開催中の植田正治展からの作品紹介その八回目です。3週間の会期でしたが、もうあと三日間を残すのみとなりました。どうぞお見逃しのないように。
今日ご紹介する作品は、「砂丘モード」の2点です。
植田正治は、生涯アマチュア写真家を標榜していました。つまり、自分の撮りたいものだけを撮り続けたという意味ですが、1983年から「砂丘モード」のシリーズを撮り始めます。これは、菊池武夫デザインのMEN'S BIGIの広告写真で、初めて請け負いの撮影をしたということになります。植田さんの次男植田充さんが、植田さんにこの仕事を勧めたそうですが、それは、この1983年3月に最愛の妻である紀枝さんを亡くしていたことと無縁ではないでしょう。失意の植田さんに何とか写真を撮らせようとしたのではないかと思います。
しかしてこの「砂丘モード」は、若者に受け入れられ、一般の人たちへの認知度を高めることになります。とは言え、先日NHK教育テレビで植田正治写真美術館の紹介をしたときに、植田さんの撮影風景が流れましたが、ちょうど砂丘モードの作品を撮っているところで、たまたま砂丘に来ていた詰襟の中学生数名を、洋服を着せた案山子の背景に並ばせて撮影していましたが、だんだん前に進んで、ついには洋服を撮らずに、中学生だけを撮り始めました。その様子を見ると、やはり撮りたいものを撮ると言う姿勢は終生変わらなかったようです。
「砂丘モード」の撮影は、その後の自身の作品への影響は多大であったと言えますし、それまでの植田モダニズムの集大成として完成度は高く、自己模倣に陥らずに、新しいものを創り続けた証左となりました。
出品作の2点は、何のために撮影された作品なのか不明ですが、そんなことは無関係に、ひじょうにシュールでクールな面白い作品になっています。砂丘に立っている十字のものは何なんだろうと、つい覗き込んでしまいますし、「砂丘モード１」の左下に写り込んだ影は誰のものだろうか、たまたま写ってしまったのだろうかと、いろいろ興味の尽きない作品です。
植田正治「砂丘モード１」
1983年ごろ（Printed Later）
Gelatin Silver Print
22.0x29.1cm　signed

植田正治「砂丘モード２」
1983年ごろ（Printed Later）
Gelatin Silver Print
22.0x29.1cm　signed

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