武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中(11月7日まで)の「草間彌生展 ワタシというナニモノかへの問い」に関連して先週末10月23日に同館に呼ばれて亭主が講演してまいりました。
今年の講演は3回目で、弘前では前川國男について、富山では池田満寿夫についてしゃべらされましたが、今回も例によって漫談でした。東京だったせいで知人、友人はじめ思いがけずもたくさんの方が来場され、少々恥ずかしい思いをしてきました。
早速ツイッターに以下のような感想をいただきました。
○草間に留まらず日本の版画の全盛と終焉までが分かり大変為になりました。
現代美術作家をスポイルした2つの事件と草間さんの怖るべき勘の鋭さのお話は特に興味深いものがありました。
○画廊「ときの忘れもの」ディレクターの綿貫不二夫さんが語る「草間彌生版画の身体感覚」版画とアーティストの関係、画廊と芸術とのつき合い方、版画の歴史、時代と共に変化してゆく価値観と世間の評価。草間彌生さんをぶれない、めげない、勘がいい、アーティストだとお話ししていたのがとても印象的。
「草間彌生版画の身体感覚」などという難しい演題を与えられたのですが、もとより画商の私にそんな高尚な話ができるわけはありません。結局は画商として経験してきたこと、草間さんのエディションのこと、そして専門(といえるかどうか)の版画の話をする以外に道はなく、それらをどう筋道つけて話すか、無い頭をひねくりまわして前の晩ふと思いついたのが1966年と1993年の出来事でした。
<版画の時代>のピークを象徴する1966年のヴェネツィアビエンナーレでの池田満寿夫の受賞、そこにゲリラ出展した草間さんが、その27年後に満を持して日本国の代表としてヴェネツィアに凱旋する・・・・・・というような与太話をしてきました。
ご静聴ありがとうございました。
**************
◆さて、明日から「S氏コレクション 駒井哲郎PART II展」を開催いたします。
会期=2010年10月26日[火]―11月6日[土] 12:00-19:00 *会期中無休
異色のコレクターS氏が30数年かけて蒐集した駒井哲郎コレクション約100点の中から、昨秋のPart Ⅰでは、同じ版から刷られた同じ作品を敢えて複数コレクションするという「異端」ともいえる蒐集作品を30点展示しました。
町田市立国際版画美術館学芸員の滝沢恭司氏に「コレクションの異端」といわしめた、その展示は多くの人を驚かせました。
S氏の蒐集ときたら、一作品二枚の刷りを入手するどころの話ではない。『反歌』所収の同名作品(PL.12)や同じ詩画集所収の《食卓にて、夏の終りに》(PL.10)などは三枚の刷りを、そして先に触れたように、《死んだ鳥の静物》はなんと四枚の刷りを入手して、微妙な刷りの違いを楽しむように、もっといえばまるでそれらの刷りを違う作品のように見なしてそのまま所蔵しているのである。こうしたコレクションは「主流」とはいえない。むしろ「小数派」である。
言い方を代えてそれを、「独創」とか「異端」ということばで呼んでも差し支えないだろう。しかしそう呼べるコレクションだからこそ、それ自体に主張が感じられ、資料的な価値さえ見出せるのである。
(滝沢恭司「コレクションの異端―S氏駒井哲郎コレクションについて思うこと」2009年12月7日『ときの忘れものアーカイヴス vol.4』より抜粋)

今年は、駒井哲郎の生誕90周年です。
Sさん所蔵の駒井哲郎展の第二回となる今回は、「銅版画の詩人」と謳われ、叙情的な面が高く評価される駒井版画の奥底に流れるものを掬いあげ、S氏コレクションの二つ目の特色である「生命あるものへ」の視点を凝縮した展示にします。
S氏のコレクションのきっかけともなった《食卓にて、夏の終りに》に象徴されていますが、駒井哲郎は樹木、鳥、果実など「いのちあるもの」へのまなざしを生涯もちつづけました。《カタツムリ》《果実の受胎》《調理場》《囚人》《叢》など、一見、地味にみえるそれらの作品に息づく「生命あるものへ」の讃歌を、約30点の展示でさぐります。
今回、所蔵者のSさんがこのブログにご自分のコレクションについて、エッセイを書いていただけることになりました。明日から連載しますので、どうぞご期待ください。
■ときを同じくして銀座の資生堂ギャラリー、及び静岡県掛川の資生堂アートハウスでも福原義春コレクションによる駒井哲郎展が開催されます。こちらもどうぞお見逃しなく。
2010年10月26日(火)~12月19日(日)銀座・資生堂ギャラリー
2010年10月29日(金)~12月19日(日)掛川・資生堂アートハウス
■駒井哲郎 Tetsuro KOMAI
1920年東京生まれ。35年西田武雄に銅版画を学び始める。42年東京美術学校卒。50年春陽会賞、翌年第1回サンパウロ・ビエンナ-レで受賞。木版の棟方志功とともにいち早く世界の舞台で高い評価を獲得し、戦後の美術界に鮮烈なデビューを飾る。53年資生堂画廊で初個展。54年渡仏。56年南画廊の開廊展は駒井哲郎展だった。72年東京芸術大学教授。銅版画のパイオニアとして大きな足跡を残す。1976年永逝(享年56)。
◆第3回写真を買おう! ときの忘れものフォトビューイングは、11月12日(金)18時半~開催します。
ホストの原茂さんが今回お招きする写真家は金子典子さんです。
※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/参加ご希望の方は、電話またはメールにてお申し込み下さい)
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com
◆宮脇愛子の新作エディション『マン・レイへのオマージュ』

マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)をぜひご購入ください。
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
今年の講演は3回目で、弘前では前川國男について、富山では池田満寿夫についてしゃべらされましたが、今回も例によって漫談でした。東京だったせいで知人、友人はじめ思いがけずもたくさんの方が来場され、少々恥ずかしい思いをしてきました。
早速ツイッターに以下のような感想をいただきました。
○草間に留まらず日本の版画の全盛と終焉までが分かり大変為になりました。
現代美術作家をスポイルした2つの事件と草間さんの怖るべき勘の鋭さのお話は特に興味深いものがありました。
○画廊「ときの忘れもの」ディレクターの綿貫不二夫さんが語る「草間彌生版画の身体感覚」版画とアーティストの関係、画廊と芸術とのつき合い方、版画の歴史、時代と共に変化してゆく価値観と世間の評価。草間彌生さんをぶれない、めげない、勘がいい、アーティストだとお話ししていたのがとても印象的。
「草間彌生版画の身体感覚」などという難しい演題を与えられたのですが、もとより画商の私にそんな高尚な話ができるわけはありません。結局は画商として経験してきたこと、草間さんのエディションのこと、そして専門(といえるかどうか)の版画の話をする以外に道はなく、それらをどう筋道つけて話すか、無い頭をひねくりまわして前の晩ふと思いついたのが1966年と1993年の出来事でした。
<版画の時代>のピークを象徴する1966年のヴェネツィアビエンナーレでの池田満寿夫の受賞、そこにゲリラ出展した草間さんが、その27年後に満を持して日本国の代表としてヴェネツィアに凱旋する・・・・・・というような与太話をしてきました。
ご静聴ありがとうございました。
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◆さて、明日から「S氏コレクション 駒井哲郎PART II展」を開催いたします。
会期=2010年10月26日[火]―11月6日[土] 12:00-19:00 *会期中無休
異色のコレクターS氏が30数年かけて蒐集した駒井哲郎コレクション約100点の中から、昨秋のPart Ⅰでは、同じ版から刷られた同じ作品を敢えて複数コレクションするという「異端」ともいえる蒐集作品を30点展示しました。
町田市立国際版画美術館学芸員の滝沢恭司氏に「コレクションの異端」といわしめた、その展示は多くの人を驚かせました。
S氏の蒐集ときたら、一作品二枚の刷りを入手するどころの話ではない。『反歌』所収の同名作品(PL.12)や同じ詩画集所収の《食卓にて、夏の終りに》(PL.10)などは三枚の刷りを、そして先に触れたように、《死んだ鳥の静物》はなんと四枚の刷りを入手して、微妙な刷りの違いを楽しむように、もっといえばまるでそれらの刷りを違う作品のように見なしてそのまま所蔵しているのである。こうしたコレクションは「主流」とはいえない。むしろ「小数派」である。
言い方を代えてそれを、「独創」とか「異端」ということばで呼んでも差し支えないだろう。しかしそう呼べるコレクションだからこそ、それ自体に主張が感じられ、資料的な価値さえ見出せるのである。
(滝沢恭司「コレクションの異端―S氏駒井哲郎コレクションについて思うこと」2009年12月7日『ときの忘れものアーカイヴス vol.4』より抜粋)

今年は、駒井哲郎の生誕90周年です。
Sさん所蔵の駒井哲郎展の第二回となる今回は、「銅版画の詩人」と謳われ、叙情的な面が高く評価される駒井版画の奥底に流れるものを掬いあげ、S氏コレクションの二つ目の特色である「生命あるものへ」の視点を凝縮した展示にします。
S氏のコレクションのきっかけともなった《食卓にて、夏の終りに》に象徴されていますが、駒井哲郎は樹木、鳥、果実など「いのちあるもの」へのまなざしを生涯もちつづけました。《カタツムリ》《果実の受胎》《調理場》《囚人》《叢》など、一見、地味にみえるそれらの作品に息づく「生命あるものへ」の讃歌を、約30点の展示でさぐります。
今回、所蔵者のSさんがこのブログにご自分のコレクションについて、エッセイを書いていただけることになりました。明日から連載しますので、どうぞご期待ください。
■ときを同じくして銀座の資生堂ギャラリー、及び静岡県掛川の資生堂アートハウスでも福原義春コレクションによる駒井哲郎展が開催されます。こちらもどうぞお見逃しなく。
2010年10月26日(火)~12月19日(日)銀座・資生堂ギャラリー
2010年10月29日(金)~12月19日(日)掛川・資生堂アートハウス
■駒井哲郎 Tetsuro KOMAI
1920年東京生まれ。35年西田武雄に銅版画を学び始める。42年東京美術学校卒。50年春陽会賞、翌年第1回サンパウロ・ビエンナ-レで受賞。木版の棟方志功とともにいち早く世界の舞台で高い評価を獲得し、戦後の美術界に鮮烈なデビューを飾る。53年資生堂画廊で初個展。54年渡仏。56年南画廊の開廊展は駒井哲郎展だった。72年東京芸術大学教授。銅版画のパイオニアとして大きな足跡を残す。1976年永逝(享年56)。
◆第3回写真を買おう! ときの忘れものフォトビューイングは、11月12日(金)18時半~開催します。
ホストの原茂さんが今回お招きする写真家は金子典子さんです。
※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/参加ご希望の方は、電話またはメールにてお申し込み下さい)
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com
◆宮脇愛子の新作エディション『マン・レイへのオマージュ』

マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)をぜひご購入ください。
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