明日から、「9人のミューズたち」展を開催します(2010年11月16日[火]―11月21日[日] 会期中無休)。
ときの忘れもので個展やグループ展を開いてきた若い女性作家たち9人から近況報告をかねたメッセージを寄せていただきました。

3人目のミューズはやわらかな感性から生まれた優しい質感の陶オブジェを制作する渡辺貴子さんからのメッセージです。

◆渡辺貴子です。
7月に「Tricolore2010」展に参加してから約4ヶ月。いつもならば展示が終わった後は制作から離れてのんびりしている事が多いのですが、今年は10月に山梨で個展があったため休む間も無くとても忙しい夏を送りました。山梨の今回の場所は、北杜市長坂町にある「おいでやギャラリー」。かつては旅館だった所が病院になり、その後長坂町が管理する公共施設になった、変わった経歴を持つ建物です。そのため入り口には欄間が残り、中に入ると病院の受付らしき窓が現れ、部屋の真中には柱、壁には襖・・・と所々過去の辿った道をちょっとずつ残した、展示のためには造られていない場所でした。今までホワイトキューブ的な場所でしか展示を経験した事がなかったのですが、今年はときの忘れものも含め、個性的なスペースと縁があったようです。

おいでやギャラリーの玄関
おいでやギャラリーの玄関

山梨での展示は2003年以来7年ぶりで、会場が大きかった事もあり、新旧作品交えた展示になりました。7月の3人展でも、他の人達と作品を並べる事によって生まれる空気を新鮮に感じましたが、今回も自分の過去と現在の作品を改めて一緒に見る良い機会になりました。

おいでやギャラリー_展示会場
おいでやギャラリー展示会場

私は制作する時に簡単なスケッチを(いたずら描きに近いものですが)します。以前はそれらを基に平面作品も制作していました。土が乾いてしまう為、ある程度限られた時間内での制作が求められる一方、平面作品ではゆっくりと、時には立ち止まりながらも表現と向かい合えるので、イメージを具体化するのに役立った方法でした。その後、その試みが立体の壁作品へと発展したため、平面作品を制作するチャンスが無いままですが、土と違う素材を使う事で経験する過程はとても興味深く、陶芸作品ではなかなか表現しにくい色や繊細な線の実現は、土の制作で生まれる欲求不満を解消してくれたような気がします。相反する作業で模索していく事を改めて見直しました。
untitled_2003渡辺貴子《untitled》
2003年 

あまごい渡辺貴子《あまごい》
2005年 26.5cm×33.5cm

去年は以前から使ってみたかった半磁器土で、私にとっては大きめの(まだまだ小さいですが)作品を作る事に挑戦しました。初めての素材で新しい試み・・・それで久しぶりに大きな失敗を経験しました。そして思っていたよりもはるかに、半磁器という素材が扱い難く、大きい物の制作が大変な事を実感しました。次回の展示では、失敗をしない方法に戻ろうか・・・と悩んでいましたが、今年の展示はどちらも今までと違う初めてのスペース。その事が新たな挑戦を後押ししたような気がします。

今年で作品を発表し始めてからちょうど11年目。10年の節目を越え、初めての場所での展示を終えて、これまでの事、これからの事に思いを巡らせている今日この頃です。
(わたなべたかこ)

TakakoWATANABE_Untitled_small渡辺貴子
「untitled」
2009年
ひもづくり
H34.0×W24.5×D12.0cm

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから

7月の「Tricolore2010」展の折に書いていただいた「渡辺貴子のエッセイ」もあわせてお読みください。

◆ときの忘れものは2010年11月16日[火]―11月21日[日]まで「9人のミューズたち」展を開催します(会期中無休)。
9人のミューズたち
ときの忘れもので個展やグループ展を開いてきた9人(秋葉シスイ永井桃子根岸文子矢口佳那井村一巴井桁裕子渡辺貴子若宮綾子君島彩子)のミューズたちによる個性豊かな作品/平面、立体、オブジェ、写真等をご紹介します。

宮脇愛子の新作エディション『マン・レイへのオマージュ
マン・レイへのオマージュパンフ
マン・レイの折本仕立ての「回転扉(Pain Peint)」にインスパイアーされ、宮脇愛子がマン・レイへのオマージュとして制作した新作エディション、シルクスクリーン入り小冊子『Hommage a Man Ray マン・レイへのオマージュ』(DVD付き、限定25部)をぜひご購入ください。

内容については、マン・レイ・イストの石原さんがご自身のブログで紹介してくださっていますのでお読みください。

こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから