ここ数日、暗澹たる思いでラジオを聴いていました。
ペシャワール会の現地スタッフとして活動を続けてきた伊藤和也さんが殺されてしまった。
ご両親の悲しみはいかばかりでしょう。親に先立つ不孝をするなどと伊藤さんは夢にも思わなかったに違いありません、それとも死への予感(恐怖)をときとして感じていたのでしょうか。
中村哲医師たちは、パキスタン北西辺境州ならびにアフガニスタンでの医療活動から、さらに一歩踏み込んで現地の人々の生活を向上(復興)させなければと、旱魃の中で水路を築くなどの活動を粘り強く続けてこられました。不撓不屈とは彼らのためにあるような言葉でした。
著書や講演などで中村医師の一本筋の通った志に打たれた私たちが、実際の支援活動に参加したのは2002年の東松照明写真展からでした。あのとき東松さんは「必死で生き延びようとしている誇り高き自然の民を支えるため、私にできることはないか。絶望的な無力感に打ちのめされながらも、39年前のカブールとバーミアンの風物とそこで暮らす人々の写真をここに差し出し、アフガニスタンの人々が、一日でも早く、これらの写真にみられる平穏な日々を取り戻すことを願うものである。」と呼びかけました。
あれから6年たっても復興どころか、国土と人々の生活は荒廃する一方です。
ペシャワール会会員に送られてくる会報で、中村医師は繰り返し、私たちの無知こそが悲劇を生むのだと指摘し、武器やばら撒きのお金ではなく、そこに生きる人々とともに汗して働くことによって得られる信頼関係こそが何よりの安全保障なのだと力説していました。
今回の悲劇で、現地での活動は停滞を余儀なくされるでしょうが、だからといって自衛隊を派遣すれば、などという暴論が大手をふってまかり通るようでは困ります。
微力ではありますが、私たちは中村哲医師とペシャワール会を支援するチャリティ・オークションを通じて、また一個人として中村医師と同会の活動に可能な限り支援を続けるつもりです。
いまは静かに伊藤さんの冥福を祈りたいと思います。