第一期の作品

2001年7月 漏斗都市


2001年8月 地中都市


2001年9月 垂直都市
 

2001年10月 方城都市

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 磯崎新さんからのメッセージ

Uさん、Wさん
 はじめて世界の街を旅したのちに、私はひとつの都市論をかき、「見えない都市」 という小みだしを終章につけてしまった。
言葉は呪縛するのですね。以来四十年、私の都市についての思考、提案、デザイ ン、すべてこのひとことを巡ってなされてきました。それから十年程して、イタロ・カルヴィーノが同名の小説を書き、五年程して日本語でも読めるようになった。マルコ・ポーロが、シルク・ロードで訪れた街のことをフビライ・カンに物語るという趣向です。これは小説、私のは都市論、無関係なんですが、虚構という点では同じだと気づいたのは、更に二十年後。南支那海上に島=都市をつくり、これを『海市』(ミラージュ・シティ)と命名したときでした。砂漠の都市も蜃気楼のかなたにゆらめいていた。カルヴィーノはあの光景をイメージして『見えない都市』という題を思いついたに違いない。
 どの都市も刻々と姿を変えます。記憶もあやしくなります。空想が肥大します。だ が、人々はそんな都市に住んでいると思っている。みずからの栖をつむいでいる。集合して空中に楼閣を組みあげている。想像のなかの楽園とか死後の都市のほうがよりきらびやかに飾られている。眼前の都市の姿を信じてないためでしょうか。都市が見えないことを直観していたためだと私にはみえます。

 Uさん、Wさん
あなたがたは、私が一ダースしか住宅の設計をしてないことを知っていたのです ね。だから、先回の企画『栖十二』という数が算出されたのでしょう。都市については四十年以上やっている。スケッチブックを持ち歩いている。異った街で、違った地勢をみると、無理を承知でコンペに参加している。これは、つかみどころのない『見えない都市』を相変らず捜しつづけている証拠ではないか。もう十年しか残っていないよ。とりあえず、十ダースで区切ってみたらどうだ、こんな具合いに裏読みされたのじゃないか。
 『晩年』と題した小説はその作家が若年の頃に書いています。晩年に晩年のことを 書く阿呆らしさを知っていたのはF・L・ライトや谷崎潤一郎やです。彼等は別人のような仕事をしています。それにあやかって、『百二十の見えない都市』が、私に同じシチュエーションを与えてくれるならば、これは受けねばなるまい。『見えない都市』を見せることができれば、四十年前に口ばしったことの仕末ができる。あのとき虚だったものが実になっている。実だったものが虚になっている。虚虚実実というじゃないですか。『見えない都市』はそのどちらでもある。往復しています。その正体をどうやって引き出せるか。

 Uさん、Wさん
 とはいうものの勝算はまだない。いままで用いたことのない手法だけを使おうとし ている。いくつこなせるのだろうか。百二十という数の都市をマトリクスにおさめようとして、はたして実数か虚数か混乱してもいる。決まっているのは今世紀最初のディケードにうずめる箱の容積だけです。
 日付けが変りました。それがあなたがたの送った作業開始の指令だったんですね。