「刷り師・石田了一の仕事」
第10回「はるの調べ」
「お前は、人に説明しても解ってもらえないものを持っているかい」
ずっと昔、内田正泰さんが、尊敬する遠縁の日本画家から投げかけられた言葉らしい。
一生思い続けてきたその言葉が今頃になってしみじみ解る気がしています。
という案内状に添えたお手紙をいただいたのは、90歳も過ぎた頃であったろうか。
内田正泰(1922-2019)はり絵画家。
1980年代には、100点以上のシルク作品を既に発表していたが、1994年、作品集「四季の詩」の出版を記念して、八重洲ブックセンターにあったプリントアートセンター魚津章夫さんからのご指名で、内田さんの作品を初めて手掛けることになった。
はり絵原画B3サイズを67%ほど縮小した「きらめく瀬」、「茜富士」の2点が生まれた。
2001年、2003年には、「鎮守の森」の四季を描いた 春・夏・秋・冬の4点を制作。
自ら工夫された色紙を細やかに貼り付け、絵を創ってゆく内田さんは、建築を学ばれたこともあり、詩情あふれる風景であっても、その組み立ての鋭敏さが画面を通して伝わってくる。
シルクスクリーンもまた、直に色をのせてゆくインクのはり絵でもある。
説明しても理解してもらえないものをもっているかどうかは、ひとまず置いておいて、
説明して分かってもらえるよう当時の技法を図解することとしよう。

「きらめく瀬」1994年 61版58色63度刷り 243×344㎜

「茜富士」1994年 6版7色6度刷り(ボカシ2) 243×344㎜

「鎮守の森 春」 2001年 47版43色47度刷り 244×344㎜
「鎮守の森 夏」 2001年 36版34色36度刷り 244×344㎜

「鎮守の森 秋」 2003年 38版36色38度刷り 244×344㎜
「鎮守の森 冬」 2003年 44版42色44度刷り 244×344㎜

「鎮守の森・冬」の製版フィルム1~8/30枚
左上から右へ 〇(1)空ベタ (2)地面白ベタ、
〇(3)山2ベタ (4)山3ベタ (5)地面こいブルーベタ、
〇(6)山1ベタ (7)山みどりベタ (8)地面うすいブルーベタ、
〇(9)草下地ベタ (10)社やねオレンジベタ、
左下から右へ 〇(11)みどりの木ベタ、〇(12)うす紅の木ベタ、
〇(13)ワインの木、〇(14)灰桜の木ベタ、赤しまの木ベース、
オレンジ色はマスキングフィルムのハンドカット。

「鎮守の森・冬」製版フィルム9~14/30枚
左上から右へ〇(15)山グレーベタ・くろしまの木、〇(16)草ムラサキベタ、
〇(17)幹ベタ、〇(18)ベージュの木ベタ (19)トリイ・社グレーベタ、
左下から右へ 〇(20)オールドローズの木ベタ、〇(M)最後の透明色。

「鎮守の森・冬」製版フィルム15~22/30枚(内マスク版3枚)
オレンジ色はカッティングによるマスク版A、B、C
製版カメラによる階調の必要な部分だけマスク版で
『2度焼き』して拾ってゆく。
左上から右へ 〇(5)ベースの木幹[マスクA]草ムラサキ[マスクB]、
〇マスクAのフィルム
〇(8,5)オールドローズの木 あかしまの木[マスクB]
〇マスクBのフィルム
左下から右へ 〇(11,25)草幹2[マスクC] 〇(12,5)草幹3[マスクC]
〇(10)あかしまの木[マスクB]草幹1[マスクC]〇マスクCのフィルム

「鎮守の森・冬」製版フィルム23~30/30枚
左上から右へ 〇(22,5)みどりの木2[マスクD]
〇みどりの木1[マスクD]
〇マスクDのフィルム 〇(7,5)うす紅の木 ベージュの木 草目止め
左下から右へ 〇(25)全体ちょうし1 〇(30)全体ちょうし2
〇(4)灰桜の木[目止め] 〇山のせちょうし・地面のせ[ネガフィルム]
原画撮影の製版カメラの露光時間(秒)は、
2 4 5 7,5 8,5 10 11,5 12,5 15 17,5 20 22,5 25 30 計14枚。
(いしだ りょういち)
■石田了一(いしだ りょういち)
シルクスクリーン刷り師・石田了一工房主宰
1947年北海道根室生まれ、1970 年美學校で岡部徳三氏に師事。
1971年、宇佐美圭司展(南画廊)で発表された<ボカシの 40 版>の版画で
工房をスタート。これまでにアンディ・ウォーホル、安藤忠雄、磯崎新、
草間彌生、熊谷守一、倉俣史朗、桑山忠明、五味太郎、 菅井汲、関根伸夫、
田名網敬一、寺山修司、鶴田一郎、萩原朔美、
毛綱毅曠、元永定正、脇田愛二郎、脇田和 他 ,
様々なジャンルのアーティストのシルクスクリーン作品を手掛ける。
●連載「刷り師・石田了一の仕事」は毎月3日の更新です。
次回は4月3日を予定しています。どうぞお楽しみに。
●本日のお勧め作品は倉俣史朗です。
《倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier 4》
A版 シルクスクリーン 10点組/
B版 《68.ミス ブランチ(1988)》入り11点組
作者 倉俣史朗
監修 倉俣美恵子
植田実(住まいの図書館出版局編集長)
制作 2024年
技法 シルクスクリーン
シルクスクリーン刷り 石田了一工房・石田了一
発行 ときの忘れもの
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

第10回「はるの調べ」
「お前は、人に説明しても解ってもらえないものを持っているかい」
ずっと昔、内田正泰さんが、尊敬する遠縁の日本画家から投げかけられた言葉らしい。
一生思い続けてきたその言葉が今頃になってしみじみ解る気がしています。
という案内状に添えたお手紙をいただいたのは、90歳も過ぎた頃であったろうか。
内田正泰(1922-2019)はり絵画家。
1980年代には、100点以上のシルク作品を既に発表していたが、1994年、作品集「四季の詩」の出版を記念して、八重洲ブックセンターにあったプリントアートセンター魚津章夫さんからのご指名で、内田さんの作品を初めて手掛けることになった。
はり絵原画B3サイズを67%ほど縮小した「きらめく瀬」、「茜富士」の2点が生まれた。
2001年、2003年には、「鎮守の森」の四季を描いた 春・夏・秋・冬の4点を制作。
自ら工夫された色紙を細やかに貼り付け、絵を創ってゆく内田さんは、建築を学ばれたこともあり、詩情あふれる風景であっても、その組み立ての鋭敏さが画面を通して伝わってくる。
シルクスクリーンもまた、直に色をのせてゆくインクのはり絵でもある。
説明しても理解してもらえないものをもっているかどうかは、ひとまず置いておいて、
説明して分かってもらえるよう当時の技法を図解することとしよう。

「きらめく瀬」1994年 61版58色63度刷り 243×344㎜

「茜富士」1994年 6版7色6度刷り(ボカシ2) 243×344㎜

「鎮守の森 春」 2001年 47版43色47度刷り 244×344㎜
「鎮守の森 夏」 2001年 36版34色36度刷り 244×344㎜

「鎮守の森 秋」 2003年 38版36色38度刷り 244×344㎜
「鎮守の森 冬」 2003年 44版42色44度刷り 244×344㎜

「鎮守の森・冬」の製版フィルム1~8/30枚
左上から右へ 〇(1)空ベタ (2)地面白ベタ、
〇(3)山2ベタ (4)山3ベタ (5)地面こいブルーベタ、
〇(6)山1ベタ (7)山みどりベタ (8)地面うすいブルーベタ、
〇(9)草下地ベタ (10)社やねオレンジベタ、
左下から右へ 〇(11)みどりの木ベタ、〇(12)うす紅の木ベタ、
〇(13)ワインの木、〇(14)灰桜の木ベタ、赤しまの木ベース、
オレンジ色はマスキングフィルムのハンドカット。

「鎮守の森・冬」製版フィルム9~14/30枚
左上から右へ〇(15)山グレーベタ・くろしまの木、〇(16)草ムラサキベタ、
〇(17)幹ベタ、〇(18)ベージュの木ベタ (19)トリイ・社グレーベタ、
左下から右へ 〇(20)オールドローズの木ベタ、〇(M)最後の透明色。

「鎮守の森・冬」製版フィルム15~22/30枚(内マスク版3枚)
オレンジ色はカッティングによるマスク版A、B、C
製版カメラによる階調の必要な部分だけマスク版で
『2度焼き』して拾ってゆく。
左上から右へ 〇(5)ベースの木幹[マスクA]草ムラサキ[マスクB]、
〇マスクAのフィルム
〇(8,5)オールドローズの木 あかしまの木[マスクB]
〇マスクBのフィルム
左下から右へ 〇(11,25)草幹2[マスクC] 〇(12,5)草幹3[マスクC]
〇(10)あかしまの木[マスクB]草幹1[マスクC]〇マスクCのフィルム

「鎮守の森・冬」製版フィルム23~30/30枚
左上から右へ 〇(22,5)みどりの木2[マスクD]
〇みどりの木1[マスクD]
〇マスクDのフィルム 〇(7,5)うす紅の木 ベージュの木 草目止め
左下から右へ 〇(25)全体ちょうし1 〇(30)全体ちょうし2
〇(4)灰桜の木[目止め] 〇山のせちょうし・地面のせ[ネガフィルム]
原画撮影の製版カメラの露光時間(秒)は、
2 4 5 7,5 8,5 10 11,5 12,5 15 17,5 20 22,5 25 30 計14枚。
(いしだ りょういち)
■石田了一(いしだ りょういち)
シルクスクリーン刷り師・石田了一工房主宰
1947年北海道根室生まれ、1970 年美學校で岡部徳三氏に師事。
1971年、宇佐美圭司展(南画廊)で発表された<ボカシの 40 版>の版画で
工房をスタート。これまでにアンディ・ウォーホル、安藤忠雄、磯崎新、
草間彌生、熊谷守一、倉俣史朗、桑山忠明、五味太郎、 菅井汲、関根伸夫、
田名網敬一、寺山修司、鶴田一郎、萩原朔美、
毛綱毅曠、元永定正、脇田愛二郎、脇田和 他 ,
様々なジャンルのアーティストのシルクスクリーン作品を手掛ける。
●連載「刷り師・石田了一の仕事」は毎月3日の更新です。
次回は4月3日を予定しています。どうぞお楽しみに。
●本日のお勧め作品は倉俣史朗です。
《倉俣史朗 Shiro Kuramata Cahier 4》A版 シルクスクリーン 10点組/
B版 《68.ミス ブランチ(1988)》入り11点組
作者 倉俣史朗
監修 倉俣美恵子
植田実(住まいの図書館出版局編集長)
制作 2024年
技法 シルクスクリーン
シルクスクリーン刷り 石田了一工房・石田了一
発行 ときの忘れもの
作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
※お問合せには、必ず「件名」「お名前」「連絡先(住所)」を明記してください。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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