「所蔵作品展 MOMATコレクション」
会期:2025年2月11日~6月15日 前期と後期で入れ替えがあります。
(前期:2025年2月11日~4月13日、後期:2025年4月15日~6月15日)
会場:東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(4~2階)

https://www.momat.go.jp/exhibitions/r6-3

東京国立近代美術館のコレクション展(前期)を見て参りました。
3000平米に200点以上を並べたという「MOMATコレクション展」。
普段は、企画展を観てさんざんエネルギーを消費した後、チケットにコレクション展のチケットが付いているから一応観ておこうと駆け足気味にみるコレクション展。しかし今回は、ときの忘れもの亭主から全員「MOMATコレクション展」を見に行くようにと指令があり、行ってきました。

以下、かいつまんでご報告します。

ロベール・ドローネの縦長の大きな油彩は、半円とS字を組み合わせ、鮮やかな原色とパステルカラーを大胆に組み合わせており、目を引きました。
ジョージア・オキーフの1937年の油彩《タチアオイの白と緑―ベダーナル山の見える》は、淡い色なので目立ちませんが、山とのスケール感がミスマッチな大輪の花が印象的です。
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新収蔵作品のお披露目もあり、寄贈を受けた織田一磨の水彩画など多数展示されていました。その中でも織田ユキエ氏寄贈の『画集銀座 第一輯』の《シネマ銀座》は、黄色と赤の明かりのみ照らされた薄暗い映画館に集まった昭和初期の人々の様子が小品ながらによく描かれており、見入りました。
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ときの忘れものでも扱った恩地孝四郎の《抒情・あかるい時》は、日本で最初の抽象表現の作例だとか。
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シュルレアリスム100年のコーナーには、新収蔵作品のマックス・エルンスト《砂漠の花》が展示されていました。
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展示台には、《砂漠の花》の画像が掲載された『みづゑ』302号(1930年4月)田邊信太郎「千九百二十年以降の絵画傾向」や、瀧口修造が翻訳した『超現実主義と絵画』の資料展示もあり。同書にも《砂漠の花》が掲載されているそうで、そのほかの媒体にもシュルレアリスム絵画の作例として登場しているという《砂漠の花》が、いかに重要な作品であるかを指し示しています。
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ジョセフ・コーネルのアッサンブラージュは西洋の古い建物の入り口に見えますが、解説には「コーネルは、生涯ニューヨークから出ることなく、作品に頻出するヨーロッパのイメージは空想のなかで育まれたものです。」とあり驚きました。
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イヴ・タンギーの《聾者の耳》は、それぞれが意思を持ったかに見える謎の形の物体が、地の果てに集まっているような不思議な絵で、長いこと見入りました。イヴ・タンギーは、パリの画廊に掛けられていたジョルジュ・デ・キリコの作品をバスの車中から見て衝撃を受け、画家を志したそうです。
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東京国立近代美術館には153点の戦争記録画が保管されているそうで、これらの多くは、日中戦争から太平洋戦争にかけて、軍部の委嘱によって制作されたものだそうです。
戦後、連合軍総司令官は153点を接収し、上野の東京都美術館に保管、その後1951年にアメリカに移されましたが、1961年の日米修好100年を機に国内で返還を求める声があがり、アメリカ政府から日本政府に「無期限貸与」。東近美が引受先になったそうです。
藤田嗣治による戦いの生々しい描写や、中村研一によるB29を撃ち落とした瞬間の作品は、戦争の恐ろしさを物語っています。各地で戦争が行われている今、戒めのためにも、見ておく必要性を感じました。
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新収蔵作品の清宮質文の木版は詩的で、ひっそりとしていて魅了されました。
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反復する作品のくくりとしてのコーナーに宮脇愛子さんの大理石の作品あり。解説には「彫刻家として知られる宮脇が初期に手がけた一連の絵画は、制作から35年を経た1996年に偶然発見され・・・・」とありました。不勉強で知りませんでした。
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松本旻のくろまめの版画は、一つ一つ違うくろまめの版を100個つくり、いっぺんに刷るという骨の折れる作品。くろまめのサイズや形はほぼ同じですが、同じ版を使わないなんて・・・並大抵ではないですね。
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2階に降りてきたときにはすでにエネルギー切れでしたが、フェミニズムの映像作品をかいつまんで拝見。「時間のない方のために~~~」と分かりやすいチャートが用意されているという配慮まであり、フェミニズムを少し勉強。

作品はもちろんですが、解説には為になることが端的に書いてあるので、たいへん勉強になりました。必読です。

後期:2025年4月15日~6月15日も必見ですね。

おだち れいこ

「ポートレイト/松本竣介と現代作家たち」展
2025年4月16日(水)~4月26日(土)11:00-19:00 ※日・月・祝日休廊
377_a出品作家:松本竣介、野田英夫、舟越保武、小野隆生、靉嘔、池田満寿夫、宮脇愛子+マン・レイ、北川民次、ジャン・コクトーほか

松本莞さんが『父、松本竣介』(みすず書房刊)を刊行されました。ときの忘れものでは莞さんのサインカード付本書を頒布するとともに、年間を通して竣介関連の展示、ギャラリートークを開催してゆく予定です。
『父、松本竣介』の詳細は1月18日ブログをお読みください。
ときの忘れものが今まで開催してきた「松本竣介展」のカタログ5冊も併せてご購読ください。
画家の堀江栞さんが、かたばみ書房の連載エッセイ「不手際のエスキース」第3回で「下塗りの夢」と題して卓抜な竣介論を執筆されています。
1200-hyoshi著者・松本莞
父、松本竣介
発行:みすず書房
判型:A5変判(200×148mm)・上製
頁数:368頁+カラー口絵16頁
定価:4,400円(税込)+梱包送料650円

●ときの忘れものの建築空間についてはWEBマガジン<コラージ2017年12月号18~24頁>に特集されています。
〒113-0021 東京都文京区本駒込5丁目4の1 LAS CASAS
TEL: 03-6902-9530、FAX: 03-6902-9531 E-mail:info@tokinowasuremono.com 
http://www.tokinowasuremono.com/
営業時間=火曜~土曜の平日11時~19時。日・月・祝日は休廊。
JR及び南北線の駒込駅南口から約8分です。
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