PULS東京コンテンポラリーアートフェアの報告

去る11月19日から21日の三日間、新橋の東京美術倶楽部において開催されましたPLUS 東京コンテンポラリーアートフェアに出展いたしました。

◆「PULS東京コンテンポラリーアートフェア」(旧TCAF)
会期=2010年11月19日[金]―11月21日[日] 
19日(金) 16:00-20:00、20日(土) 11:00-20:00、21日(日) 11:00-17:00
会場:東美アートフォーラム(東京美術倶楽部ビル3階4階)東京都港区新橋6-19-15
http://jpn.tcaf.jp/
出品作家:尾形一郎・優小野隆生ジョック・スタージス

昨年まではただのTCAFでしたが、今年は、頭に「PLUS プリュス」と付けて、より洗練されたアートフェアとするため、出展作家を三名までとし、出展画廊の数も67から40に減らしました。その結果、見る側には、よりそれぞれのブースの性格が明確になって良かったといえます。
ときの忘れものからは、小野隆生とジョック・スタージスというおなじみの作家に、今年「ウルトラ・バロック」の個展を開催した尾形一郎・尾形優さんの作品を出品しました。
小野隆生の作品は、昨年の作品ながら日本では初公開となる肖像画5点。毎年少しずつスタイルが変化していく小野先生ですが、これらの作品は、一層タッチが強くなって立体感が強調された作品になっています。
ジョック・スタージスの作品は、昨年撮影されたなかからカラー作品5点を出品しました。スタージスさん自身がカラーにシフトしていくことを明確にしているので、そのカラーの良さがよく出ている作品を選びました。
尾形一郎・尾形優夫妻の作品は、アフリカのナミビアで撮影されたもので、かつてダイヤモンドの採掘で栄えた街が、いまやゴーストタウンと化し、その家の中に砂が吹き込んで堆積したものをひじょうにスクエアに捉えた作品です。今回初めて150x120cmと93x74cmという特大サイズに引き伸ばして展示しました。それに建築家でもある尾形さんが自ら設計・製作した額(一見鉄に見えるように設計・塗装されている)に収められて、ひじょうに重量感のある作品となりました。
19日の昼過ぎから展示を開始し、小野作品とスタージス作品は、予定通り特に問題なく展示が終了し、大物の尾形作品に着手しました。本来なら尾形一郎さんがいらして陣頭指揮を執っていただくはずでしたが、数日前まで肺炎で高熱を出していたとのことで、奥様の優さんに来ていただいて展示に立ち会っていただきました。尾形さんの作品も三点ですし、釘に掛けるだけと聞いていましたから、すぐに展示作業は終わるはずでした。ところが、今回のブースの壁は、表と裏の板の間が空洞になっているため、表の板に釘を打ち込んでも、ぜんぜん効いてくれず、すぐ下を向いてしまいます。ちょうど通りかかったレントゲンヴェルケの池内さんにご相談したところ長いねじ釘を持ってきてくださり、これでやって見てくださいとのことで、早速取り掛かりましたが、これも同じでした。どうしたら良いかと、思案投げ首で、時間ばかりが経過し、焦りが出てきました。深くねじ込んでこれでどうかと思うと、引っ掛けるには短くなってしまってうまく行かず、抜けなくなったねじ釘をねじ込んだら、裏側のブースの壁を突き抜けてしまい、慌てて引き抜きました。そんなこんなで開場時間の16時を過ぎたころにようやく展示が終了。もう汗だくでした。この壁は他でも問題だったようで、重い作品を掛けているブースは、帰る時に壁からはずして帰るようにしていました。こちらも展示できたとは言え、ひじょうに微妙なところで掛かっているため、はずすと最初からやり直しになる可能性があり、心配でしたがそのままで何とか三日間を乗り切りました。

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小野先生の作品への関心の高さは、ヨーロッパでも実証済みで、今回も絵のことを分かっている人ほど、じっくりご覧くださいました。確実に小野ファンが増えていくようです。
スタージス作品は、少女のヌードですが、その美しさとモデルの凛とした強さに足を止める方も多く、作品を売っている場所とも知らず初めてアートフェアに足を踏み入れた若い女性が購入してくださいました。
尾形作品への観客の反応がもっとも面白く、はじめこれは写真なのか絵なのかと近づいて、写真であることに気づくと、今度はこの砂をどうやって家の中に運び込んだのか、またはこれはパソコンで画像処理したものかと訝ります。そこで、これは実際にある風景ですとお教えすると一様に驚かれる、という繰り返しでしたが、そういうこととは別に作品も額も好評で、展示作品全てが売れ自信を深めました。

会場全体を見回すと、ついこの間までアートフェアを席巻していたアニメ風の絵はほとんどなく、細密的な絵画、立体、写真が目立ちました。その辺りは、ある程度出展画廊を選ぶときに恣意的なものがあったのかもしれませんが、いかにしても、どうもある「傾向」が支配的になるのが日本のアートフェアかもしれません。
その点、ときの忘れものは、どこのアートフェアに出展しても異質なブースになってしまいます。よく言えば流行に左右されない、悪く言えば保守的なのかもしれませんが、自分の信ずるところが変わらないのは今の時代希少なのでは、と思ったりもします。

他の画廊の方やコレクターの方の印象を伺っても、今回のPLUSは観客の動員数が少なかったというのが共通の認識のようですし、実際そのように感じました。また、作品を買ってくださるのはもともと自分のところのお客さんであるということも聞きました。それでは、何の為の出展かと考え直さざるを得ません。来年はかなり厳しい開催となるのではと予想されるPLUS TCAF2010でした。

◆ときの忘れものは、2010年12月15日(水)~12月25日(土)まで「エドワード・スタイケン写真展」を開催します(会期中無休)。
スタイケン案内状600
エドワード・スタイケンは、20世紀のアメリカの写真にもっとも大きな影響を与えた写真家であるだけでなく、キュレーターとして数々の写真展を企画し、写真界の発展に多大な貢献をしました。
1986年と1987年に写真家のジョージ・タイスによってオリジナルネガからプリントされた、1920年代か30年代の作品を中心に、ヌード、ファッション、風景、ポートレートなど17点を選び展示いたします。
ぜひこの機会に古典ともいうべきスタイケンの写真作品をコレクションに加えてください。
出品リスト及び価格はホームページに掲載しています。

企画展の開催中は会期中無休です。