関西現代版画史
関西現代版画史編集委員会編
『関西現代版画史』
  2007年 美学出版
  四六判上製本、576頁
  価格:2,625円(税込)

もっと早くご紹介すればよかったのですが、現代版画史にとって重要な文献となる本が刊行されました。
編者は、奥村泰彦・木村秀樹・清水佐保子・中谷至宏・三木哲夫・本江邦夫の6人。
執筆は、20人以上に及びます。
<「版」というメディウムによる表現は関西という土壌で、豊かな実を結んだ。
本書は、版画を手がける画家でも、絵画を手がける版画家としてでもなく、版画を目的化せずに、版画や絵画を通して新たな世界を創出したいと願う関西の美術家たちの歴史を「現代版画」という視点から迫る試み>(帯より)として、4年ほどの期間をかけて刊行されたようです。

■ 目次
1章・関西現代版画史 序論
2章・現代版画の創造者たち 作家論
3章・版画コンクールの果たした役割
4章・関西版画におもう
5章・MAXI GRAPHICAと1990年代以後の版画表現
6章・芸術系大学における版画教育
7章・関西現代版画史 年表 1951-2005
8章・関西現代版画史 作家名鑑(150名強を紹介)

目次でおわかりのように、作家、コンクール、大学の版画教育などの各面から関西版画の動向を描いており、読み応えがあります。
576頁もの労作なので、私もまだ全部を読んでいるわけではないのですが、第2章では<現代版画の創造者たち>として関西の現代版画を主導した泉茂先生や吉原英雄先生について詳しく論じられています。
少し残念なのは、関西の版画界を支えた画廊についての言及がほとんどないことですが、図版も豊富に収録されており、第7章の<関西現代版画史年表 1951-2005>と、第8章<作家名鑑>は特に私たち画商にとって重宝な資料になります。
おそらく採算など度外視した出版だと思いますが、編者、出版社のみなさんに敬意を表します。
版画愛好家の皆さん、ぜひ本屋さんでご注文ください。
(ときの忘れものでは扱っておりません)

◆ときの忘れものでは「ジャン・ベルト・ヴァンニ『loveーラブー』出版記念展」を開催中です。
15日のサイン会及びオープニングにはたくさんの皆さんにご来廊いただきまことにありがとうございました。これだけ女性たちの多いオープニングはときの忘れものでは珍しい。
ヴァンニサイン3ヴァンニサイン2ヴァンニサイン1
50冊用意した絵本「loveーラブー」もあったという間になくなりました。
皆さん、ヴァンニさんにサイン、宛名(本人だったり、恋人だったり、生れたばかりの赤ちゃんだったり)と絵を描いてもらうのですが、悠然としかも一冊一冊丁寧に描くものだから、なかなか終わらず、オープニングの最中、ヴァンニさんはペンを離すひまもありませんでした。
若い人からご年配の方まで、女性の皆さんは皆積極的にヴァンニさんに自己紹介する。通訳なんか誰も必要としない。英語で、イタリア語で、フランス語で、そしてスペイン語で。
日本語しか解さない私としては、時代の変化を実感しました(遅い!)。
展覧会は29日まで。どうぞお出かけください。