こんにちわ。
先月2月の下旬に東京国立近代美術館「所蔵作品展 MOMATコレクション」を見てきましたので、ご報告のレポートです。
「所蔵作品展 MOMATコレクション」
会期:2025年2月11日~6月15日 前期と後期で入れ替えがあります。
(前期:2025年2月11日~4月13日、後期:2025年4月15日~6月15日)
会場:東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(4~2階)
会場内はほぼ撮影OKでした。(部分的に不可)


私が行った日は1階の企画展が展示替え中だったので、人が少なくゆっくりと見ることができました。外国人観光客が多かったです。(現在は、話題のヒルマ・アフ・クリント展を開催中ですね。)
コレクション展は、大きく別けると4階(1~5室)、3階(6~10室)、2階(11~12室)の3フロア。
1階からまずエレベーターで4階へ。4階の1室には、おなじみの縦長の大作ロベール・ドローネー《リズム 螺旋》や熊谷守一油彩などなど名品がずらり並んでいます。
4階の3室には、恩地孝四郎の抒情『あかるい時』が展示。後年に発表した同題の詩「何がなしにしあはせのような~」が丁寧にキャプションに記載されているので必読です。日本で最初の抽象表現の作例とも言われている本作は、どこか深いところに連れて行ってくれるような吸引力があります。2016年(もう9年前ですね)に開催された恩地孝四郎の大展覧会を思い出し、もう一度恩地作品に浸りたいと思いました。
左)恩地孝四郎 抒情《あかるい時》 右)織田一磨《感覚》
4階の5室には、シュルレアリスム作品がまとめて展示。新収蔵作品のマックス・エルンスト《砂漠の花(砂漠のバラ)》も展示されています。女性が人差し指を掲げているような絵。よく見ると煉瓦のような模様にはフロッタージュ(表面が凸凹した物の上に紙やキャンバス布を置き、鉛筆などでこすって模様を写し取る技法)が使われています。
マックス・エルンスト《砂漠の花(砂漠のバラ)》
瑛九のコラージュ作品や瀧口修造のドローイングが展示室中央の壁に掛けられています。瑛九と瀧口作品は前期と後期で作品入れ替えがあるそうです。
瑛九《作品》C.1937 コラージュ、紙
中央左)瀧口修造《ドローイング》1960年 インク、水彩、紙
瑛九コラージュの前の壁には、靉光《眼のある風景》・杉全直《轍》・浅原清隆《郷愁》。瀧口作品は、ジャクソン・ポロック《無題(多角形のある頭部)》を見つめています。ブルトンのシュルレアリスム宣言などの書籍や資料も展示されていました。

3階の8室には、吉田克朗の版画、オノサト・トシノブの円の分割期の1970年の油彩。宮脇愛子の白い大理石粉を使ったタブローも美しく鎮座。表面はマットで凹凸の模様がくっきり出ています。木村光佑《現在位置-フレーミングB》もあり。ときの忘れものには《現在位置-フレーミングA》があります。図柄はまったく同じに見えますが、下部の鉛筆で記載のタイトルがAとBで違うようです。
木村光佑《現在位置-フレーミングB》
左)関根美夫《算盤》1965年 油彩・キャンバス
右)オノサト・トシノブ《CIRCLE-'70》1970年 油彩、キャンバス
宮脇愛子《Work》1960-61年 油彩・大理石粉・合板
恩地孝四郎の版画群。
3階の7室には、またまた恩地孝四郎、駒井哲郎、織田一磨、戸張孤雁など、ときの忘れものおなじみの版画作家が並びます。駒井哲郎「足場」は風景の細かい描写が美しいです。清宮質文の青いガラス絵の透明感も格別。恩地さんの横には、パウル・クレーやベン・ニコルソンもあり。
2階の12室には、東近美が修復したという水が循環する遠藤利克作品、村上隆、森村泰昌、会田誠など現役作家の作品も多く並びます。小泉明郎さんの《Bottlelands》ヴィデオ作品は、退役軍人の日常生活と戦争体験が混ざり合う映像で考えさせられました。静岡県焼津市生まれで31歳で夭折した画家・石田徹也さんの絵画もご親族から寄贈された2点を見ることができます。
屋外には大型の彫刻イサム・ノグチの《門》が展示されています。ノグチ氏の指示により色を塗り替えのたびに変えているそうで、「赤+黒」「青」「黄+黒」の3ヴァージョンがあるそうです。今は青色になっていて、この作品は前から気になっていましたが、イサム・ノグチさんの作品であり、色まで塗り替えられていたとは・・知りませんでした。ショップの横の階段から彫刻の近くまで行くことができます。
2階では、コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」も開催中(会期:2025.2.11~6.15)。
1時間超えの映像作品など7作品があり、朝のクリアな頭だと映像作品もじっくりと入り込むことができます。マーサ・ロスラー(Martha Rosler、アメリカ、1943~)のアルファベット順にキッチン器具の名前を告げていく作品は、主旨が端的で尺も約6分とちょうど良く見ていただきたい一作品です。

いつもは企画展の「ついでの」コレクション展になっていましたが、今回ゆっくり鑑賞して気づかないこともたくさんありました。ぜひみなさんもゆっくりコレクション展「だけ」を見る日を作ってみてはいかがでしょうか。
(スタッフM)
*画廊亭主敬白
スタッフMが撮影した上掲の写真は近美からパレスサイドビル(毎日新聞社)を見下ろしたスナップです。中央の白いタワーはエレベーターホール、直ぐ右の2階が販売局で亭主は1969年入社して数年間を過ごしました。いろいろあって拾ってくれたのが販売調査課のM課長さん、窓際に亭主の席がありました。
DOCOMOMO20にも選ばれた名建築パレスサイドビル(日建設計・林昌二設計、1966年竣工)については同期の平嶋彰彦さんの「『ビルに歴史あり パレスサイドビル物語』――太田道灌の江戸城」をお読みください。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

先月2月の下旬に東京国立近代美術館「所蔵作品展 MOMATコレクション」を見てきましたので、ご報告のレポートです。
「所蔵作品展 MOMATコレクション」
会期:2025年2月11日~6月15日 前期と後期で入れ替えがあります。
(前期:2025年2月11日~4月13日、後期:2025年4月15日~6月15日)
会場:東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(4~2階)
会場内はほぼ撮影OKでした。(部分的に不可)


私が行った日は1階の企画展が展示替え中だったので、人が少なくゆっくりと見ることができました。外国人観光客が多かったです。(現在は、話題のヒルマ・アフ・クリント展を開催中ですね。)
コレクション展は、大きく別けると4階(1~5室)、3階(6~10室)、2階(11~12室)の3フロア。
1階からまずエレベーターで4階へ。4階の1室には、おなじみの縦長の大作ロベール・ドローネー《リズム 螺旋》や熊谷守一油彩などなど名品がずらり並んでいます。
4階の3室には、恩地孝四郎の抒情『あかるい時』が展示。後年に発表した同題の詩「何がなしにしあはせのような~」が丁寧にキャプションに記載されているので必読です。日本で最初の抽象表現の作例とも言われている本作は、どこか深いところに連れて行ってくれるような吸引力があります。2016年(もう9年前ですね)に開催された恩地孝四郎の大展覧会を思い出し、もう一度恩地作品に浸りたいと思いました。
左)恩地孝四郎 抒情《あかるい時》 右)織田一磨《感覚》4階の5室には、シュルレアリスム作品がまとめて展示。新収蔵作品のマックス・エルンスト《砂漠の花(砂漠のバラ)》も展示されています。女性が人差し指を掲げているような絵。よく見ると煉瓦のような模様にはフロッタージュ(表面が凸凹した物の上に紙やキャンバス布を置き、鉛筆などでこすって模様を写し取る技法)が使われています。
マックス・エルンスト《砂漠の花(砂漠のバラ)》瑛九のコラージュ作品や瀧口修造のドローイングが展示室中央の壁に掛けられています。瑛九と瀧口作品は前期と後期で作品入れ替えがあるそうです。
瑛九《作品》C.1937 コラージュ、紙
中央左)瀧口修造《ドローイング》1960年 インク、水彩、紙
瑛九コラージュの前の壁には、靉光《眼のある風景》・杉全直《轍》・浅原清隆《郷愁》。瀧口作品は、ジャクソン・ポロック《無題(多角形のある頭部)》を見つめています。ブルトンのシュルレアリスム宣言などの書籍や資料も展示されていました。
3階の8室には、吉田克朗の版画、オノサト・トシノブの円の分割期の1970年の油彩。宮脇愛子の白い大理石粉を使ったタブローも美しく鎮座。表面はマットで凹凸の模様がくっきり出ています。木村光佑《現在位置-フレーミングB》もあり。ときの忘れものには《現在位置-フレーミングA》があります。図柄はまったく同じに見えますが、下部の鉛筆で記載のタイトルがAとBで違うようです。
木村光佑《現在位置-フレーミングB》
左)関根美夫《算盤》1965年 油彩・キャンバス右)オノサト・トシノブ《CIRCLE-'70》1970年 油彩、キャンバス
宮脇愛子《Work》1960-61年 油彩・大理石粉・合板
恩地孝四郎の版画群。3階の7室には、またまた恩地孝四郎、駒井哲郎、織田一磨、戸張孤雁など、ときの忘れものおなじみの版画作家が並びます。駒井哲郎「足場」は風景の細かい描写が美しいです。清宮質文の青いガラス絵の透明感も格別。恩地さんの横には、パウル・クレーやベン・ニコルソンもあり。
2階の12室には、東近美が修復したという水が循環する遠藤利克作品、村上隆、森村泰昌、会田誠など現役作家の作品も多く並びます。小泉明郎さんの《Bottlelands》ヴィデオ作品は、退役軍人の日常生活と戦争体験が混ざり合う映像で考えさせられました。静岡県焼津市生まれで31歳で夭折した画家・石田徹也さんの絵画もご親族から寄贈された2点を見ることができます。
屋外には大型の彫刻イサム・ノグチの《門》が展示されています。ノグチ氏の指示により色を塗り替えのたびに変えているそうで、「赤+黒」「青」「黄+黒」の3ヴァージョンがあるそうです。今は青色になっていて、この作品は前から気になっていましたが、イサム・ノグチさんの作品であり、色まで塗り替えられていたとは・・知りませんでした。ショップの横の階段から彫刻の近くまで行くことができます。
2階では、コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」も開催中(会期:2025.2.11~6.15)。1時間超えの映像作品など7作品があり、朝のクリアな頭だと映像作品もじっくりと入り込むことができます。マーサ・ロスラー(Martha Rosler、アメリカ、1943~)のアルファベット順にキッチン器具の名前を告げていく作品は、主旨が端的で尺も約6分とちょうど良く見ていただきたい一作品です。

いつもは企画展の「ついでの」コレクション展になっていましたが、今回ゆっくり鑑賞して気づかないこともたくさんありました。ぜひみなさんもゆっくりコレクション展「だけ」を見る日を作ってみてはいかがでしょうか。
(スタッフM)
*画廊亭主敬白
スタッフMが撮影した上掲の写真は近美からパレスサイドビル(毎日新聞社)を見下ろしたスナップです。中央の白いタワーはエレベーターホール、直ぐ右の2階が販売局で亭主は1969年入社して数年間を過ごしました。いろいろあって拾ってくれたのが販売調査課のM課長さん、窓際に亭主の席がありました。
DOCOMOMO20にも選ばれた名建築パレスサイドビル(日建設計・林昌二設計、1966年竣工)については同期の平嶋彰彦さんの「『ビルに歴史あり パレスサイドビル物語』――太田道灌の江戸城」をお読みください。
●ときの忘れものの建築は阿部勤先生の設計です。
建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。

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