
瑛九 Q Ei
「昼の分析」
1959 oil on canvas
45.5x53.0cm
Signed
*「瑛九作品集」(日本経済新聞社)117頁所収
*山田光春私家版レゾネNo.449「昼」
瑛九=点描、といわれるほど、最晩年の点描作品は強烈な印象を私たちに与えています。
瑛九のコレクターなら一点は手にしたい、と思っているでしょう。
瑛九が生涯に残した油彩作品のうち現存するのは六百数十点(七百点はいかない)といわれています。
その中で最晩年1959年のいわゆる点描作品は、40点ほどあります。
これを40点もあると考えるか、僅か40点しかないと考えるか・・・。この10号ももちろんそれらの一点です。
なぜそんなことがわかるか。僅か48歳で亡くなった瑛九ですが、その周辺には若い多くの信奉者たちがいました。彼らは「瑛九の会」を組織し、機関誌「眠りの理由」を発行し、展覧会を開催、また「瑛九石版画総目録」など多くの資料を作成しました。瑛九ほど、没後の資料の充実した作家はいないといっても過言ではありません。
油彩に関しては、瑛九の友人で生涯を瑛九研究に捧げた山田光春先生(瑛九伝の著者)が、長年かけて日本全国の瑛九所蔵者を訪ね歩き、作品を撮影し、1977年に「瑛九油絵作品写真集」全3巻(限定5部)の写真アルバムを制作しています。いわば私家版油彩レゾネです。山田先生、福井瑛九の会(木水育男)、久保貞次郎、杉田都(瑛九夫人)らに配布されたそのアルバムの表紙に書かれた手書きの前書き全文は以下の通りです。
「この写真集は、瑛九の没後にぼくが各地を訪れて撮影した油絵のスライドを基にして、その作品写真を制作年代順に編集したものです。それぞれの作品には画題・制作年・大きさ等と共に、撮影の場所と年月日を付記しましたが、画題の中には、整理の都合上仮題をつけさせていただいたものもあります。 1977.5. 山田光春」
この貴重な資料には、No.1「秋の日曜日」(1925年 F4)から、No.481「つばさ」(1959年 F200)まで481点の油彩が収録されています。
これまで、宮崎はじめ大きな回顧展が何度か開かれていますが、そのたびにこの山田私家版レゾネが大きな役割を果たしてきました。
1977年当時の481点の所蔵者全員がわかるのですから、たいへんな資料です。
今回、ご紹介する 「昼の分析」10号は、最晩年の瑛九の生活を支えた福井の瑛九頒布会によって最初はNさんというコレクターが1万円で購入されました(号千円)。その後、大コレクターK氏の手に渡り、さらに某大企業の所蔵となり、その企業の消滅によって、別のKさんというコレクターのものとなり、さらにそれが<ときの忘れものコレクション>となりました。従って私どもが5人目の所蔵者となります。
さて、6人目のコレクターはどなたになるでしょうか。
瑛九の点描の中でもこのような淡く美しい色彩は他に例がありません。
現在開催中の瑛九展に展示しています。ぜひご覧になってください。
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