昨夜から《かぐわしき大地》が360億円で売れたら?という妄想全開です。全ての建物を建て替えて、周辺の土地も買い取って、職員全員1億円もらっても、まだ余る!
(柳沢秀行さんのfacebookより)

ポール・ゴーギャンの絵画「Nafea Faa Ipoipo(ナファエ・ファア・イポイポ)」=いつ結婚するの(1892年)が7日、プライベートセールに掛けられて、絵画史上最高額となる3億ドル(約360億円)で落札されたというニュースに、ゴーギャンの名品を所蔵する大原美術館の柳沢さんが抱いた妄想には思わず笑ってしまいました。

それにしても凄いですねえ。
ゆかしメディア」によれば、歴代の落札金額ベスト10は以下の通り。

◆海外市場高額取引(価格、作者、作品、取引年、オーナー)
1 3億ドル ポール・ゴーギャン「ナフェア・ファア・イポイポ(いつ結婚するの)」 
  2015年 カタール王室


2 2億5000万ドル ポール・セザンヌ「カード遊びをする人たち」 
  2011年 カタール王室

3 1億6540万ドル ジャクソン・ポロック「No.5,1948」 
  2006年 デビッド・マルティネス

4 1億6240万ドル ウィレム・デ・クーニング「Woman3」 
  2006年 スティーブ・コーエン

5 1億5850万ドル パブロ・ピカソ「ル・レーヴ」
  2013年 スティーブ・コーエン

6 1億5840万ドル グスタフ・クリムト「 アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像1」
  2006年 ロナルド・ローダー

7 1億5200万ドル ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ「医師ガシェの肖像」
 1990年 齊藤了英

8 1億4500万ドル フランシス・ベーコン「ルシアン・フロイドの三習作」
  2013年  スティーブ・ウィン

9 1億4390万ドル ピエール・オーギュスエ・ルノワール「ムーラン・ドゥ・ラ・ギャレット」 
  1990年  齊藤了英

10 1億3110万ドル パブロ・ピカソ「パイプを持つ少年」 
  2004年  落札者不詳

こういうニュースが入ると、「オイルマネーがまた買い漁った」というような紋切り型の反応がみられますが、もう少し大きな視点にたった分析を評論家の皆さんにはして欲しいですね。

今年2015年の12月には、UAEの首都アブダビにLouvre Abu Dhabi(ルーヴル・アブダビ)が開館予定です。設計はフランスの建築家ジャン・ヌーヴェル。
これは2007年の政府間合意を経て、世界中の歴史と文化を俯瞰し、普遍的な知と美を広く分かち合うことのできるユニバーサルミュージアム構想による新しい形の美術館ですが、アラブ世界に初めて誕生するこの世界的美術館には、"ルーヴル"という名前が30年間貸与されます。
フランスの美術館運営に関する専門力と、国立美術館 (ルーヴル美術館、オルセー美術館、ポンピドゥー・センター、ヴェルサイユ宮殿、ギメ美術館、ケ・ブランラリー美術館、フランス国立図書館、ロダン美術館) に所蔵されるさまざまな作品が貸し出される予定とか。
ルーヴル・アブダビ建設中の文化地区サディヤット島には、2017年にグッゲンハイム美術館(ニューヨーク)の別館グッゲンハイム・アブダビも、フランク・O・ゲーリーの設計で開館予定で、安藤忠雄先生によるアブダビ海洋博物館計画も進行中です。

石油産出国のかつての無人島や砂漠の中に進められる美術館の大プロジェクトについて、カタールでの仕事も多い磯崎新先生に伺ったことがあります。

「水が石油より高い、人口も少なく、軍事力はあてにならない。これは究極の安全保障なんだよ」というのが、磯崎先生のコメントでした。

なるほどねえ。
F-2戦闘機が一機120億円だそうですから、360億円のゴーギャンは安いもんです。

美術品の売買は平和な時代であればこそと私たち画商は思いますが、蒋介石が歴代中国王朝の重要文物を日本軍の爆撃から守るため各地を転々と避難させ、第二次世界大戦後は国共内戦の中、台湾にまで運び今日の故宮博物院をつくった歴史や、昨夏のヨコトリで上映されたメルヴィン・モティ(オランダ、1977年生まれ)の映像作品《ノー・ショー No Show》(対独戦で作品を避難させ空っぽになったエルミタージュ美術館)、昔見た映画「大列車作戦(原題:The Train)」のことなども思い出しました。
美術品の売買も、イスラム国、ウクライナ問題などきな臭い世界の今と無縁ではない。

金沢21世紀美術館では、磯崎新、安藤忠雄はじめ日本の代表的建築家が出品する「ジャパン・アーキテクツ1945–2010」が開催されています(3月15日まで)。
招待券が若干ありますので、ご希望の方はメールにてお申し込みください。
磯崎新Moca1
磯崎新
「MoCA#1」
1983年
シルクスクリーン
73.0×103.5cm
Ed.75 サインあり

安藤忠雄 アーバンエッグ
安藤忠雄 Tadao ANDO
「中之島プロジェクト Ⅱ[アーバンエッグ2]」
1988年
シルクスクリーン
105.0x175.0cm
Ed.55  サインあり

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◆福井県立美術館で開催された『福井の小コレクター運動とアートフル勝山の歩み―中上光雄・陽子コレクションによる―』の図録はときの忘れものが編集を担当しました。
福井の同展はじめ、勝山、金沢をめぐる「現代美術と磯崎建築~北陸の冬を楽しむツアー」を1月24日~25日に開催し、各地から15名が参加されました。参加された皆さんの体験記をお読みください。
石原輝雄さんの体験記
浜田宏司さんの体験記
酒井実通男さんの体験記

◆福井県勝山の磯崎新設計「中上邸イソザキホール」については亭主の回想「台所なんか要りませんから」をお読みください。