映画よお前もか。
コダック破綻に象徴される銀塩写真の衰退を嘆いたいたら、1月27日の朝日新聞には8段抜きの大きな記事で「映画にデジタルの波」「スクリーン数18年ぶりに減少」「機器更新できずに閉館」「興行収入17.9%減」という見出しが踊っていました。
シネコンは既に飽和状態、デジタル上映化が進み、地方の独立系映画館の閉鎖が続くという内容でした。
驚いたのは大手シネコンは今年中にフィルム映写機をほぼ撤去してデジタル上映への移行を進めるというのだから、カメラだけでなく、映画もフィルム時代に決別を告げるのでしょうか。
因果はめぐる、思えば17世紀のヨーロッパで創始されそのリアルな表現力が肖像画などに使われていたマニエル・ノワール(黒の技法 メゾチント)という銅版技法はカメラ(写真)の登場によってあっという間に衰退した。一時はまったく廃れてしまった技法だが、20世紀に入り、わが長谷川潔によって復活し、今では銅版画の王者ともいうべき技法として君臨している。
果たして、写真や映画はどうなるのでしょう。
ただいま開催中の「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」から、福田勝治の名作中の名作をご紹介しましょう。

福田勝治 Katsuji FUKUDA
「光りの貝殻(ヌード)」
1949年
ゼラチンシルバープリント
33.3×40.2cm
裏面に作家自筆サインあり

裏面のサインとタイトル
「光りの貝殻(ヌード)」は、福田勝治の数多いヌード作品の中でも白眉と言える作品で、1994年に山口県立美術館で開催された「写真家/福田勝治展」のカタログの表紙にも使われています。
漆黒の中にモデルの顔に一条の光が差し、体の稜線が光でなだらかなカーブを描く。まさに光の彫刻です。
「真の表現をこころみようとする写真家は、裸体を一つの大理石の石塊として考えなくてはならない。そこで写真は『鑿』のかわりに『カメラ』でそれを表現し、自己の思うままの裸像を築き、穿ち、創らなければならない。」(福田勝治『色と光の芸術』より、1951年)
山口県立美術館所蔵のものは、サイズが40.5x31.9cmと縦長の作品です。
ときの忘れもの所蔵作品は、上下が大胆にトリミングされていて、33.3x40.2cmと横長の作品になっています。
裏には「月光に照らされて 女の曲線 うねり波うつ」と作家によって書かれていて、あるいは、トリミング後のこの作品のタイトルとしたかったのかもしれません。
福田勝治の生きた時代は、まだ写真のプリントの市場がなかったといってもよく、売り買いもほとんどなかった。
作家自筆のサインの入ったプリント、特にこの「光りの貝殻」のようなミュージアムピースは、たいへん貴重です。
画廊は今日(日曜)も明日(月曜)も12~19時まで開いています。
どうぞお出かけください。
◆1994年に開催された山口県立美術館の回顧展図録を紹介します。

『写真家/福田勝治展 孤高のモダニスト』図録
会期:1994.10.7-1994.11.27
発行:山口県立美術館
編集:榎本徹、河野通孝
270p ; 30cm
こちらの作品の見積り請求、在庫確認はこちらから
●孤高を貫いたその生涯と作品については「飯沢耕太郎のエッセイ」をお読みください。
■福田勝治1899年山口県生まれ。1921年東京で高千穂製作所に勤務しながらヴェス単で写真を撮り始める。関東大震災後、大阪に移る。1926年「第1回日本写真美術展」でイルフォード・ダイヤモンド賞を受賞。翌年、堺市で写真館を開業するもうまく行かず、生活が困窮する中でもバウハウスの影響を受けた構成的な静物写真の作品制作を続ける。1936年『アサヒカメラ』に連載された「カメラ診断」が好評となり、それをまとめた『女の写し方』をはじめとして多くの指南書を出版、広告写真でも活躍する。戦後、女性美を追求したヌード作品を発表し、日本写真界をリードする存在となる。そのなかの「光りの貝殻(1949)」は福田の代表作となる。
リアリズム写真運動が写真界を席巻する中でも、自分のスタイルを崩すことなく、孤高をつらぬく。1955年キャノン・コンテストで推薦を受けてイタリア旅行に招待される。翌年、「イタリア写真展」を開催し大好評を得た。この後、「京都」「銀座」「隅田川」などのシリーズを発表。1950年代末より実験的なカラー写真の制作を始め、1970年には日本橋高島屋で「花の裸婦・福田勝治写真展」が開催された。1991年逝去。享年92。横浜美術館、川崎市市民ミュージアム、東京都写真美術館、山口県立美術館に作品が所蔵。
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◆ときの忘れものは、2012年1月27日[金]―2月4日[土]「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」を開催しています。

20世紀の銀塩写真を中心とするアナログ写真は、デジタルカメラの進化により、いまや消え行く運命にあります。
本展では「裸婦」をテーマに、中山岩太、ベッティナ・ランス、福田勝治、細江英公、大坂寛、植田正治、五味彬、服部冬樹、ジョック・スタージス、井村一巴、カリン・シェケシー、ヤン・ソーデック、カート・マーカス、ウェイン・メイザーの美しいモノクロームプリントを展示します。
◆今月のWEB展は「恩地孝四郎展」です。
コダック破綻に象徴される銀塩写真の衰退を嘆いたいたら、1月27日の朝日新聞には8段抜きの大きな記事で「映画にデジタルの波」「スクリーン数18年ぶりに減少」「機器更新できずに閉館」「興行収入17.9%減」という見出しが踊っていました。
シネコンは既に飽和状態、デジタル上映化が進み、地方の独立系映画館の閉鎖が続くという内容でした。
驚いたのは大手シネコンは今年中にフィルム映写機をほぼ撤去してデジタル上映への移行を進めるというのだから、カメラだけでなく、映画もフィルム時代に決別を告げるのでしょうか。
因果はめぐる、思えば17世紀のヨーロッパで創始されそのリアルな表現力が肖像画などに使われていたマニエル・ノワール(黒の技法 メゾチント)という銅版技法はカメラ(写真)の登場によってあっという間に衰退した。一時はまったく廃れてしまった技法だが、20世紀に入り、わが長谷川潔によって復活し、今では銅版画の王者ともいうべき技法として君臨している。
果たして、写真や映画はどうなるのでしょう。
ただいま開催中の「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」から、福田勝治の名作中の名作をご紹介しましょう。

福田勝治 Katsuji FUKUDA
「光りの貝殻(ヌード)」
1949年
ゼラチンシルバープリント
33.3×40.2cm
裏面に作家自筆サインあり

裏面のサインとタイトル
「光りの貝殻(ヌード)」は、福田勝治の数多いヌード作品の中でも白眉と言える作品で、1994年に山口県立美術館で開催された「写真家/福田勝治展」のカタログの表紙にも使われています。
漆黒の中にモデルの顔に一条の光が差し、体の稜線が光でなだらかなカーブを描く。まさに光の彫刻です。
「真の表現をこころみようとする写真家は、裸体を一つの大理石の石塊として考えなくてはならない。そこで写真は『鑿』のかわりに『カメラ』でそれを表現し、自己の思うままの裸像を築き、穿ち、創らなければならない。」(福田勝治『色と光の芸術』より、1951年)
山口県立美術館所蔵のものは、サイズが40.5x31.9cmと縦長の作品です。
ときの忘れもの所蔵作品は、上下が大胆にトリミングされていて、33.3x40.2cmと横長の作品になっています。
裏には「月光に照らされて 女の曲線 うねり波うつ」と作家によって書かれていて、あるいは、トリミング後のこの作品のタイトルとしたかったのかもしれません。
福田勝治の生きた時代は、まだ写真のプリントの市場がなかったといってもよく、売り買いもほとんどなかった。
作家自筆のサインの入ったプリント、特にこの「光りの貝殻」のようなミュージアムピースは、たいへん貴重です。
画廊は今日(日曜)も明日(月曜)も12~19時まで開いています。
どうぞお出かけください。
◆1994年に開催された山口県立美術館の回顧展図録を紹介します。

『写真家/福田勝治展 孤高のモダニスト』図録
会期:1994.10.7-1994.11.27
発行:山口県立美術館
編集:榎本徹、河野通孝
270p ; 30cm
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●孤高を貫いたその生涯と作品については「飯沢耕太郎のエッセイ」をお読みください。
■福田勝治1899年山口県生まれ。1921年東京で高千穂製作所に勤務しながらヴェス単で写真を撮り始める。関東大震災後、大阪に移る。1926年「第1回日本写真美術展」でイルフォード・ダイヤモンド賞を受賞。翌年、堺市で写真館を開業するもうまく行かず、生活が困窮する中でもバウハウスの影響を受けた構成的な静物写真の作品制作を続ける。1936年『アサヒカメラ』に連載された「カメラ診断」が好評となり、それをまとめた『女の写し方』をはじめとして多くの指南書を出版、広告写真でも活躍する。戦後、女性美を追求したヌード作品を発表し、日本写真界をリードする存在となる。そのなかの「光りの貝殻(1949)」は福田の代表作となる。
リアリズム写真運動が写真界を席巻する中でも、自分のスタイルを崩すことなく、孤高をつらぬく。1955年キャノン・コンテストで推薦を受けてイタリア旅行に招待される。翌年、「イタリア写真展」を開催し大好評を得た。この後、「京都」「銀座」「隅田川」などのシリーズを発表。1950年代末より実験的なカラー写真の制作を始め、1970年には日本橋高島屋で「花の裸婦・福田勝治写真展」が開催された。1991年逝去。享年92。横浜美術館、川崎市市民ミュージアム、東京都写真美術館、山口県立美術館に作品が所蔵。
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◆ときの忘れものは、2012年1月27日[金]―2月4日[土]「銀塩写真の魅力Ⅲ/裸婦は美しい」を開催しています。

20世紀の銀塩写真を中心とするアナログ写真は、デジタルカメラの進化により、いまや消え行く運命にあります。
本展では「裸婦」をテーマに、中山岩太、ベッティナ・ランス、福田勝治、細江英公、大坂寛、植田正治、五味彬、服部冬樹、ジョック・スタージス、井村一巴、カリン・シェケシー、ヤン・ソーデック、カート・マーカス、ウェイン・メイザーの美しいモノクロームプリントを展示します。
◆今月のWEB展は「恩地孝四郎展」です。
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