開催中の植田正治展からの作品紹介その四回目です。
昨日、東京美術倶楽部で開催中のTCAF2008の私たちのブースにいらした方が、展示してあった植田正治の写真をご覧になって、「実家が境港で、母が植田さんの写真館で撮ってもらったんですよ。」と話してくださいました。確かに植田さんは写真館をなさっていて、近所では他になかったそうですから、撮ってもらった方は数知れないはずです。しかし、植田ファンからすれば、それはかなり羨ましい話しです。その方のおっしゃるには、お母さんはお友達と4人で撮ってもらったそうですが、正面を向いているのは一人だけ、他の三人はそれぞれ違った方を向いていて、指先まで演出されたそうです。写真館でも演出されていたんですね。

今日の作品は、「妻のいる砂丘風景(III)」です。今回、同じタイトルの作品が2点出品されていますが、片や長方形、片や正方形と画面の形が違っています。もちろん同じネガからプリントされているもので、正方形の方は、画面左側がトリミングによって海の部分をカットされています。また、焼きの調子もコントラストを強調した、硬い感じに見えます。植田さんは、暗室ワークを非常に楽しんでいらしたようで、そのときの気分でトリミングしたり、焼きの調子を変えてみたりということがあったそうです。そして、そのヴァリエーションとも言えるプリントもまた植田正治の作品としてご自分でちゃんとサインをいれていらっしゃいました。写真を撮るだけではなく、暗室での作業も含めて「写真する」ことを終生楽しまれた方でした。長方形、正方形、どちらがお好きですか?
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植田正治「妻のいる砂丘風景(III)」
c.1950(Printed Later)Gelatin Silver Print
23.6x28.0cm signed

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植田正治「妻のいる砂丘風景(III)」
c.1950(Printed Later)Gelatin Silver Print
16.0x16.0cm signed

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◆ときの忘れものでは、11月14日[金]―12月6日[土]まで「植田正治写真展ー砂丘劇場」を開催しています。

◆ときの忘れものは、24日まで東京美術倶楽部で開催中の「TCAF2008」に出展しています(ときの忘れものブース3-31)。