◆銀塩写真の魅力 IV展の出品作品を順次ご紹介しています。
今日は北井一夫の「1973中国 上海」です。

横須賀港の原子力潜水艦寄港反対闘争をテーマとした写真集『抵抗』(1965年)、成田空港建設に反対する地元農民たちの生活と闘争を捉えた『三里塚』(1971年)などのドキュメンタリー写真で知られる北井一夫。1976年には『アサヒカメラ』に連載していた「村へ」で第一回木村伊兵衛写真賞を受賞し、日本の農村の原風景を捉えた作品は北井の代表作となり、彼の評価を確実なものとしました。

北井一夫北井一夫
「『1973中国』上海」
1973年
ゼラチンシルバープリント
27.9x35.6cm
Ed.5
サインあり

今回の出品作品は『三里塚』発表後の1973年、木村伊兵衛に誘われて訪れた北井の故郷中国で撮影されたものです。当時、文化大革命の只中にあり揺れる中国を見つめ、街の風景や人々を写真に収めていきました。
このとき撮影された作品群は長らく発表の機会に恵まれませんでしたが、2010年の個展を機に写真集が刊行されています。

その後80年代には、東京のベッドタウンの一つである船橋の団地に住む人々の生活を明るく軽いイメージで捉えた『フナバシストーリー』を発表するなど作風も変化していきますが、常に時代とそこで生きる人々と向き合う姿勢は変わることがありません。知らぬ街、知らぬ人々の生活を収めた写真にもどこか懐かしさや親しみやすさを感じるのは、私たちそれぞれの心にある原風景に通じるものがあるからかも知れません。

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北井一夫 Kazuo KITAI(1944-)
1944年中国鞍山生まれ 1965年日本大学芸術学部写真学科中退、写真集『抵抗』(未来社)を出版。 成田空港建設に反対する農民を撮った『三里塚』(のら社)で日本写真協会新人賞受賞(1972年)。『アサヒカメラ』に連載した「村へ」で第1回木村伊兵衛賞受賞(1976年)。
写真集に『境川の人々』(浦安町・1978年)、『新世界物語』(現代書館・1981年)、『フナバシストーリー』(六興出版・1989年)、『1970年代 NIPPON』(冬青社・2001年)、『1990年代 北京』(冬青社・2004年)など。

◆ときの忘れものは、2013年2月8日[金]―2月16日[土]「銀塩写真の魅力 IV展」を開催しています。
魔方陣
銀塩写真のモノクロームプリントの持つ豊かな表現力と創造性をご覧いただくシリーズも4回目を迎えました。
本展では植田正治細江英公五味彬大竹昭子、佐藤理、北井一夫村越としやエドワード・スタイケンロベール・ドアノーアンリ・カルティエ=ブレッソンロバート・メープルソープウィン・バロックジョック・スタージスらのモノクローム作品約20点をご覧いただきます。