ときの忘れもののブログは、世の中にあまたあるブログに中でそう目立つものでもないし、むしろマイナーな部類に入ると思います。
読んだ方からときたまメールや掲示板で感想を寄せられることもありますが、ブログ自体に書き込まれるコメントはほとんどありません。
ところが、昨年4月20日付の「ジャン・ベルト・ヴァンニ展~三辺律子~コレクターの声第16回」だけは異常にアクセスが多く、書き込みが次々となされる。
少し、説明すると私の古くからの友人の画家・ジャン・ベルト・ヴァンニさんの絵本『loveーラブー』が翻訳出版されたのを機会に、ときの忘れもので昨年3月出版記念展を開催しました。
日本ではとても出来ないような洒落た体裁で、読み終わった後、胸がジンとするような素晴らしい絵本なのですが、それを見事な日本語に訳したのが三辺律子さんでした。
ヴァンニ 三辺律子
私、このときまで三辺さんのことを存知あげなかったのですが、ヴァンニさんの個展のオープニングに来てくださり(ヴァンニさんと三辺さんはこのとき初めて会った)、作品まで買ってくださった。その人柄と言葉の美しさに感銘を受けた私は早速三辺さんに原稿を依頼、それがブログの「コレクターの声」に掲載された次第です。
ところが、この三辺さん、クリス・ダレーシー原作、浅沼テイジ挿画の「龍のすむ家」の翻訳者だった。竹書房から出ている全4巻のこの本、海外児童文学と一口に言ってしまえばそれまでだが、実はたいへん熱心なファンに支えられている。
<龍のすむ家>のジャケットによれば、「下宿人募集―ただし、子どもとネコと龍が好きな方。そんな奇妙なはり紙を見て、デービットが行った先は、まさに“龍だらけ”だった。家じゅうに女主人リズの作った陶器の龍が置かれ、2階には《龍のほら穴》と名づけられた謎の部屋があった。リズはそこで龍を作っているというが、奇妙なことにその部屋には窯がない。いったいどうやって粘土を焼いているのか…。ひっこし祝いに、リズはデービットに「特別な龍」を作ってくれた。それは片手にノートを持って、鉛筆をかじっているユニークな龍だった。『一生大事にすること、けして泣かせたりしないこと』そう約束させられたデービットは彼をガズークスと名づけた。やがて、ふしぎなことが起きはじめる。デービットが心の中にガズークスの姿を思い浮かべたとたん、ガズークスが持っていた鉛筆で文字を書きはじめたのだ!デービットはもうすぐ誕生日を迎えるリズのひとり娘ルーシーのために、ガズークスと一緒に物語を書くことにした。だが、物語に書いた出来事がどんどん現実になりはじめて…。はたして、ふたりの物語はどんな結末を迎えるのか?リズとルーシーは何者なのか?そしてこの家の龍たちは、もしかして…?ファンタジー王国イギリスからやってきたすてきなすてきな物語。」らしい。
この本のファンが、ネット検索で「三辺律子」さんを探し出し、ときの忘れもののブログが三辺ファンの掲示板と化しています。
少し悔しいのは、その書き込みが全て「龍のすむ家」についてで、肝心のヴァンニさんの「love-ラブ-」に触れたものは一つもない。
恐らく、「龍のすむ家」の刊行を待ちわびるファンがその希望を直接三辺さんに伝えられる希少な場として使われているのでしょうね。
ま、それもよしとしましょう。