海外からの問い合わせや注文が多くなってきましたが、それに反比例して国内の売上げは減る一方です。
もっともそれは私たちの画廊だけかも知れず、流行の先端を行く気鋭の画廊さんは盛況のようですね(羨ましいです)。

注文はさっぱりきませんが、かわりに「買って欲しい」という電話がしょっちゅうかかってきます。以前のような「●●をもっている。お宅はいくらで買ってくれるんだ」などという乱暴な電話は減り、「知人に聞いたのだが、お宅ならちゃんと買ってくれるようなので、一度作品を持参するので見て欲しい」というような丁寧な電話が増えました。ありがたいことです。
今日ご紹介するのは、最近入手したばかりのE.J.ベロックの写真作品です。
男性が撮影したとは思えないようなニュートラルなエロスが漂っているこれらの写真の魅力とは・・・・
ベロックE.J.ベロック
「Untitled」
1911年頃
20.2x25.2cm
ゼラチンシルバープリント
(リー・フリードランダーによるプリント、金調色P.O.P.プリント)
裏面にリー・フリードランダーのサインあり

ベロック 2E.J.ベロック
「Untitled」
25.2x20.2cm
ゼラチンシルバープリント
(リー・フリードランダーによるプリント)
裏面にリー・フリードランダーのサインあり

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撮影者であるベロック(Ernest James BELLOCQ 1873~1949年)の生涯については、実はよくわかっていません。
20世紀初め、ニューオーリンズでカメラマンを職業としていたことはわかっています。第一次世界大戦中、彼は造船会社でいわゆる無難な写真を撮っていました。外見も行動もかなり変わっていたらしい。不器用で、人付き合いが悪く偏屈だったと伝えられています。
歳を取り、引退してからはニューオーリンズの町中を歩き、新型の小型カメラの複雑な操作に四苦八苦している様子が目撃されています。
注目されたのはベロックが亡くなってからです。自室の机の引き出しから、約100枚のガラス乾板が発見されました。1912年からニューオーリンズの娼婦たちを撮影したポートレート群でした。
すべてニューオリンズの紅燈街「ストーリーヴィル」の娼館で撮られており、そこで働く女性たちが被写体です。彼女たちの多くは、やわらかな太陽光の差しこむ中で着衣であれヌードであれ、こわばりを解いたゆったりとした表情でカメラを見つめています。
営業用の写真でもないし、誰かに依頼されて撮影したものでもなさそうです。

ベロックの作品として現存しているのは、この娼婦たちの写真だけです。
彼の死から何年も経った1958年、ニューヨークからやってきた写真家リー・フリードランダーがあるギャラリーを訪れ、ベロック撮影の乾板を見出します。1966年フリードランダーは、ベロックの乾板89点を買い取り、印画紙に焼付け(プリント)します。
こうしてようやく再出現したベロックの女性たちは、1970年にニューヨーク近代美術館での『E.J.Bellocq: Storyville Portraits』展で公開され、写真史に確たる位置を占めるにいたったのです。
ベロック展 表紙『E.J.Bellocq: Storyville Portraits』展図録
1970年
The Museum of Modern Art 発行

ベロック展 中


上掲の写真の旧蔵者に伺ったところでは、買ったのは1970年代はじめ、ときの忘れものから歩いて数分のワタリウムの前身、神宮前の変形角地にあった大きなガラス窓の小さな「ギャルリー・ワタリ」だったとのこと。
いまさらながら和多利志津子さんの先見の明に敬意を表します。

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◆ときの忘れものの3月前半の展示は「花見月の画廊コレクション」です。
201503collection
「花見月の画廊コレクション」
会期:2015年3月3日(火)~3月14日(土)
*日曜、月曜休廊
出品:舟越桂、ベロック、中山岩太、瑛九、奈良原一高、細江英公、マン・レイ、小野隆生、他

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