は飯田橋のバー「憂陀」(ユダ)。三保子さん、よくもまあ許してくれたものです。
それがきっかけで北軽井沢の山小屋にもお招きいただきました。
三保子さんは当時父上の作品集(恩地孝四郎版画集1981-1955)刊行に全力を注いでおられましたが、版元の形象社は費用(アメリカのコレクター所蔵作品の撮影料など)を負担してくれるわけではない。多少恩返しができたかなあと思うのは、私どものパトロンでもあった久保貞次郎先生にご紹介できたことでしょうか。
日本有数の大コレクターだった久保先生の口癖は「ボクは生涯で二つ悔いがあります。一つは松本竣介をまとめて購入する話があったのににべもなく断ってしまったこと。もう一つは生前の恩地先生に幾度も会いながら、西洋かぶれだったボクは日本の木版など古臭いと決めつけ、ただの一枚も恩地作品を買わなかったことです」。
その話を聞いていたものだからさっそく三保子さんに久保先生をご紹介したのでした。久保先生は気前よくン百万円を出して作品集特装版を何冊も購入し、刊行を支援してくださいました。
いつもながら前置きが長くてすいません。
一世紀も前のものとは思えない、斬新なデザイン、1930年(昭和5)に制作されたポスターです。
恩地のデザイン感覚がいかに優れていたかよくわかります。ぜひ皆さんのコレクションに加えてください。。

恩地孝四郎『人形の耳・幼児の自由詩集』ポスター
1930年
シートサイズ:63×45.3cm
・・・
月の出
お月さま
どこから来たの
お月さま
どこへ行くの
お月さま
小さくなっちゃった
二歳二ヶ月
・・・
三歳
平岩由伎子
・・・
北原白秋序
恩地孝四郎画
・・・
金壹圓八拾錢
菊判天金特製本文二一二頁・挿画寫眞十五葉
・・・
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
恩地孝四郎 Koshiro ONCHI
1891年東京生まれ。竹久夢二に感化を受ける。東京美術学校で洋画・彫刻を学ぶが中退。藤森静雄・田中恭吉と[月映]を刊行。萩原朔太郎の詩集『月に吠える』の装幀と挿画を担当、28年『北原白秋全集』の装幀で装本家の地位を確立。抽象画の先駆者、また日本の版画界のリーダーとして大きな足跡を残した。『飛行官能』『海の童話』『博物誌』『虫・魚・介』など優れた自作装画本を刊行した。1955年永逝(享年63)。
繊細でシャープな抽象作品の数々が、創作版画のみならず日本における抽象表現の先駆として高く評価されている恩地孝四郎ですが、94年に横浜美術館で開催された回顧展では、初期から晩期にいたる版画作品をはじめ、本の装幀、オブジェ、写真作品などが網羅され、この画家の才能がいかに時代に先駆けていたかを改めて再認識させるものでした。
●お詫び
本日8月3日は、連載エッセイ「刷り師・石田了一の仕事」の掲載日ですが(毎月3日の更新)、私ども(ときの忘れもの)の都合で8月と9月は休載とさせていただきます。筆者の石田了一先生と読者の皆さんにはお詫び申し上げます。
次回は10月3日に掲載予定です。
石田先生だけではなく他の連載も同様で、一~二ヶ月ほど休載させていただきます。
先日少しご報告しましたが、ホームページを全面的に改変し、連動してブログその他も全く今までとは異なるサイトでの公開作業にかかっています。
思ったより手間で、いまだに道半ばというところで、スタッフも喘ぎながら作業を進めています。
ご理解のほどお願い申し上げます。
◆「2025コレクション展4/瑛九、ウォーホル、ホックニー他」
会期:2025年8月1日(金)~8月16日(土) 11:00~19:00 ※日曜・月曜・祝日休廊
出品作家:靉嘔、赤瀬川原平、安藤忠雄、畦地梅太郎、泉茂、石山修武、磯辺行久、伊藤公象、瑛九、オノサト・トシノブ、恩地孝四郎、加藤清之、北川太郎、草間彌生、倉俣史朗、島州一、嶋田しづ、田名網敬一、難波田龍起、野田哲也、長谷川潔、日和崎尊夫、舟越保武、舟越直木、堀尾貞治、槇文彦、宮脇愛子、元永定正、百瀬寿、山口薫、横尾忠則、若林奮、アンディ・ウォーホル、ジョン・ケージ、ジャン・フォートリエ、デイヴィッド・ホックニー、ソニア・ドローネー、フェルナン・レジェ、マリー・ローランサンほか。
出品全47点の画像とデータは8月2日ブログに掲載しました。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

コメント