東京都写真美術館で開催中の「シュルレアリスムと写真 痙攣する美」を見た(~5月6日まで)。***********
1924年にアンドレ・ブルトンを中心として、活動の開幕が宣言されたシュルレアリスムは、パリをはじめ世界中に波及し、多様な表現世界を繰り広げました。大戦間に誕生したこの20世紀最大の芸術運動は、世界的な広がりを見せ、純粋な視覚表現から広告やファッションといったあらゆる領域にまで浸透し、人々の感性や表現力に革命をもたらしました。
本展は、写真とシュルレアリスムの関係に注目した国内初の大規模展です。シュルレアリスムの全貌を問い直し、「シュルレアリスムとは何か」という問いかけから、「写真とは何か」という問いかけに繋がる考察の場として、そのユニークな視覚世界を約200点でご紹介いたします。
(同館のHPより)
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<写真とシュルレアリスムの関係に注目した国内初の大規模展です>と自負するだけあって、質の良い写真がずらり展示されていて圧巻。
さすが写真美術館、同館所蔵写真のレベルの高さを実感するとともに、横浜美術館所蔵作品や個人蔵なども含めて、充実した出品内容でした。百数十年の歴史しかない写真というメディアがシュルレアリスム運動と分かちがたく結びついていることがよくわかり、会場を行きつ戻りつしてそれぞれの作品の素晴らしさを堪能してきました。
わが瑛九のフォトデッサン、コラージュも埼玉県立近代美術館所蔵のものなど9点が出品されていました。
「こりゃあカタログは10冊は買わなきゃあ」と思い、ミュージアムショップに行ったら、「カタログは作っていません」とのことで、がっくり。
雑誌『AVANTGARDE』VOL.5の特集がそのかわりだというので2冊買ったのだが、とても「国内初の大規模展」の内容を伝えるものとはなっていない。出品リストはおろか、出品作家名すら掲載されていない。
この展覧会の企画構成者であり、同館学芸員の神保京子さんのテキスト「シュルレアリスムと写真ー痙攣する美」が掲載されているが、この展覧会に出品されている日本人作家については一言も言及されていない。「写真とシュルレアリスムの関係に注目した国内初の大規模展」としてマン・レイらの代表作に加え、敢えて日本人作家の写真作品を出品したのには企画構成者として何らかの意図があったに違いないのに、それに触れないのは、書けないのか、書かないのか。あるいは日本人作家は「刺身のツマ」扱いかと勘ぐってしまう。
同誌は<公式カタログスタイル>と銘打って、公立美術館との共同企画とまでいっていながら展覧会の基本情報すら載せていない、編集者の見識を疑いますね。たぶん素人が編集しているのでしょう。
帰宅して慌てて東京都写真美術館のウエブサイトを覗いたのだが、そこにも出品作家の名前すら掲載されていない。チラシにも数名の作家名があるだけ、「国内初の大規模展」の名が泣く。どういう風に大規模なのか知らせなければ宣伝しようにもできない、と八つ当たりしたくなる。
これでは困るではないか。
私、最近とみに記憶力が落ちていますので、忘れないうちに出品作家名を記します。
ウジェーヌ・アジェ、ジャック・アンドレ・ボワッファール、マン・レイ、ブラッサイ、ハンス・ベルメール、モーリス・タバール、ヴォルス、ピエール・ブーシェ、ヘルベルト・バイヤー、ハーバート・リスト、インドリッヒ・シュティルスキー、ウンボ、アンドレ・ケルテス、ルネ・マグリット、ビル・ブラント、ジョージ・プラット・ラインス、ピエール・モルニエ、ハインツ・ハイェク・ハルク、カール・ブロッスフェルト・・・・、私は写真はあまり得意じゃないので作品と名前が結びつかない。それに写真ではないが、マックス・エルンストもあった。
日本人作家は、瑛九、平井輝七、山本悍右、後藤敬一郎、植田正治、大辻清司、岡上淑子、植木昇、中山岩太・・・・
たぶん漏れていると思う(悔しい、こんなことならメモしてくりゃあ良かった)。
民間の美術館やギャラリーならまだしも、税金によって運営されている公立美術館には、常に情報を公開し、貴重な文化資産を市民が共有できる姿勢を持って欲しい。出品リスト、最低限でも出品作家名は公開の記録として残すべきだと思います。
展示内容が充実していただけに残念です。
亭主追伸 2008年4月1日
上記の作家名には多くの漏れと誤記がありました。
中山岩太は間違い、安井仲治と混同してしまいました。お詫びします。
正しい出品作家名リストは、スタッフの三浦次郎が調べてきてくれましたので、ご参照ください。
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