口上2~原茂

 「第3回 写真を買おう!! ときの忘れものフォトビューイング」には、写真家でありまたプリンターでもある金子典子さんをお招きいたします。

 現在では、ひょっとしたらプリンターとしてのお名前の方が高名でいらっしゃるかもしれません。じっさい、安井仲治、岡本太郎、植田正治といった世界的巨匠の展覧会用ニュープリントを焼いてこられたわけですから、「ネガは楽譜、プリントは演奏」というアンセル・アダムスの言葉からすれば、金子さんが世界的な名演奏家であることは言うまでもないことです。けれども、それも金子さんの作曲家としての力量があってこそです。写真家・金子典子の評価はまだまだこれからだと思っています。

 私が金子さんの作品を最初に拝見したのは、名著(怪著?)の誉れ高い安友志乃師匠(私に最初に写真を買うことについて文章を書くように勧めて下さったのが安友さんなので、今でもなお師匠と呼ばせていただいております。ハイ)の『撮る人へ』(窓社)の79頁に掲載されていた「鳥」(これは私が勝手に付けたタイトルで、「ラボテイク」のHPの金子さんのページの作品名では「未来への涙」となっていました。もっともこれはシリーズのタイトルだと思うので、正式な作品名についてはビューイングの時にお伺いしたいと思っています)。
KanekoNoriko01「ときの忘れもの」の10月22日付けのブログにも掲載していただいている、曇り空を背景にした古代の遺跡の上にひっそりと羽を休めつつ、飛び立つ時を待っているかのような鳥の写真です。

 一目見て心奪われてしまい、『撮る人へ』を鞄に、福沢先生御三名様を財布に、当時北青山にあったこれまた伝説のギャラリー「保加梨」に足を運びました。『撮る人へ』の歯に衣着せぬ舌鋒鋭い論客というイメージがあったので、どんな鬼女(ス、ス、スミマセン・・・汗)が出てくるかと思ったら、乙姫様のような魅惑の女性ギャラリストがお出ましになったのでウラシマは時の経つのも忘れたのでした(ってこれでいいでしょうか師匠?)。

 その時の展示は見目夏樹さんの「道なりに」。金子さんの展示でもないのに大丈夫かとも思ったのですが、「この金子さんの作品を見せて頂きたいのですが」と恐る恐るたずねると、すぐに奥からミュージアムケースに入った作品を持ってきてくださいました。貸しが中心とはいっても、ただの場所貸しではなく、作家さんと一緒に作品を作っていこうとする「準企画」ともいえるギャラリーで、展示期間中だけではなくその後も作家さんをフォローし、作品の販売をしてくださっている実に意欲的で魅力的なギャラリーでした(残念ながら2002年12月をもって閉廊・・・泣)。

 見せていただいた作品は、どれも決して大きなサイズではないはずなのに(印画紙サイズが大四つ〔297×355mm〕、イメージサイズが175×260mm)、圧倒的な存在感があって、これは何としても手許に置きたいと思わせるに充分なものばかりでした。こちらが覚悟していたプライスよりもずっと(ある意味では実に不当に!)リーズナブルなこともあって、お目当ての「鳥」だけではなく、「噴水」と「ジャングルジム」まで手に入れて意気揚々とギャラリーを後にしたことを思い出します。(この顛末については雑誌「Photo Pre(フォトプレ)」(窓社)の第6号にも「水妖」と題して書かせていただきました)。

 これらの金子さんの作品について安友師匠は「一枚の木の葉にも、せせらぎのきらめきにも、そこに存在するものに写真は自分を投影することが可能である、ということを金子さんの作品は語っている」、「その透徹した目で抽出された日常の光景は、印画紙上に品格をたたえながら静かに横たわっている」とコメントしておられます。滅多なことでは人を誉めない(!)師匠にここまで言わせ、広いバックヤードがあったわけではない(シャワー室を改造したと言っておられました)「ホカリファインアート」に作品を常備させた金子さんの作品をぜひ手に取って頂き、コレクションに加えていただければと思っております。また、これをコレクションの最初の一点として購入して下さる方の登場を心からお待ちしております。絶対のお勧めです。(はらしげる)

第3回写真を買おう! ときの忘れものフォトビューイングは、11月12日(金)18時半~開催します。
ホストの原茂さんが今回お招きする写真家は金子典子さんです。
※要予約(参加費1,000円/1ドリンク付/参加ご希望の方は、電話またはメールにてお申し込み下さい)。残席はあと二つです。
Tel.03-3470-2631/Mail.info@tokinowasuremono.com

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マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)をぜひご購入ください。

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