「第19回瑛九展~時を超えて」は、おかげさまをもちまして、無事終了いたしました。多くの方に足をお運びいただき御礼申し上げます。
今日は、会期中にご紹介できなかった村井正誠の作品をご紹介いたします。

村井正誠は、はじめ風景画家を目指していましたが、1928年からの4年間のヨーロッパ留学で、モンドリアンらの前衛美術を実際に見ることで抽象に目覚めます。帰国後、第1回自由美術家協会展に抽象的風景画とも呼ぶべき「UNBAIN」シリーズを発表、その後も「CITE」「Village」などの作品を発表し、日本抽象画のパイオニア的存在となります。戦後、1950年にモダンアート協会を設立したころから、太い線と色彩の組み合わせによる作品を制作し始めます。
今日ご紹介する作品は、二点とも「顔」というタイトルですが、リトグラフのほうは1955年の作品で、黒い太い線と黒の濃淡によって、より抽象的に描かれています。一方、水彩作品は、1990年作家が85歳のときの作品で、明るい青の上に柔らかいが迷いのない線で顔が描かれています。村井作品は、純粋抽象ではなく、モチーフをより単純化して、線と色に分解して再構成したもので、その画面からはユーモアと温かみを感じます。
murai_02_kao-litho
1955年 リトグラフ
42.0×27.0cm
Ed.30 サインあり

murai_01_kao-suisai
1990年 水彩
31.5×24.0cm
サインあり

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◆1905年岐阜に生まれる。文化学院大学部美術科で有島生馬、石井柏亭に師事。渡仏し、ヨーロッパ各地を旅しながら制作、キリスト教美術やモンドリアンの幾何学抽象など前衛美術に印象を受け、32年帰国。友人たちと画廊で「新時代洋画展」を毎月開く。山口薫、矢橋六郎、長谷川三郎瑛九、浜口陽三など参加。自由美術家協会を創立するが戦後に離れ、モダンアート協会創立。1999年、歿。